月光賛歌

月光賛歌

小説・その2[愛しき光達へ]

私の父はエルフ、母は王家でありながらナイトの道を選んだ。そして私には弟が居る。姿は…、エルフ。黒髪のエルフ。守護者に狙われ一度は殺されそうになった弟。しかし今は、幸せそうな顔をしている。
透き通るような髪を持ったエルフの少女と幸せそうにしている。
そんな弟を持った、姉の私はナイトの道を進んでいる。ナイトを選んだのは母親のようになりたかったから…。「ナイト」と言う型にはまらない戦い方が魅力的で、尊敬の眼差しだった。
私と弟が産まれる前、父と母の出会いはまるで有り得ない事だったそうです………。

「これから、宣戦布告をする!!狙うはギラン!!」王子の声が響く。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ………!!!」王子の叫びと共にクランの男達が雄叫びをあげる。その中に精神統一をした少女とも言えるナイトが居る。そのナイトは王家に属し、父親の言う事を聞かずに城(家)を飛び出した。
そのナイトは、一人ギラン城を眺めている。この後、将来自分の夫ともなるべき人物が城の中に居るとも知らず…。

一方…。ギラン城では沢山のクラン員が作戦会議をしている。「こんな戦法が良いだろう。」「いや、こっちの方が良い。」各部隊の隊長達を囲み部下とも言える「仲間」が話し合いをしている。
そして、一人、気まずそうにしている男エルフが居る。周りを見渡す姫を一人見つめている。
―――――――この戦争で俺は生きていけるのだろうか?――――――――
そんな事がエルフの頭を不意によぎる。この戦いで自分に起きる事を考えずに戦争の事を考えている…。
そして…………戦争が始まった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」叫びが上がると同時に、女ナイトが居るクランの王子の指揮の下、城の門がぶち破られる。それと同時に、相手の魔法部隊からの魔法が飛び交う。
負けじと王子のクランからナイトやエルフの攻撃が開始される。そのナイトの集団の中に、女ナイトが居た。独学で学んだナイトの道、騎士育成学校を出たのにもかかわらず己の戦法で戦いを身に付けたナイトが魔法部隊に距離を縮めていく。
魔法部隊が危険と感じたのか相手方の姫は弓部隊を設置し、ガードの矢と共にエルフの矢を放つ。大抵その中で命を落とすナイトも居る。その矢の攻撃すら交して行く女ナイト。
その攻撃を交して行く女ナイトを見つめるエルフ。不意に心を打たれる。その少女の整った顔立ちと良い、それでいて眼は青く光り輝いている。今の指名を果たすことに全てを掛けている眼である。
エルフは少女に放つ矢を止め、弓を下ろした。下手をすればその少女に切り殺される恐れすらあるのにも関らず。エルフは弓を下ろしたのだった。
少女と言えば、そのエルフの想いも知らずに、周りのエルフを倒そうと必死である。ポーションを飲み、自分の居るクランの魔術師からの援護もあり、次から次へと戦い抜いていく。
…………………………………結果はエルフ方の勝利となった。
そして、勝利を得たはずのエルフは暗い面持ちをしていた…。
『あの少女には、悪い事をしたな…。一度で良い、会って話をしたい。』そう心の中で呟いている。エルフは周りを見渡すと、仲間の喜ぶ顔が見える。
どんちゃん騒ぎをする者も居れば、仲間と喜びを静かに分かち合うものも居る。中にはあまりの喜びに泣き喚く者も居る。
『みな、それぞれの思いを胸にして同じ感情をかみ締めている。……でも、俺は違う……。あの子に会って、話をしたい。会って間もないけど、この想い伝えたい。』一人決意をしたエルフがそこに居た…。

戦争に負けたクラン、少女である女ナイトがいる場所だ。少女はというと、一人うな垂れていた。辺りを見回せば酷い光景。血溜まりの中に沢山の戦友や同士たちが倒れて居る。
そんな光景を目の前にして、眼から光を失って、糸が切れたように座り込んでいる少女。それから数分がして、少女は立ち上がった。一人黙々と歩き、町へ向かう。
どの位歩いたのか分からない、気力で歩いている少女。少女はテレポーターの側に行き、その場から立ち去った…。
到着した場所はケントという場所。この町の近くにも城がある、城など見たいと思わない彼女は再びテレポーターを使った。そんな事を繰り返して、到着した村、ウッドベック村。
ココにも嫌な城があるのだが、「割と見えない場所にあるから気にも触ることもないだろう」とブツブツと呟きながら宿屋へ早歩きで向かった。
宿屋の一室で一人啜り泣きをする少女。初めての戦争であり、初めての経験。とても辛い事だった。今まではオークやゴブリン、ちょっと強いリザードマンやグールを相手にして戦いに勝ち、喜んでいたのだが今は大幅に違う、戦争。
戦争と言えば相手は勿論、人間。モンスターではない。敵である人を倒すと敵である人の仲間は悲しむ。それは当たり前のこと、それを自分が今、味わっているのだと思うと無性に悲しくなってくる。
そんな事を頭の中で思い巡らせて居るとき、部屋にノックの音が転がった。
(コンコンコン)
「…………ひっく……うっく……うぅ…。」
(コンコンコン)
「…………?」
(コンコンコン)
「………はぃ?(こんな時に何なのよ?)」
「夜分遅くすいません!!えーっと、開けていただけませんか?」
「はぁ……。(いきなり開けろですって?無礼者ね。)」
――――――ガチャ―――――
「どうも、夜分遅くすいません。あの~さっきの戦争で相手クランのエルフ部隊に所属します。グレイスと言います。」
「こちらこそ、どうも…。(なんなの?私に当て付け?喧嘩売ってるの?ふざけないでよ!)」
「その…戦争中に俺…じゃなくって僕は、その、えーっと…。(あ~どうしたんだ俺!!言いたい事を言えば終わりだろう!!?)」
「?……!まぁ、ココで話すのもなんですし、中にお入りください。」
「へ!?あ!は、はい!!あ、ああ、ありがとうございます!!(緊張しすぎじゃないか…俺。)」
――――――数分経過――――――
「えーっと、その~…。ぼ、ぼくは…。(早く言わないと印象悪くなる!!さっさと言えよ!!俺!!)」
「緊張なさらなくても良いじゃないですか^^;;?」
「へ?え、あ、えーっと……(深呼吸をして)言います!!」
「は、はい?」
「俺!!戦争している中、貴女の戦っている姿を見て一目ぼれしました!!(恥ずかしい!!)」
「…………。」
「宜しかったら、俺と将来を共にしていただけませんか?」
「……………。」(カァァァ…)
「えっと、返事は今じゃなくても良いんです!!無理でしたら無理と、良いのでしたら良いと…手紙で送っていただければそれだけで良いんです。」
「ぇ、あ、は、はい…。分かりました…。」
「そ、それでは、失礼しました!!」ガン!!
「うお!!……イタタ…。で、では!!」
「……フフフ。面白い人だなぁ~…。」
―――――――――……どうやら、答えは決まってしまったみたい…。―――――――――
そんな出来事が起こり。少女の心は少々安らぎを取り戻したのであった…。


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