2010/03/25(木)22:05
戦争映画「ステルスX」 評価★★ テロリストに乗っ取られそうになるロシア空軍爆撃機
2007 ロシア 監督:ウラディミール・ポタポフ
出演者:セルゲイ・マコーヴィコフ、アンナ・タラトーキア、セルゲイ・バタロフほか
92分 カラー07th CHANGES THE DIRECTION/07-Y MENYAET KURS/07 AMENDS FLIGHT PLAN
ステルスX(DVD) ◆20%OFF!
DVD検索「ステルスX」を探す(楽天)
ロシアの極秘ステルス技術を搭載した爆撃機がテロリストによって奪取されるのを阻止するという航空アクション。設定もストーリーも、んん?どこかで観たようなというありきたりのパターンなのだが、意外なのはロシア映画という点だ。正直言ってストーリーもアクションもB級で、見るべき内容はないに等しいのだが、唯一ロシア空軍が主役と言うレアさだけが見所なのだ(笑)。
監督も役者も知らねえなあというマイナーさで、ハリウッドアクション的ラブロマンスにしても、いい歳した冴えないおっさんと若い女性の組み合わせは何だか納得いかない(笑)。ただ女性のオルガ中尉役のアンナ・タラトーキアだけはそこそこ美人。
一昔前の航空機乗っ取りアクション映画の場合だと、たいていは米露どちらかが悪者になるのだが、本作ではなんと米露合同演習が背景と言うことで、共同してテロリストに対処していく。冷戦終結による両国への配慮ということなのだろうが、何だかヌルイ感じがするのは否めない。米露軍の最新技術をもってして陳腐なアラブテロリストにやられてしまうのも余りにしょぼ過ぎるし、相手がテロリストごときだとアクションとしてはいまいち盛り上がらない。
加えてストーリーに盛り上がりも捻りもないので、淡々と時間が流れていくだけだし、テロリストによる乗っ取り、遠隔操作装置の解除など緊迫感あふれるべきシーンでも、タイミングの悪いぶつ切り編集や無意味なエピソード挿入で盛り上がりが阻害された。
ミリタリー的な視点としても、登場する基地や作戦、ステルスシステム(ゴルゴンシステム)などにリアル感がまるでなく、そこに突っ込む気すら起きてこない。
さて、唯一の見どころロシア軍兵器だが、ロシア空軍の協力を得たということで、空軍機の飛行シーンが楽しめる。ロシア映画ではロシア軍機が登場するものも少なくないが、大抵は調達しやすいヘリコプターかロシア空軍の記録映像の使いまわしが多い。本作では主役となるツポレフTu-160ブラックジャック爆撃機(機番07)、2機のスホーイSu-27フランカー戦闘機(機番06,67)、A-50長距離レーダー監視機(機番42)が離着陸、飛行シーンを本作のために披露している。Tu-160は一昔前の機体とは言え配備数も少なく実際の飛行シーンは珍しい。機内のシーンも多分本物と思われ、ロシア軍の情報公開も進んだものだと感心する。4機による編隊飛行も一部合成と思しき所もあるが、なかなか見ることのできないシーンだろう。どうせならSu-27の機動飛行シーンぐらい入れてくれたらもっと良かったのに。このほかAn-12カブ輸送機、Tu-95爆撃機、民間型AS-350B3ヘリが登場している。
海軍兵器ではロシア海軍役としてクリヴァクI改型フリゲート艦「プイルキィ(艦番702)」と米軍空母役としてロシア海軍唯一の空母である重航空巡洋艦「クズネツォフ」の映像が出てくる。プイルキィは撮影されたもののようだがクズネツォフは記録映像かもしれない。
全体に映画としては、ストーリー編集ともに楽しめるレベルに達していない。ステルス性や航空アクションといったミリタリー的関心という点でも満足できる内容にはない。せっかくロシアク軍が協力してくれたのだから、もっと根性入れて作って欲しかったところ。何となく色々な所に配慮してたらこんな映画になりましたという感じ。
