ラッコの映画生活

2006/12/29(金)23:53

『男と女と男』リュカ・ベルヴォー監督(仏1996)

何故か好きな映画(4)

POUR RIRE ! Lucas Belvaux ここの日記のカテゴリー分類の「何故か好きな映画」っていうのには、傑作・名作・人気作ではないのに、そう、どちらかと言うと顧みられない忘れられた作品の中で、特に好きなものを入れています。その1本がこの『男と女と男』でしょうか。ときどき見たくなります。まあ本国とは言え、フランスでは今年も含め2度もDVD化されているようです。 女性弁護士のアリス(オルネラ・ムーティー)はニコラ(ジャン=ピエール・レオ)と同棲(フランスではこういうの多いから結婚していると言ってもいい)して15年になる。ニコラはある事情があって、それはネタバレになるので書きませんが、弁護士を辞めて専業主婦、いや専業主夫をしている。で、最初はそれでも良かったんでしょうが、そして完全に醒めてしまったわけでもないのだけれど、アリスにはスポーツ・カメラマンの愛人ガスパールがいる。アリスはそろそろニコラと別れてガスパールと暮らそうかな、なんて考えているんですが、ニコラは密かにそれを知ってしまう。ニコラはガスパールがそばにいるのを知った上で運河に飛び込み自殺をする。もちろんガスパールが助けるんですが、そうやってニコラはガスパールと知り合いになり、色々な手段を講じてガスパールとアリスの関係に隙間風を吹かせ、彼女を取り戻をうとする物語です。 原題 POUR RIRE ! っていうのは「笑うために」というような意味で、ようするには喜劇ってことなんでしょうが、コメディータッチだけれどゲラゲラ笑うってものでもないですね。寝取られた夫と妻と愛人っていうごくありふれた話なんですが、ボードビル風でいて、けっこうシリアスな物語でもあって、見応えあります。なんと言ってもジャン=ピエール・レオがいいですね。ボードビルでは普通、寝取られた夫っていうのはダメ男として描かれていて、コケにされる対象なのでしょう。ニコラはダメ男と言えば言えなくもないのだけれど、情熱家で、ロマンチストで、純粋で、純情で、でもシリアスで・・・、こういう役を演じられる人は少ないと思います。二人の友人のジュリエットが愛人のいる夫ミッシェルに捨てられるのと、アリスが弁護中の妻と愛人を殺した夫の話が平行して描かれています。三角関係×3です。 なんでこの映画が好きかというと、オルネラ・ムーティーも魅力的だし、J=P・レオの演技もいいし、でもたぶん自分にもこのニコラのようなところがあるからだと思います。とにかく愛した女が好きで好きでしようがないんですね。その子供のようなところがいい。同じような純情さを持ち続けている男性は少ないでしょうから、そういう男性にはこの映画は詰まらないのかも知れません。また女性にとっては、この男の純情を理解・共感できるかですね。ちなみにこの映画は何と言ってもまずレオ演じるニコラがあって、そして心揺れるアリスがいて、愛人ガスパールはどうでもいいんでしょう。アントワーヌ・シャピーは好演していますが、ストーリーの中での役としてはアリスの愛人というだけの意味しかもっていない。中心はアリスとニコラ、とりわけニコラの物語です。これが性が逆だったら何の問題もないんでしょうが、ジェンダー観についても考えさせられます。 監督別作品リストはここから アイウエオ順作品リストはここから

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