アニマル通信

2005/09/03(土)07:47

フィラリア パート6

今日はフィラリアの駆虫と現状についてお話をしたいと思います。 もしフィラリアが感染した場合、駆虫すればよいのではないかという考えは当然あってしかりです。 以前はサイアセタルサマイドという駆虫薬でフィラリアの駆虫が行われていました。 この薬は砒素化合物のひとつで投薬される犬に肝毒性のある危険な薬でした。 現在、駆虫に使用されているイミサイドはこの肝毒性が少なくなり以前よりも安全な薬です。 ところが以前は頻繁に行われていたフィラリアの駆虫が最近はほとんど行われなくなっています。 これには二つの理由が考えられます。 一つはフィラリアの予防薬が安全になってきたということです。 昔使われていたジエチルカルバマジンという毎日飲ませる予防薬は 感染犬に対する副作用が大きく、最悪の場合フィラリアの予防で犬が死んでしまうことも多数ありました。 そのため危険を伴ってでも駆虫するという方法が取られてきました。 ところが現在使われている月一回の予防薬はターゲットの絞込みがかなり正確にできるようになったため副作用の発現率が少なくなりました。 ようするに感染犬でも使用が可能になったわけです。 これが一つの理由です。 二つ目の理由は駆虫の安全性にあります。 フィラリアは右心室と肺動脈の一部に感染しています。 駆虫薬でフィラリアを殺滅した場合、フィラリアの死体は血液中に存在するため出るところがありません。 消化管内の寄生虫なら便と一緒に排泄されるわけですが、 血管内のフィラリアは出口がないわけです。 実際のところは死んだフィラリアはバラバラになって肺の血管の内皮細胞で吸収されます。 しかし、すべてが一度に吸収されるということはないので肺の血管に詰まる可能性が非常に高いのです。 それでなくてもフィラリアが感染していることによって肺の血管はボロボロになっています。 そこに一度にフィラリアの残骸が来ると詰まっても不思議はありません。 肺の血管が詰まると肺が機能しなくなるため死ぬ可能性が出てきます。 そのためフィラリアの駆虫は危険性が非常に高い治療法なのです。 この二つの理由から現在フィラリアの駆虫は減少しつつあります。 ただ、初期感染の場合は心臓内のフィラリアが少ないため駆虫による治療法を選択できます。 これもフィラリアの地域汚染度によってかなり差があると考えます。 まとめてみます。 フィラリアの駆虫する治療法はは現在減少傾向にあります。 その理由はフィラリアの予防薬の安全性が高くなったため 感染犬にも使用ができるようになったことと、いまだフィラリアの駆虫治療による犬の死亡率が高いためです。 今週一週間フィラリアのことについてお話してきました。 予定としては今週でフィラリアの話は終わるはずだったのですが まだ少し話すことができなかったことがあります。 そのため急遽来週ももう少しフィラリアのお話を続けたいと思います。 明日はお休みです。 次は月曜日にお会いしましょう!

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