2005/09/02(金)08:00
フィラリア パート5
日本テレビでの党首討論会 ひどかったですねぇ
みんなが同時に話すのでわけがわからなかったです。
なんとかインパクトを残したいというのは伝わってきましたが
内容が伝わってこないのでは意味ないですよね。
司会が悪いのか、こういう討論は日本人には向いていないのか
やればやるほど支持率が落ちそうな討論会でした。
フィラリアのお話を始めて今日で5日目。
今日は予防のお話をしていきたいと思います。
フィラリアの予防薬はご存知のとおり、月に一回お薬を飲ませることで予防するのが主流です。
今までは毎日飲むお薬しかありませんでしたから
それと比べるとかなり楽になったのではないかと思います。
現在使われている月に一回投与の予防薬は
アイバメクチンという薬もしくはそれを改造したお薬です。
この薬は虫にしか作用しない神経毒で、犬にはこの神経系はほとんど存在しないと言われています。
よって薬自体の安全性は非常に高いのです。
ここで押さえておきたいことは
フィラリアの予防薬は本当は予防ではなく、フィラリアを駆虫する薬であるということです。
これらの薬は安全性を高めるため、ターゲットを絞って駆虫していきます。
そのターゲットはフィラリアのL4(第4期仔虫)になります。
以前にお話をした犬の身体の中で一回脱皮の終わったフィラリアです。
なぜこのようにターゲットを絞るのかというと
もしフィラリアが感染している犬に投薬した場合
すべてのフィラリアを殺してしまうと身体に対する影響が大きくなり
副作用の発現が高くなるからです。
フィラリアが感染すると血液中にミクロフィラリアが多数出現するのですが
このミクロフィラリアの数は非常に多く、ミクロフィラリアが同時に死んでしまったりすると血栓ができたり血圧が変化したりして犬にとって危険な状態になってしまいます。
それを防止するために、できるだけターゲットを小さくして安全性を高めているのです。
すなわち感染している犬にも使用できるように作られているわけです。
L4が犬の体内にいるのは蚊にかまれて1週間から3ヶ月の期間です。
このL4をターゲットに殺していくわけですから、
蚊の出現と同時に予防を開始する必要はまったくありません。
ある程度L4が溜まった段階で殺していけば良いのです。
予防開始は蚊の出現から早くても1ヵ月後以降、2ヵ月後でも十分です。
もし4月に蚊が出てくる地域であるならば、6月から予防を始めれば良いということになります。
しかし、蚊がいなくなっても2ヶ月間は投与が必要です。
蚊にかまれてすぐの状態では効果がないため、確実に予防するためにはあと2ヶ月間予防薬を投与する必要があります。
月に一回のメリットは投薬が楽ということですが、
飲まし損ねると予防できない期間を作ってしまいます。
飲ましているつもりが飲めてなかったり、きちんと蚊のいなくなってから2ヵ月後まで飲ませてなかったりすると感染する可能性がでてきます。
予防薬はできる限りターゲットを絞っているわけですが、
少なからずミクロフィラリアなど他の段階のフィラリアにも影響があります。
そのためフィラリアの予防開始前には必ずフィラリアの感染の有無を確かめる検査をするように指定されています。
これは副作用の出現を確認するために必要な検査というわけです。
その飲まし損ねのデメリットをなくしたものがフィラリアの予防注射になります。
この薬は6ヶ月間持続して予防できるため、年に2回投与すれば確実に飲まし損ねなく予防が可能になります。
薬の成分は飲み薬と同じなので犬に害はないのですが
現在、製造国のアメリカ国内での使用が中止されています。
これはアメリカの国内事情といわれています。
農林水産省は予防注射薬の安全性は問題ないとして認可は下りています。
また、ヨーロッパなどの諸外国でも問題なく使用されています。
我々獣医師も使用に関しては判断に迷うところです。
フィラリアの薬はまだまだ奥が深く話すことはあるのですが
このあたりでまとめておきます。
フィラリア予防薬は予防薬という名前の駆虫薬です。
犬に対しての安全性は問題ありませんが、フィラリアが感染している犬には副作用が出る可能性があります。
月一回投与で投薬は楽になりましたが、投薬し損ねると感染する可能性があります。
投薬開始は蚊の出現から2ヶ月後からで十分で、蚊の出現から飲ませる必要はありません。
しかし、蚊がいなくなってから2ヶ月後まで飲ませることが大事です。
こんなところです。
明日はフィラリアの駆虫に関するお話をしようかと思っています。