アウェーで戦う
サッカー日本代表のW杯出場がきまった。無観客試合は、やはり残念というか、寂しかった。本来ならば、W杯出場の歓喜にあふれるはずのスタジアムに観客はいない。W杯が以前と比べて、身近になったとはいえ長い間、戦ってきた選手たちに祝福の声が届かないのはとてもかわいそうな気がした。しかし、これがイランとのアウェーでの試合だったならスタジアム10万人がイラン人でしめられていて、祝福どころか応援すらもかき消されていただだろう。サッカーにはアウェーというものがある。私が子供の頃にはまだ、巨人の星などの名残もあって、根性論みたいなものにはなじみがあったが、その最たる野球においても野村ID野球をはじめとして、科学的な運動理論や統計データが勝敗において重要な要素であると認識されてかなり薄れてきたように思う。サッカーにおいては、全国を統括して育成するシステムやチームとは分離された戦術を評価する組織があったりして、より合理的であり、精神論から遠いように思われるのだが、日本代表のような試合になると「気持ちが大切だ」と選手たちは口にする。アウェーで戦うということはあまり身近にない。ただ中田英寿がローマ時代、優勝を左右する試合で、ゴールをあげたとき、クローズアップされた彼の口元が「よっしゃー!」と叫んでいて、彼が本物のアウェーを戦っているのだという感慨があって魅せられてしまったことを覚えている。