映画に恋してる

2008/03/13(木)21:38

アース  EARTH

映画館で観た映画(68)

長かった冬も いつしか終りを告げ 春の訪れとともに 目覚めたホッキョクグマの親子。 冷たい雪の感触。 キラキラと輝く まぶしいまでの雪山。 巣穴から顔を出した 子グマたちにとっては 初めて見るすべてが美しい世界。 無邪気にはしゃぐ子グマたちの傍らで 母グマはちゃんと気づいている。 それは 耳をすませば聞こえる 氷の大地が動き始めた音。 早くも戻った太陽の光は力強く すでに厚い氷も 溶けはじめているのだ。 冬の間の子育てで 体力が落ちた母グマは やせ細り、腹をすかせ 一刻も早く食料を必要としている。 まとわりつく子グマたちに ミルクを与えたら 一刻の猶予もなく とにかく 歩きださなければ・・・。 氷が溶けたら 狩りが難しくなる。 春の足音は思いの他早い。 太陽の光は時には「恵み」。 そして時には「脅威」でもある。 望みはあるのだろうか。 歩みを進めるホッキョクグマの親子を ただ淡々と 「神の目」は観ていた。 弱肉強食をメインに描いた 動物モノにありがちな 必要以上に過酷さを描く 残虐シーンは この映画には まったくと言っていいほど でてきません。 意図的にそういうシーンを 外したのかもしれません。 ホッキョクグマの親子が たどったであろう 悲しい運命の結末も 決して最期までカメラは 追いかけることをしませんでした。 余韻を残す カメラワーク・・・。 この映画が描きたかったのは きっと 奇跡の惑星 「地球」という故郷を もっと見つめてほしい、愛してほしいという 「思い」。 個々の動物のこまごました情報や 説教くさい自然破壊への警鐘で むやみに感情をあおりたてることなく 大きな包み込むような視点で 映画は進んでいきます。 50万年前。 まだ若かった地球に 巨大な隕石が衝突して地軸が傾いた。 この時できた23.5度という傾斜は 地球にさまざまな変化に富んだ地形と 四季の移り変わりをもたらし それによって地球はただひとつの 生命が存在しうる惑星になったのだそうです。 そんな奇跡が本当にあるんだろうか。 説明されてもまるで 神話を聞かされているようなキモチになる。 だけど 超ハイスピードカメラが映し出す 雲の動き、太陽の光が照らす大地、 そして何より 枯れた野山が 季節の流れとともに 山肌を駆け上るように 薄桃色の桜で満開になる瞬間には 無条件で涙ぐんでしまう。 美しさに圧倒されて。 普通なら絶対に観ることのできない瞬間を 高性能のカメラと技術を駆使し 流れる時間を自由に操作することで まるで神様の視線でもって 大いなる手のひらの上から 地球を存分に眺めさせてくれるのだ。 なんて美しいんだろう。 この地球っていう星は。 なんて素晴らしいんだろう。 この地上に生きる すべての生命は! ラスト。 無限の氷海で泳ぎ疲れ 獲物を目前にしながらも命尽きる雄の白クマ。 だけど まだ「間に合う」と とても控えめに ナレーションは締めくくっていました。 本当になんとかしたい。 これまでカメラに収められたことのない 地球上で最も美しいものたち。 これは映画館で観るべき映画。 音楽がまた素晴らしかったです。

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