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テーマ:おすすめ映画(4001)
カテゴリ:フランス映画
LA LECTRICE
Michel Deville 97min ![]() 寸評:こういう映画は結局のところ日本では流行らないのか?。好きな映画だな~!。主演のミュウ・ミュウが素敵。 ![]() この映画たぶん十数年前に見て、気持ちの良い印象がありました。1~2年前に中古ビデオを見つけて買ってあったのを見ました。気にもとめていなかったのですが、半年ぐらい前に見てやはり気持ちの良かった『恋は足手まとい』と同じミッシェル・ドヴィル監督でした。ビデオジャケットには「日比谷シャンテ・シネ開館以来の初日動員新記録達成!」とありますが、恐らく今では殆ど忘れ去られた作品だと思います。残念です。とっても良い映画です。日本ではたぶんDVD化はされておらず、中古ビデオが入手できるのみだ。 ![]() 物語はミュウ・ミュウ演じるコンスタンスがベッドで夫に『読書する女』という本を読み聞かせるという枠組みがあって、その本の内容を映像化したしたのが映画の本体となっています。読書好きで声の良いマリーが出張朗読をするという新聞広告を出します。依頼を受けて色々な人々の家で本を朗読。そこでの人間模様が冬の南仏アルルの美しい街並の中に描かれます。映像でマリーを演じるのはもちろんコンスタンスと二役のミュウ・ミュウで、このマリーの物語はコンスタンスのイマジネーションでもあり、また原作であるレイモン・ジャンの小説『読書する女』の映画化でもあります。 ![]() 事故で半身不随になった15才の少年エリック、マリア・カザレス演じるルーマニア出身の将軍未亡人、裕福ではあるけれど両親とも仕事が忙しくかまってもらえない少女、欲求不満の中年実業家、マリーが若く美しく溌溂とした女性なので、朗読を聞く男性には15才のエリック始め彼女の女性としての性的魅力も関係してくる。そしてマリー(あるいはコンスタンス)の性的妄想も交錯する。でもこの物語の登場人物はマリーの朗読を聞く人の周辺の人々、つまりエリック少年の母親や祖父、将軍未亡人の家のメイド、少女のキャリアウーマンの母親なども含め皆が孤独を抱えている。そして性愛も含めて孤独の対処薬である人と人の関わりや愛、そういうことが描かれていると思います。職業として確立された形があるわけではない、いわば思いつきの仕事だから、その場その場で色々な躊躇、疑問、トラブルもある。でも明るい曲調のベートーベンの曲をバックにアルルの街を闊歩するマリーは溌溂としている。これが映画の魅力でもあり、また孤独な人々が性的欲望をも含めてマリーに期待するゆえんでもある。 ![]() 以下ややネタバレ 最後の方で元司法高官であった老人の求めでサドの『ソドム百二十日』の卑猥なくだりを、それまでに彼女の職業に疑問を提示していた警察官と医師と老司法官3人の前で朗読しなければならないことになるのだけれど、これがマリーないし彼女の職業に対する裁判のような体をもって描かれ、最初の枠組の夫に『読書する女』を朗読するコンスタンスに戻って映画は閉じられる。 ![]() 朗読というのは不思議なものだ。朗読で聞く名作のカセットテープのこともちょっと話題になるけれど、不特定多数相手の朗読と、面と向かっての個人的朗読は意味が違う。サドの卑猥な文章を老司法官の前で読まなければならなくなったときマリーは躊躇するけれど、これは男性が若い女性に性的描写を読ませるということに意味があるわけだ。そうでなくても朗読者は相手に対する愛とか、思いやりとか、その他その他の相手への感情を前提として読み聞かせる。つまりは朗読行為とは人と人とのコミュニケーションなのであり、それを描くために登場させたのが読書する女マリーなのかも知れない。そしてそこに読書の楽しみや朗読される本の文面自体の内容が交錯し、とてもとても気持ちの良い映画だ。冬のアルルも美しいし、なんと言ってもミュウ・ミュウが素敵だった。 ![]() 監督別作品リストはここから アイウエオ順作品リストはここから 映画に関する雑文リストはここから
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