奴はとんでもナイものを盗んでいきましたょ★あなたのココロです★★★

特殊警棒と修学旅行☆

80年代的なアイテムのひとつに特殊警棒がある☆ かのビーバップハイスクールの中間トオルが所持していた、三段式の携帯警棒だ☆ ジャキッと飛び出るあれね☆ あれはもう、男ならだれでも一本はほしい一品でしょうなぁ☆ 70年代がリーのヌンチャクなら、80年代はより近代的な特殊警棒であった…… かくいう俺も、しっかりもってたぜ☆ 昔、今でいうビレバンみたいな、怪しい雑貨屋があちらこちらあったんだ… その店の安っぽいハードボイルド小説のようなショーウインドー中には、当時小学生だった俺のまだ熟してない男汁の分泌を、過剰に促進させるアイテムがごろごろしていた☆ 44マグナムのモデルガンだとか、探偵物語のようなアフロのかつらやら、鳩が出るような手品のハット… そしてその片隅に、地味ながらもひときわリアルな存在感を発散させた、その武骨な金属でできた一本の厳粛な護身道具が、鈍い光を放ちながらまだ年端もいかないガキの俺を、まだ見ぬポマードの匂い漂うハードボイルドワンダーランドへと静かにそして力強くいざなおうと不穏な引力を投げかけてくるではないか… こいつを手にいれれば、俺は男って奴に近づける… 肩で風を切る、無頼な俺になれる☆ ある日とうとう、手に入れたさ… それからというもの、俺はどこへ行くにもこの鉄でできた相方をズボンのポッケに忍ばせた☆ なんだか自分がちょっと強くなったみたいで、世界がちょっとだけ小さくみえたな☆ 俺はこともあろうに、修学旅行にもこの相方をもっていったんだ☆ その当時、小学生ながら、修学旅行ともなると、よその学校の奴らとちょっとしたいざこざが起きるという物騒な噂が絶えなかったからだ☆ 馬鹿なガキ丸出しの俺は、そういう噂を鵜呑みにしてビーバップハイスクールさながらに、変にいきるたっていたのだった☆ まったくもって80年代的なイージーな発想である☆ ところが実際、フタをあけてみれば、そんな物騒な事件などは起こるはずもなく、そんな事も忘れて俺は、旅館のお土産売り場で、ペナントなんか買って喜んでいたのさ☆ 結局、特殊警棒を友達に見せびらかして、旅館の壁にボコッと穴をあけて、先生にばれたらヤバイなってことで、非常にびくびくして帰路についたのだったな☆ その後、俺の特殊警棒は、松の木をひっぱたいたらひんまがっちゃって、そのまま粗大ごみの藻屑と消えていった… 80年代の男の子なら一度や二度はやらかす、ポマードの匂いのちっさな武勇伝でした☆ おしまい