光のベール
あたたかな風に 天使見習いが 翼を きゅっと縮めた。 (どうしよう どうしよう 忘れちゃった) さっきまで ウトウト 夢を見ていた。 深海でゆらりゆらり揺れていた頃の 夜空を自由に翔けていた頃の 大地を踏みしめていた頃の。 何度も生まれて 何度も土に還った。 十四回めに 声を聞いた。 「天使 やらない?」 いつのまにやら 天使見習い。 先輩天使に連れられ あっちの世 こっちの世。 そして いよいよ 卒業試験。 これができたら 見習い終了。 課題は 天の光を届けること。 天の光を 心一杯吸い込み 地上に降りた。 翼をたたんで 目を閉じた。 南風が合図。 南風吹いたら・・・どうするのだっけ? 思い出せない。 ほんの少しだけと 眠ってしまったのがいけなかった。 夢を見ている間に 忘れてしまった 天を出る時 もらった言葉を。 あたたかな風が ほらほら と吹く。 (ああ どうしよう) だれかが 翼を つっついた。 「♪ ♪ ♪♪♪」 この声は・・・ 遠い遠い日に 海か 空か 大地で聞いた。 思い出せないほど昔 でも いつも そばにいたひと・・・。 翼をほんの少しゆるめて そのすきまから 声の主を見た。 萌黄色の小鳥が一羽。 目に白のふちどり。 メジロは 小首を傾げて 言った。 「ドウシテ サカナイノ?」 翼が 震えた。 咲きたい 咲きたい と 震えた。 だって・・・ 咲くために。 思い出した。 『南風吹いたら 咲くんだよ』 あたたかな風が ほらほうらと くすぐる。 陽光が くすくす笑いながら 背中を支えてくれる。 メジロは 咲いて咲いて と 跳びはねる。 翼を 開いた。 光が こぼれ散る。 嬉しくて 笑ったら 光 あふれた。 五翼の天使 ただいま デビュー。 光のベールby Katsumi 「フリー写真ブログもってって!」 ただいま Katsumi氏 & みやび氏 & 無花果。 競演中 ブログ「みやび」にて みやび作品「光のベール」も掲載中 ぜひ そちらとあわせて お楽しみ下さい。