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飛行具 昔、支那の西安の都に興隆と云う男が居た。 興隆は中々の勉強家であった。 宮中の役人の勤務の傍ら、 飛行術の研究に余念が無かった。 長年の研究の収穫として、 或日到頭、 最も理想的な飛行具を発明した。 支那山中に棲息する大蝙蝠の羽を手に入れ、 シナヒメダケの骨組みに、 膠で張り付けると、完成であった。 宮中の仕事を終えると、 二、三日の休暇をとって、 愈々飛行実験であった。 西安の郊外、街はずれまで飛行具を馬車で運んだ。 実験予定の草原に着くと、 其の日は生憎の大風であった。 西安の都でも、そう滅多に無い程の、 春の大嵐であった。 突然の突風で、 興隆の飛行具は、 馬諸共に、ひゅ~っと吹き上げられてしまった。 「しまった。」 と思いながらも、 興隆は飛行具に飛びつき、あれよあれよ、 と云う間も無く、大空へ舞い上がってしまった。 飛ばされながらも興隆は 飛行具を身に着けると改めて周囲を見回した。 それは心踊る大パノラマだった。 真下に広がる広大な大地は、 地平の彼方まで蓮華草が咲き乱れ、 白い道の先には、広大な西安の都が広がった。 街行く人々は皆、天を仰いで驚嘆したものだ。 突風は更に吹き荒れると突然飛行具の紐が音を立てて、 引き裂かれ始めた。 突然の危機に興隆はゴツンと頭を強打した。 寝台から転げ落ちたのであった。 「貴方。またですか。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.08.26 20:21:01
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