燦 1・2 あさのあつこ
文庫で新シリーズスタート。こういう薄い文庫でシリーズ展開だと、先が待ち遠しい。もどかしい。1・風の刃田鶴藩筆頭家老の嫡男・吉倉伊月は、藩主長城守常寿が次男・圭寿に仕えている。筆頭家老・吉倉伊佐衛門の父と長城守の母は姉弟として濃い血縁で結ばれていた。長城守、圭寿のお供で鷹狩りに出た際、藩主が襲われた。刺客は鷹を操り、剣も伊月以上の動きを見せる。刺客に逃げられ、拝領の刀を折ってしまった伊月は、切腹の覚悟を決めるが、それを止めたのは刺客であった少年・燦だった。彼との出会いから、明らかになる真相とは―~ネタバレメモ~燦は伊月の双子の弟。尋常ではない能力を持つ「神波の一族」の生き残り。伊月と燦の母が神波の一族だった。だが、一族が管理していた金をめぐり、藩主が一族を討つことを決断。それを知った彼らの実母は自害。赤子だった燦は約定通り、神波一族の長で彼らの祖父・兎十が連れて行ったのだった。将来は分家して、寺子屋で教えつつ、戯作者になるのが夢というのどかな圭寿だったが、跡継ぎである兄が病で亡くなり、次期藩主として江戸行きが決まる。自分の血筋を知った伊月も彼と共に江戸へ。兎十は刺客は自分だと知らしめ自殺。祖父の遺言もあり、燦も江戸へ。燦を想う篠音、弟分の與次はこの地に残ることに。伊月・燦には隠された宿命があるらしい。~~~~~~~~~~~~~2・光の刃江戸での生活が始まり、藩の世継ぎとなった圭寿と共に窮屈な大名屋敷で暮らす伊月。異能の一族に生まれ育った伊月の双子の弟・燦も江戸の長屋で暮らしはじめていた。藩主となることを受け入れつつも、戯作者の夢も捨てきれない圭寿の頼みで、版元・須賀屋を訪れた伊月。その帰り、とある騒動を通して伊月は燦と再会する。大名屋敷内では、圭寿の命を狙う動きがでていた。~ネタバレメモ~須賀屋は神波の一族なのだろうか?神波の一族、伊月のことを知っており、戯作の作者が圭寿であろうことを予測しつつ、戯作者の才能は原石かもしれないとし、書き直すよう伝える。圭寿の作品は神波の一族がモチーフとなった「神波碧空伝」。圭寿は毒殺されようとしていたのだが、微量の毒の入った椀には手を付けていなかった模様。圭寿の危機察知能力(無意識らしいが)は異能である。このことから、彼も神波の血を引いているのかもしれないと思うのだが…。彼の夢は寺子屋→藩校へ。藩主となっても先を見据えている。圭寿に付き従い、伊月が家を継がず彼の影として生きるのではと不安になった義母・八重は、伊月の義弟であり、自分の息子が跡継ぎになることがないよう、伊佐衛門に離縁を申し出る。しかし、伊佐衛門はどのようになっても伊月が圭寿の影として生きるよう育てた(伊月に家は継がせない)と退ける。八重は前妻(伊月の実母)美加子が夫の心を今でも占めていることも理由だと告げる。燦も屋敷内の不穏な動きを嗅ぎ取っている。圭寿は自分が藩主となった時、燦にも手を貸してほしいと、燦と会いたいと伊月に告げる伊月に圭寿の危険を知らせた石崎が殺されたところで、続く。