とある魔術の禁書目録 第4話「完全記憶能力」(内容後半)
こちらは内容後半です(内容前半・感想)「完全記憶能力って、10万3千冊のことか?」頷く神裂「全部、あいつの頭の中に入ってんだってな」「人間の脳の容量は意外に小さい。ですが、要らない記憶を忘れることで、知らないうちに脳を整理している。だから人間は生きていける。ところが、彼女にはそれが出来ない。街路樹の葉っぱの数から、ラッシュアワーで溢れる一人一人の顔。雨粒の一滴一滴の形まで。彼女の頭はそんなどうでもいい記憶であっという間に埋め尽くされてしまう」「待てよ。待ってくれ!あんたたちは同じ組織に所属していながら何でインデックスに悪い魔術師だなんて呼ばれてんだよ?それとも何か?インデックスが俺をだましたって言いたいのか?」「彼女は嘘をついてはいませんよ。私達が同じネセサリウスの人間だということを、自分が追われている本当の理由も、何も覚えていないんです。…だから、自分で判断するしか無かった。自分を追う魔術師は10万3千冊を狙う魔術結社の人間だと思うのが妥当だと…」「…けど、インデックスには完全記憶能力があるんだろう?そもそも、あいつは何で1年前からの記憶を失っちまってるんだ?」「失ったのではありません。正確には、私達が消しました」「消したって…どうやって?…魔術か?…けどどうして?あんたは、インデックスの仲間だったんだろう?あんたにしたってインデックスは大切な仲間なんじゃないのか?だったらどうして?」「そうしなければならなかったからです」俯く神裂「そうしなければ…彼女が死んでしまうからですよ」「彼女の脳の85%を1万3千冊のために使われています。そのため彼女は、常人の15%しか脳を使えません。その15%に記憶をし続ければ、彼女の脳は…」「そんな…記憶を消す以外に方法は?」「ありません」「いつまでだ?」「記憶の消去はきっかり1年周期に行います。ちょうどその時で無ければ、記憶を消すことは出来ないんです。…あと3日」「3日」「私達に彼女を傷つける意思はありません。むしろ私達でなければ彼女を救うことは出来ない。引き渡してくれませんか?私が魔法名を名乗る前に。それに記憶を消してしまえば彼女はあなたのことも覚えていませんよ。あなたがどれだけ彼女を思ったところで…そんな彼女を助けたところで、あなたにとってなんの役にもなりませんよ」「くっ…ふざけんな!あいつが覚えているか、覚えていないかなんて、関係あるか?わかんねえなら一つだけ教えてやる。俺はインデックスの仲間なんだ!今までもこれからも。あいつの味方であり続けるって決めたんだ。聖書に書かれてなくたって、絶対にそうなんだよ。何か変だと思ったぜ。単にあいつが忘れてるだけなら、全部説明して誤解を解きゃいい話だろ?何で誤解したままにしてんだよ?何で敵として追い回してんだよ?手前ら、何勝手に見限ってんだよ!あいつの気持ちを何だと…」「うっせえんだよ!ど素人が。知ったような口をきくな!私達が今までどんな気持ちであの子の記憶を奪ってきたと思ってる?あなたがステイルを敵視している様ですが、あれが一体どんな気持ちであの子とあなたを見ていたと思ってるんですか?どれほどの決意のもとに敵を名乗っているのか?大切な仲間のために泥を被り続けるステイルの気持ちが、あなたなんかにわかるんですか?」回し蹴りを受け転がる上条。跳躍して鞘に入ったままの刀で突く神裂。何とか避ける上条だが「私達も頑張った、頑張ったんですよ!春を過ごし、夏を過ごし、秋を過ごし、冬を過ごし…思い出を作って忘れないように。たった一つの約束をして…アルバムを胸に抱かせて…それでも、ダメだったんですよ。一から思い出を作りなおして、何度それを繰り返しても…家族も、親友も、恋人も…すべてが0に帰る。私達はもう耐えられません。これ以上彼女の笑顔を見続けるなんて不可能です」鞘に入ったままとはいえ、怒りにまかせた神裂の打撃を受け続ける上条「ふざけんな」地面に刺さった刀を掴み立ち上がろうとする上条「…なもん、手前らの勝手な理屈だろうが!!インデックスのことなんざ、一瞬も考えてねえじゃねえか。手前の臆病のツケを、インデックスに押しつけてんじゃねえぞ!1年の記憶を失うのが怖かったら、次の1年にもっと幸せな記憶を与えてやれば、記憶を失うのが怖くないくらいの幸せが来るとわかっていれば、もう誰も逃げだす必要なんざねえんだから。