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カテゴリ:教育
社会に善をもたらす人に 教育は人間らしくあるための基盤 ブラジル サンパウロ大学元総長 フラヴィオ・ファヴァ・モラエス博士
青年を育てる「平和の使者」 ――1908年、日本人移住者781人が、初めてブラジルに渡航してから、本年で111年。その後も、ブラジルは多くの移住者を受け入れ、「世界最大の日系人社会」が築かれました。
ブラジル人の多くは、日本人感謝しています。なぜなら、日本人は幾多の試練に耐えつつ、ブラジル社会に溶け込み、国の発展のために、大きく貢献したからです。今の経済成長は、日系人によってもたらされたといっても過言ではありません。 私は特に、日本人の「平和」を求め、「教育」を重んじ、「人権」を守ろうとする姿勢に敬意を表します。日系人はその心を受け継ぎ、〝良き市民〟としてブラジル社会で輝いています。
――ファヴァ博士は95年4月に来日し、東京・八王子市の創価大学を訪問しておられます。この時、サンパウロ大学と創価大学の「学術・教育交流協定」の更新も行われました。
当時、私はサンパウロ大学の総長を務めていました。私たちが訪日した時は、ちょうど創価大学の桜が爛漫と咲き誇り、その美しさに心を奪われました。 さらに、うれしかったのは創価大学の学生たちとの出会いです。ポルトガル語の横断幕を掲げ、ブラジルの歌を歌って、温かく歓迎してくれました。皆さん、礼儀正しく、あいさつも素晴らしかった。 創価大学との交流は、これまで温めてきたブラジルと日本の友情の結晶であり、大変に重要なものだと思っています。
――創立者の池田先生はサンパウロ大学で史上初となる「名誉客員教授」に就任しています(93年2月)。ファヴァ博士が来日された95年4月、先生と会談し、「教育革命の必要性」「人類貢献の人材を育む大学の使命」などについて語り合われていますね。
池田SGI会長に初めてお目に掛かった時のことは忘れられません。ユーモアにあふれた方で、まるで級友にあったような、心地よさを覚えました。 池田会長からは二つの印象を受けました。 一つ目は、戦争をなくすためには何ができるかと真剣に考え、行動されている方だと感じました。〝必ず、世界平和を築いてみせる〟との強い意志に、胸を打たれました。 二つ目は、青年への思いの深さに驚嘆しました。池田会長は〝未来を変えられるのは、青年しかいない〟と強く訴えていました。 世界には、多くの指導者がいまが、何に光を当てるかは、それぞれ異なります。たとえば、「政治」に力を注ぐ指導者もいる。「経済」や「スポーツ」を重視するリーダーもいます。 その中にあって、池田会長は未来を見据え、「青年」に焦点を当てています。青年を信じ、青年を本気で育てようとされている。そこが、素晴らしいと感じました。 この日の出会い以来、おりあるごとにブラジルSGIと交流を深め、池田会長の書籍を学んできました。 現在、私が担当している授業の一つでは、会長が2017年に発表した「SGIの日」記念提言を教材として活用しています。 このSGI提言には「難民問題」を解決するための具体的な方途が示されています。難民問題を解決することは、人間としての尊厳を取り戻す戦いであると思います。 日本は世界で唯一、戦争で原爆が投下された国です。だからこそ、日本人である池田会長が核兵器廃絶を訴えることに大きな意義があります。 「原水爆禁止宣言」を発表された創価学会の戸田第2代会長。その「平和の種」を、池田会長が確かに受け継ぎ、大きく育ててこられました。まさに、池田会長は「「平和の使者」なのです。 この師弟に脈打つ平和の哲学を、後世に広く伝えていくことが重要であると確信しています。
言葉と行動を一致させる生き方 ――ファヴァ博士はサンパウロ大学を卒業した後、母校で50年の長きにわたり、教べんをとってこられました。教育者として、心掛けていることはありますか。
私自身が学生の模範になることです。先輩が後輩に良き手本を示し、正し生き方を伝えることです。 その意味で、自分のいったことに責任を持っていくべきだと思います。たとえば、医学部の学生にタバコによる健康被害を教える授業で、教授自身がタバコを吸いながら話していれば、説得力はないでしょう(笑)。 同じように、自分の言行を一致させていく努力が大切です。 「人間」というのは、生まれた時は誰もが純粋です。しかし、周囲の環境によって、良い人にも悪い人にもなっていきます。善悪を判断するために必要不可欠なものが、「教育」です。 教育とは、単に知恵を与えればいいというものではありません。ましてや、地位や名誉を得るためのものでもない。 教育は、真に人間を人間たらしめる基盤です。ですから、学校で行うものだけが教育ではありません。子どもたちに接する人は全て「教師」になるのです。その意味で、子どもの最初の教師は親であり、家族といえるでしょう。
――大学の使命とは何だと思われますか。
何のために大学に行くのか――。自分はもちろん、他者をも幸福にするためです。それは、池田会長が言われているとおりだと思います。 ですから、教育の機会はどんな人にも均等に与えられなければいけません。そして、大学では学生たちの視野を広げるような機会を増やしていく必要があります。 私が目指しているのは〝口先だけの無責任な傍観者〟をつくるのではなく、〝社会のために善をなす主体者〟を育てることです。 本来、「教育」と「平和」とは異なるものではありません。教育がなければ、平和はない。平和がなければ、教育もないのです。 だからこそ、平和・文化・教育の価値を創造する創価の活動に注目しているのです。 創価学会は一国の繁栄のためだけではなく、全世界の平和を築くためにあります。それは、ブラジルSGIの皆さんと接する中でも実感してきたことです。創価の平和哲学を、世界により大きく広げていってほしいと願っています。
――次代を担う青年にエールをお願いします。
青年には三つの特徴があると思います。 第一は、頭が「柔軟」である点です。脳も成長し続け、さまざまなことを吸収しやすい状態にあります。 第二は、「情熱」をもっている点です。自身の夢をかなえていこうとのエネルギーがみなぎっています。 そして第三に、「希望」がある。青年には、無限の未来があります。いくらだって、未来を変えることができる。 だから私は、青年たちに言いたい。絶対に「希望」を捨てるな! 良き模範だけを追い求めていくのだ!――と。
Flavio Fava de Moraes 1938年生まれ。理学博士。専門は細胞生物学。サンパウロ大学医学部基金会総裁。同大学名誉抄受。同大学で生物医学長、総長を務めた。このほか、サンパウロ州科学技術局長官、同州研究助成機構学術部長、国際大学協会(IAU)副会長を歴任。フランスの細胞化学学会、アメリカの歯科医学協会などから多数の表彰を受けている。
【グローバル・インタビュー「世界の識者の眼」】聖教新聞2019.10.19 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 20, 2020 03:11:35 AM
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