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缶詰

缶詰

『いちごとシャンパン』Sample

◎タイトル:『いちごとシャンパン』(R-18)
15本表紙

[内容]タイトルの通り「いちごとシャンパン」をモチーフにしたDFFで1×5(ライバツ)の合同誌です。
庄次郎は「いちごとシャンパン」の「いちご」を担当。DFF現代パロ。現代日本っぽい世界で、異世界から召還された秩序と混沌の戦士たちが、普通に日常生活を営みながら時々戦ったりしています。(※ライトとバッツは恋人前提。ブログに載せている話→()と同じ設定。)
 
庄次郎のサンプルはこちら↓

◎sample1
 日曜日。  何かが違う。唐突にバッツは気がついた。
「―…バッツ?」
 考えることに夢中で、ぼんやりとしていた。
「…え。あ、なに?」
 気がつくと、銀髪の青年が、バッツを覗きこんでいた。
 花柄の水筒を傾けるライトの、アイスブルーの瞳には、気遣う色が浮かんでいる。
「どうした?サンドイッチにマスタードを入れてみたんだが…辛かったか?」
 一瞬、何を言われているのか戸惑ったが、手にしたサンドイッチのことを言われているのだと気がついて、バッツは首を振った。
「ううん、全然。うまいよ。俺、これすっごい好きかも!」
「そうか。それなら良かった」
 ライトは微笑む。控えめなライトの笑みに、バッツは頬が火照るのを感じた。
 重なる視線が妙にくすぐったくなって、バッツは、思いついたままの軽口を口にしようとした。
「ライトさんって、」
「ライトさーん!」
 しかし、言葉は途中で威勢の良い少年の声で遮られた。隣のランチマットに膝立ちになり、毛先の跳ねた金髪の少年が、屈託なく笑いながらステンレス製のカップをさし出していた。
「スープ、俺らにもくださいっス!」
「だから共食いじゃないって言ってんでしょ!?」
 ティーダやジタンたち年長者に囲まれて、玉ねぎ少年が顔を真っ赤にして、何かを抗議している。ちなみに、ライトが手にする水筒の中身はオニオンスープである。
 ライトがため息をつきながら、花柄水筒を渡す。
「あまりからかい過ぎるな」
 と、一言だけ少年たちをいさめ、バッツの隣に戻ってくる。
「…それで?」
「――え?なにが…」
少年たちと一緒になって笑っていたので、バッツはきょとんとする。
「さっきのことだ。何か言いかけなかったか?」
「え…ああ!さっきのことなー…いや、別に大したことじゃないから気にしない気にしない!」
 と、バッツは手を振る。ライトは続けて何かを言おうとしたが、
「わー!」
「玉!ニンジャに変身するのはルール違反…ぎゃー!」
 叫び声が上がる。ついに玉ねぎ少年を怒らせたらしいティーダたちが、薄紅色の花びらと一緒に宙を舞う。
 その騒ぎを目にしたバッツは嬉しそうに手を叩いて笑い、ライトは再びため息をついた。
「あれ。ケンカ止めるの?手伝おうか?」
「君まで加わると面倒だから止めておこう。…少し待っててくれ」
 そう言ってライトは事態収拾に立ち上がる。
 バッツは笑いながら手を振った。見送ったその背中に、先ほどの思いを呟く。リーダーとしての責任感というよりも、
「…とーさん、みたいだよなーって」
 バッツは笑う。両手に包んだカップの表面が風に揺れる。
「……?」
 仲間たちと一緒の休日。冒険と同じくらいに、楽しい。
 だが胸の奥でくすぶっているものに気がついた。それは、何か小さなトゲのようにも、炎のようにも思えた。

◎sample2
「そっちがその気ならっ…オレだって考えがあるんだぜ!?」
 腹の上に馬乗りになったバッツは、自らのジャケットのボタンに手をかける。
 話し合いに突入する前から、バッツは外に出かけた時の格好のままだった。ライトは訝しげに目を細めたが、バッツがジャケットを脱ぐとアイスブルーの瞳を見開いた。
「そ…その姿は…!」
「じゃじゃーん!」
 バッツの今日の服は、ジャケットを着ているとただの黒いスラックスに見えたが、その下は白いワイシャツにネクタイ…そして、腰で巻くタイプのエプロンだった。
 それは、シャレたカフェなどでよく見る制服だった。その制服を来た男性の多くは、女性客の視線を釘付けにする。
 バッツはそんな魅惑の――ギャルソンの姿をしていた。
「バイト先のテンチョーに貰ったんだー」
 そのバイト先とは、最近始めたホストクラブである。バッツはホストではなかったが、接客以外の裏方をするバイト店員として、ギャルソン服を着るのが決まりだった。
「バッツ…!君はそんないかがわしい場所でバイトを…っ」
「む。そんないかがわしくないってば」
 別に裏方でフルーツ切ったりドリンク運んだりするだけだし、と。ライトの道徳を説くようなセリフにやや唇を尖らしつつ、腰に手を当ててポーズを取る。
「…ど?似合うー?」
「う…」
 ストイックな黒い衣装だが、着る者の腰の輪郭を強調する、一種のセクシーさがあった。
 それがライトにも通用したことは、わずかに揺れる瞳で分かった。
 しかし、
「う…上着を、着るんだ。バッツ」
 ライトはそう言いつつ視線を逸らした。何かの波を、理性で押し殺したらしい。
「ふーん…まだその気になんない…?」
 しかし、次の手はすでに用意してあった。
 懐から取り出したそれを、頭に装備する。
「さらにどーん!」
「う…!?」
 頭に装備したカチューシャには、天井に向けてぴーんと立った、白く長いケモノの耳がついていた。
 俗に言う、ウサ耳である。
「月に一度のラビットデーの小道具ー」
 これも、バッツのバイト先が行うイベントである。薄暗い店内をホスト全員がウサ耳をつけているのは異様な光景だったが、これが中々、当日には満席になるほど、女性客に人気のイベントだった。
「似合う?」
「う…」
 小首を傾げる。
 小道具はライトにも有効だったようだった。証拠に、普段はあまり顔色の変わらない目もとが赤らみ、瞳が揺れる。
 ありったけの期待をこめた、純粋無垢な小動物の瞳で見つめる。耳だけでなくしっぽでもついていたら震えるぐらいに。
「ライトさん…」
 しかし…期待は裏切られた。
 乗り出した肩をライトは押し返した。
「とにかく退きなさい、バッツ…これ以上は、私も保証できない」
 さすが、騎士道精神の塊である。理性の壁は高い。バッツは悔しさに唇を噛む。
「わかった…」
 ライトがほっと、肩の力を抜く。隙があった。
 すかさず、がちょん。と、錠のはまる音。


 ※この後ぐらいから、エロシーンに突入?(笑)


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