ドイツでマルチリンガルを育てる

2018/09/06(木)04:57

親の権限と子供の自主性

子供(840)

先週教育庁のA氏と電話でニコちゃんの学校問題について話し合った。A氏はRealschuleの担当ではないので、担当者に問題を伝え、担当者から連絡させると約束してくれた。しかし一向に電話がかかってこないのでこちらから電話したが、何度かけても通じなかった。そこで担当者にメールを書き、A氏にも送信した。 A氏から「担当者と連絡が取れないので、私に電話をしてください」という返信が来た。 私はこの問題をA氏に7月末から相談している。メールも書いた。地元のRealschuleの6年生に空きがなくて困っているということを明確に伝えていたのに、来週から新学期が始まるという段階になってもなぜRealschuleの担当者と連絡が取れないのか理解に苦しむ。 そのことに不満を持ってもどうにもならないので、A氏に電話をした。 A氏は「Realschuleの校長と話し合いました。残念ながら6年生の普通科はすでに31人も生徒がいてこれ以上生徒を受け入れることはできません。特にお宅のお子さんの場合は、少人数のクラスのほうが良いでしょう。バイリンガルコースは24名で空きがありますが、残念ながらお宅のお子さんの英語の成績では6年生からいきなり入るのは無理があります。5年生のクラスは21人程度なので十分に受け入れる余地があります。あとはそちらの選択に任せます。」と言った。「選択とおっしゃいましたが、どんな選択肢があるんですか?」と聞いたら、「Realschuleの5年生かギムナジウムの6年生かの選択です。ギムナジウムの6年生に行っても意味がないと思いますよ。ギムナジウムはAbiturを受けることを目的にカリキュラムが組まれています。たとえAbiturを受けたとしても平均が4とかならどうしようもないですよね。私の子供なら迷いなく私はRealschuleの5年生のクラスに行かせますけどね。」と言った。 「おっしゃる意味はわかりますが、成績表にはギムナジウムの6年生に進級できると書いてあるのに、Realschuleの5年生になることを子供が納得しません。」と訴えると、「それを説得するのが親の役目じゃないですか?」と諭された。「何度も説明しています。でも、本人が嫌がります。もしよければ、息子に説明してもらえますか?」とお願いしてみたのだが、「それはできません。お子さんが13歳や14歳なら話しますが、まだ11歳ですよね?親に全責任があります。子供が自分の好きな学校を決めるのではなく、親が子供に一番いいと思う学校を選ぶべきなのです。子供に理解させるのは親の義務です。」と強い口調で断られた。 「何度話しても子供が納得してくれません」と繰り返すと「カルチャーの違いかもしれませんが、ドイツでは親は子供を教育、支援する義務があるんですよ。子供に好き勝手させていいわけではないんです。」と言われた。何度も「日本ではそうかも知れませんがドイツでは・・」という言い方をされた。私は自分は日本人だとか外国人だと一言も言ってないが、名前とドイツ語の拙さですぐにわかったのだろう。人種差別をされているわけではないが、カルチャーが違うからと片付けられてしまうのは意地悪に感じた。 「他に選択肢はありませんか? 例えばA市やB市のRealschuleの6年生に編入することは可能ですか?」と聞くと、「空きがあれば可能でしょうが、なんでわざわざ片道30分以上かけて通わせるんですか?交通費の援助はできませんよ。自費でお願いします。」と呆れた声で言われた。「でもそもそも地元の学校に空きがないから仕方なくよその町の学校に行かせるわけですよね。」と言っても、「だから5年生になら入れると言っているじゃないですか。」と相手も堂々巡りの会話にいらついているのが電話越しでも伝わってきた。 実は別のギムナジウムで校長をしている友人に相談したところ「Realschuleの6年生にかわったほうがいいと思う。ギムナジウムは6年生から第二外国語が必修になる。これが生徒にとってとても大きな負担になっている。コツコツ学ぶ習慣がない子にとってこの壁はすごく厚い。ニコは一人で家にいるのが問題だと思うから、A市の教会が経営している寮にいれてみてはどうだろうか。そこは学校ではないので、A市の学校に転校手続きをして寮から学校に通うことになるが、食事は美味しいし、宿題の面倒も見てくれるよ。」と教えてくれた。翌日早速問い合わせてみたが、寮には空きがないと言われた。 結局最善策はRealschuleに転校し、5年生からやり直すことしかないようだ。 賢浩、恵子とともに一生懸命ニコちゃんに、Realschuleの5年生からやり直すことが一番ためになることだと説明した。ようやく理解してくれたところに、夫から電話があり「本当にそれでいいのか?ギムナジウムの6年生に行かなくてもいいのか?」とニコを問い詰め、また振り出しに戻ってしまった。夫は「Realschuleに行くことはニコにとって本当に幸せなことなのか?5年生をやり直すことに本当に納得しているのか?ママが言うから仕方ないと思っているのではないか?僕はニコに幸せでいてほしいだけ。」ともっともらしいことを言いながら、結局はニコを混乱させているだけだと思う。夫の無責任さに腹が立ってしょうがない。以前から教育方針にかなり隔たりがあると思っていたが、水と油でどこまでいっても融合することがないのだとはっきりわかった。 夫からは子供がしたいことをさせてあげるのが親の役目と言われ、教育庁の人には子供にとってベストな道を決めてあげるのが親の仕事と言われる。どちらからも責められて、ここから逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。

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