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缶詰

缶詰

元日ss-前編

 それ元旦の朝のことでした。
 きっかけはキャバッローネファミリーのボス・ディーノさんの、何気ない一言でした。

「なぁ、ヒメハジメってなんだ?」


『ヒメハジメ!?・前編』


 ディーノさんの一言を聞いた獄寺隼人くん、思わず飲みかけの缶コーヒーを噴き出しました。
「うわっ!きったねぇなっスモーキンボム!」
 ボスなディーノさんなら必要以上に華麗に避けられたのでしょうが、あいにく今は部下がいないへなちょこディーノさんなので、頭からコーヒーを被ってしまいました。
 ディーノさんは沢田さんのおうちに向かうところでした。その途中、同じように沢田さんのおうちへ新年のあいさつに行く獄寺くんを見つけたので、わざわざ車から降り、並んで歩きだしたのですが…。
「せっかくオレがおごってやったのにぃー!」
「おい、跳ね馬」
 ぶちぶち文句を言うディーノさんに構わず、獄寺くんは口元を拭いながらニラみました。
「てめえ、今なんつった…?」
 獄寺くんが怖い顔をする意味が分からないディーノさん、キョトンと目をまたたかせます。
「え?だからヒメハジ…」
「みなまで言うなっ!」
 すがすがしい新年の朝に、そんな単語は聞きたくありません。獄寺くんは慌ててディーノさんの口を押さえます。
「んな言葉、誰が教えた!?」
「リボーン」
 リボーンさん…!赤ちゃんなのになんてことをっ…!
 獄寺くんはショックな事実にガクリとヒザをつきました。
「まだイタリアで家庭教師してた頃な。でも意味は教えてくれなかったんだよなー…って、大丈夫かー?」
「いや、なんでも…」
 獄寺くんは叫んだせいではぁはぁ荒い息をつきます。そんな獄寺くんはいつもにも増して不審人物で、さすがのディーノさんも不思議そうに首をかしげます。
「で?おまえは意味知ってんのか?」
「そ、それはだなっ…」
 だってお年頃なんだもん。町の本屋さんではびーえるというジャンルの小説やマンガが時代ですから…いえいえ!今はそんなこと関係ありません。
「し、知らねぇよっ」
「ふーん。そっか」
 ディーノさんはそれだけで納得してしまいました。獄寺くんは安心して、ほっとため息をつきます。しかし…

「ま、ツナでも意味知らなかったぐらいなんだから、イタリア育ちのおまえが知ってるワケねぇか」
「…ちょっと待て」
 がしっと、ディーノさんのシャツのえりをつかみます。
「テメェー!十代目のお耳になんて言葉を入れてんだっ!」
「え。何が?でもツナも、意味知らないって…」
 いえ、彼の十代目がその言葉を知らなかったことは不幸中の幸いなのですが。むしろ複雑なような…。
 あ、それで…とディーノさん、ニコニコとつけ足します。
「山本なら知ってるかもしれないから聞いておくって」
「………ぬわにー!??」


「―…ねえ山本。ヒメハジメって何か知ってる?」
 ツナくんの部屋に招かれた山本くんは笑顔のまま、出されたお湯呑みを倒してしまいました。
「わわっ。お茶!山本、下にこぼれるっ」
「ああ…ごめんごめん」
 流れ出す熱いお茶を、慌ててふきんで押さえます。
「珍しいね、山本。どうしたの?」
「いや、ちょっとびっくりして…えーと、ツナ?どこでその言葉知ったんだ?」
「どこってか、この前ディーノさんが意味分かんないから教えてって…」
「そっかそっかー」
 その答えに山本くんはこっそりとため息をつきます。
 するとツナくんは自信なさげな上目遣いで山本くんを見上げます。
「オレ、なんかまずいこと聞いた?」
「うーん…まずくはないけど…」
「けど?」
 くすりと、いつもとは違う顔で笑った山本くんは、ツナくんの顎に指をかけます。
「なんなら、実演つきで教えようか…?」
「え?山本…?」
 そっと、山本くんはツナくんの唇に唇を寄せて…
 そして二人はめくるめく情熱の世界へ…――!

 …以上、獄寺くんの妄想でお送りしました……

「ぐあぁーっ!?」
「どうしたんだスモーキンボム!?」
 いきなりフリーズしたと思ったら、今度は叫びだした獄寺くんにディーノさんはヒビります。
「ダメですっ十代目!ヤツの誘いに乗ってはっ!!」
 耐えきれなくなった獄寺くん、全速力で走り出します。その獄寺くんをディーノさんが追います。
「だからどうしたんだよスモーキンボム!?」
「バカヤロウ!てめえのせいで十代目が貞操の危機だっ!」
「なにぃー!?」
 カワイイ弟分のことになると顔色が変わるのはディーノさんも同じでした。すぐに獄寺くんを追い越して走り出します。
「行くぜスモーキンボム!」
「てめえが仕切んな!…十代目えーっ!今助けに行きまーすッ!!」


 二人が目指すは沢田さんのおうち。
 果たして獄寺くんはツナくんの貞操を守れるのか!?そして暴走する青少年の妄想に行き着く先はあるのか!?

〈後編に続く…!〉


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