たったそれだけのことだろうが。手前は力があるから仕方なく人を守るってのかよ?違うだろ?そうじゃねえだろ?守りたいものがあるから力を手に入れたんだろうが!手前は何のために力をつけた?手前はその手で誰を守りたかった?だったら手前はこんなところで何やってんだ?それだけの力があって、これだけ万能の力を持ってるのに、何で、何でそんなに無能、な、んだ…」倒れる上条近づくステイル「もういいかな?」頷く神裂ステイルが煙草を放ると地面についた瞬間燃え上がり煙草が消える。音が戻ってきた「待ってください、お姉様!そんなに急がなくても…」美琴を追いかける紙袋を抱えた黒子「黒子、あんたねえ、門限、門限って言ってた割にあちこち連れ回して、遅れても知らないわよ!」ぷいと行ってしまう美琴「お姉様ぁ!…どうしたんですの?」人だかり。歩道橋に風車の羽根が突き刺さっている「…これは?」黒子綺麗な断面「あの鋭利な切り口…気体制御系の能力者のいたずらでしょうか?」「いたずらねえ…」腕章取りつけ「ジャッジメントのお仕事ですわね」羽根に向かう黒子「ちょっと黒子!この荷物どうすんのよ!…もう」紙袋を押し付けられた美琴と、人だかりの中にインデックスの姿…離れていくインデックス。気になる美琴「どうしました、お姉様?」「何でも」蝉の声。小萌先生のアパート眼を覚ます上条。心配そうに見つめるインデックス「当麻」「ここは?うっ…痛ってえ」腕を押さえる上条「当麻!ダメだよ、まだ起きちゃ」「陽が、昇ってる…ってことは一晩明けたのか?今何時だ?」「一晩じゃないよ」「へ?」「三日」「三日?何でそんなに眠ってたんだ?俺」ハッとして「記憶の消去はきっかり一年周期に行います。あと三日」神裂の言葉を思い出す上条「当麻、どうしたの?どこか痛い?」「いや…」(インデックスが俺のことを覚えているってことは、まだ記憶の消去は行われていない。それにインデックスの様子も変わってないみたいだしな)「良かった」「良くないよ!…私、何にも知らなかった。当麻が道路の真ん中に倒れてたって、小萌が言ってた。ボロボロになった当麻を担いでアパートに連れてきたのも小萌だった。私は何にも気付かないで当麻が他の魔術師と戦ってることなんて、これっぽっちも考えないで…私は…私は、当麻を助けられなかった」「何だよ?このグルグル巻きの包帯、ちょっと大げさすぎるんじゃねえの?」優しく言う上条「一応治すためにはそうしとかないとね。魔術みたいにはいかないけど」「そうだな。魔術なんか使わなくても、大丈夫だろう」カチンと来るインデックス「当麻!この期に及んでまだ魔術を信じてないんだね?片思いちゃんみたいに頑ななんだよ!」「そういう意味じゃねえよ。出来ることなら、お前魔術語ってるときの顔って、あんま見たくねえからな」「そっか…私また目覚めてたんだ」「ん?目覚めた?」「うん。けど、その時のことは、あんまり突っ込んで欲しくないかも。意識がない時の声って寝言みたいで恥ずかしいからね。それに…何だかどんどん冷たい機械になっていくみたいで…怖いんだよ」「ごめん」立ち上がりながら「いいんだよ。バカ」優しく言うインデックス「何か食べる?」お粥?と箸持って現れたインデックス「あの…インデックス、さん?」「ん?私はシスターさんなので看病くらい出来るんだよ」「…取りあえず、深く考える時間を下さい…神様」「何で?食欲無い?」かなり不安気な上条。上条の態度に不満気なインデックス。と、「あ!」手を滑らせ、頭から降り注ぐお粥…そこにドアノック「は~い!…小萌かな?」「あれ?家の前で何やってるんです?…上条ちゃ~ん!」ドアを開けた小萌先生。後ろに人影…「何だか知らないけど、お客さんみたいですぅ」ステイルと神裂登場「手前ら!今更何しに?」「ふ~ん。その体じゃ簡単に逃げだすことも出来ないみたいだね」(そうか…インデックスは今まで、あいつ等から一人で逃げてきたんだ。けど、俺と言う怪我人を背負うことになれば…話は違う。インデックスをより安全で確実に保護するために、俺を…)「帰って!お願いだから。私ならどこへでも行くから。私なら何でもするから!」「インデックス!」「本当に、本当にお願いだから…お願いだから、もう、当麻を傷つけないで!」次回、第5話「リミット」今夜12時、インデックスの記憶を消去する儀式が始まる。だが、俺は諦めない。絶対にお前を助け出す!