『優しく愛して』エドゥアール・モリナロ監督(仏1984)
L'AMOUR EN DOUCEEdouard Molinaro87min(DISCASでレンタル)ただ若い頃のエマニュエル・ベアールを見るためだけの映画なんて言う人もいます。たわいもないラブコメディーって言ってしまえばそれまでですが、ボクはどこか好きな映画です。ベアールだけでなく、ソフィー・バルジャックも綺麗で魅力的だし、男性陣ダニエル・オートゥイユとジャン=ピエール・マリエルも良いですね。全体を通しての物語がどうのっていう不満を持つ人もいるかも知れないけれど、それぞれのシーン、芝居的に言えば 場 の演技や演出がなかなか良い。監督のモリナロは『Mr.レディMr.マダム』で有名だけれど、コメディーの流れ作りが上手いと思います。ボクは同じベアールの出た『エレベーターを降りて左』って数年後の映画も好きです。こちらは舞台がほぼアパルトマンの一室(プラス隣家とエレベーターホール)のみのどたばた喜劇で、芝居的な作り。やはり共演の女優ファニー・コタンソンは綺麗で魅力的。美男・美女による軽いコメディーは良いものです。南仏の古都エクス・アン・プロヴァンス。弁護士のマルクは美人の妻ジャンヌと結婚してたぶん8年。子供はいない。仲が悪いっていうのでもないし、愛し合ってもいるのだろうけれど、そして何よりも 情 のようなもので結びついていて、別れるとかになると一抹の心残りのようなものもあるような関係。もちろん女たらしで、妻を放ったらかして女や仲間と遊んでばかりの夫マルクが無責任ではあるのだけれど、でもどこかで互いに深く想っている感じ、この辺の心理がよく描かれている。ジャンヌはビデオ店をやっているのだけれど、マルセイユか何処かに彼女が行って不在なのをいいことに、マルクは女を家に連れ込んでいて、まさに女を脱がしているところにジャンヌが予定を変更して帰ってきてしまう。さすがにジャンヌは愛想をつかして出ていってしまう。ある日マルクが朝帰りをすると誰もいないはずの家に物音が。キッチンに行くとバスローブを着たジャンヌとやや年輩の男性が朝食中。「こちらアントワーヌで、こちらは夫のマルク。」とジャンヌは2人を紹介する。以下少々ネタバレ一方マルクは高級コールガールをしているサマンタと知り合う。彼女の職業を知って最初はお金でサマンタと付き合い始めるが、二人はそれぞれ相手を想うようになっていた。そして2カップル4人の共棲生活が始まる。4人でいると2カップルともとってもほのぼの上手くいくんですね。映画の原題はL'AMOUR EN DOUCEで、「優しく愛して」はまずまずの訳題だけれど、EN DOUCEって言うと「秘かに」とか「そっと」って感じですね。それぞれのカップルが独立していて、それぞれ互いに「しっかり」愛し合うって感じでなく、4人がなんとなく仲良くって、ジャンヌとマルクの 情 のような気持ちもほのかに存在しながら、そして全員を優しく受け入れるアントワーヌがいて、でなんとなく2つのカップルがそれぞれいい感じに上手く行っている。相手を「そっと」愛しているって感じでしょうか。はたしてこんな関係が長続きするものなのか、あるいはまた何時か2つのカップルが離れて独立していくのか、ジャンヌとマルクの縒りが戻ってトラブルが生じるのか、そんなことは解らないんですが、4人の微妙な気持ちっていうのがなんとなく良く解るんですね。それがボクにとってはこの映画の魅力の一部だと思います。監督別作品リストはここからアイウエオ順作品リストはここから映画に関する雑文リストはここから