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丘の向こうには蒼の森が広がっていた。 ハンスは毎日畑を耕していた。 父母が早くに亡くなっていたので。 一人暮らしだった。 初夏の有る日、 畑仕事の合間に、 ハンスは草むらで、 うたた寝をしていた。 すると一匹の白い蝶が舞っていた。 紫の矢車草に止まると、 羽を静かに動かし、 蜜でも吸っていたのであろうか。 その時、待ち伏せて様子を伺っていた、 斑模様の蜘蛛が、 飛びかかり、 あっと云う間に蝶は食べられてしまう処であった。 ハンスは哀れに思い、 蝶を助けてやった。 そしてハンスは又、眠ってしまった。 「おや。もう、こんな時間だ。早く帰ろう。」 明くる日もハンスは畑であった。 今日は昨日の分も頑張った。 すると突然、畑の脇の小道を、 見慣れない美しい娘が歩いてきた。 ハンスは思わず声をかけた。 「やあ、何処から来たかね。」 「…ふふっ。」 娘は何も答えなかった。 毎日畑仕事で、 美しい娘になど合った事のないハンスは、 心を奪われてしまった。 「何処まで行くの。」 「ほほ。」 娘は答えない 「名前は…。」 「名前は聞かないで。」 娘は初めて口を開いた。 「君の名はゾンネ?」 「ヴィント」 「ブルーメいや、ブリューテ。」 「だめよ。」 「ヴォルケだろう。」 「違うけど、もう聞かないで。」 「そうか、判ったぞ。シュメッターリングだ。」 そ途端、娘は一匹の白い蝶になって、飛んでいった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.12.16 21:23:33
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