興奮度★★
沈痛度★
爽快度★★★
感涙度★
(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)
元ロシア空軍爆撃機連隊副隊長ボンダレンコ中佐が輸送機でテロリストに機密機材を積んでやってくる。テロリストに金でロシアを売っているのだ。その帰路中先はテロリストによって爆破される。
フォゲット諸島のテロリスト基地にヘリに乗った武器商人のマイケルと元米兵?ビークスがやってくる。マイケルの要請によりテロリストはロシア軍機と新兵器ステルス技術を盗もうとしているのだ。
ロシア軍は技術部隊のオルガ・クラスノバ中尉(女性)によって開発されたステルス技術「ゴルゴンシステム」実験のため、Tuー160爆撃機「07」を飛行させる計画だ。その実験は米軍との合同演習の一部として行うこととしており、護衛にSUー27戦闘機2機、長距離レーダー監視機も同行することとなっていた。途中で米軍のレーダーから消え、米軍の鼻を明かそうというのだ。
だが、秘密計画はテロリストに漏れており、連隊長の大佐は危険を察知し、爆撃機「07」のパイロットをニコラエフから癖はあるが勇敢なキルサノフ中佐に変更する。キルサノフ中佐は離婚歴があり海軍士官候補生の息子もいるが、オルガ中尉に恋心を寄せており、オルガ中尉の父クラスノバ元大佐もキルサノフを勧めている。キルサノフはなかなかオルガに結婚してくれと言えないまま任務に就く。
爆撃機07の爆弾槽にはスパイのセルゲイによって遠隔制御装置が取り付けられていた。いよいよ米露の合同軍事演習が始まり、キルサノフ中佐、オルガ中尉らの爆撃機も離陸する。そのころ、キルサノフの息子は港でテロリストアジズがセルゲイを殺害するのを目撃し、テロリストが爆撃機乗っ取りを狙っていることを軍に知らせる。上空でオルガ中尉がゴルゴンシステムを作動させると、海上の米露艦船レーダーから4機の機影が消えた。実験は成功だった。だが、その瞬間爆撃機07の操縦管が効かなくなる。テロリストによって遠隔操作モードに入ったのだ。無線も停止し、キルサノフ中佐は懐中電灯のモールス信号で戦闘機に知らせるが分からない。ようやく緊急無線で連絡を取り乗っ取られたことを知らせる。モスクワではアメリカの商業衛星420を経由して遠隔支配されていることを突き止め、ロシア大統領はアメリカ大統領に電話して衛星の破壊か機能停止を要請する。
機内では搭載した長距離ミサイルが発射準備に入ったことを知る。マイケルらは爆撃機乗っ取りだけを目的としていたが、テロリストはミサイルを米軍のテクセル基地に向けて発射することを目論んでいた。テロリストを非難するマイケルとビークスはテロリストに殺害される。機内ではなんとか制御装置を解除しようとするがなかなかできない。オルガ中尉はミサイルのソフトディスクを取り出すことを思い立ち、ミサイル発射の1秒前になんとかディスクをはずす。
だがテロリストによる操縦は続いており、テロリスト基地に近付いていく。モスクワでは機体の破壊も検討するが、キルサノフ中佐は新たなミサイルをテロリスト基地に照準したうえで、オルガ中尉らに脱出を命じる。だが、オルガ中尉らはキルサノフ中佐を置いて脱出はできないと言う。
宇宙では米軍宇宙ステーション「デルタ」が商業衛星に到達し機能停止に成功する。テロリストの制御は解け、キルサノフの爆撃機はテロリスト基地にミサイルを発射し、帰路につく。キルサノフ中佐は列機に「編隊を組もう」と言うが、オルガ中尉は「ゴルゴンシステム作動中で見えなくて残念ね」と笑うのだった。
基地にようやく帰還した爆撃機の機内ではキルサノフがオルガに「言いたいことがある」と言うが、オルガは「言葉よりも・・・」と言いキスするのだった。