日々のあぶく?

2006/03/12(日)12:12

クワイエットルームにようこそ・松尾スズキ

本(1447)

未見だが、映画版「インザプール」で伊良部役だった松尾氏。(ちなみに、TV版の伊良部役は阿部寛) そんな彼が書く精神病棟モノ、と聞いて漠然と伊良部的キャラの登場を待ってしまった。 が、イン・ザ・プールの作者は奥田英朗。 当たり前のことだが松尾氏ではないので、全く別のお話である。 松尾氏は劇団「大人計画」の主催者でもある。 彼との喧嘩後、酒と精神安定剤などを大量に摂取し、意識不明に。 オーバードーズで気がつけば病院にいたわたし・明日香。 しかも、内科で良いはずが、摂取した薬の量から自殺を疑われ、救済措置である医療保護(いわゆる"強制"入院で退院には保護者の許可がいる)入院として精神病院にいた。 朦朧としながらも気付いた時には身体は拘束され、トイレも室内にある部屋。 のちにそこは通称・クワイエットルームと呼ばれ、周りに迷惑をかけたり、困った患者が入るところだと知って愕然としながらも「普通」であると認めてもらって早く退院しようとする。 無機質なナース・江口、ピアノの上手い輪島愛、摂食障害のミキとサエちゃん、 退院しようとする金原さん、頭も燃やすチリチリ、粘着質の困った人・西野さん、 同じOD(オーバードーズ)で入院し、患者たちからの人気者だった栗田さんなど濃い面々の中で過ごすことに。 頼みの綱である恋人の鉄ちゃんは「芸人を窮地に陥れる番組を作らせたら日本一」の異名を取る売れっ子作家で、あろうことか罰ゲームで彼自身がミャンマーの奥地に連れて行かれてしまった! 彼の弟子のようなコモノくんでは役に立たない。 仕方ない状況の中、自分を見つめ、サエちゃんのジクソーパズルを手伝い、周囲を見渡す。 旅行中の失態に幻滅、つまらない男だったため離婚した後に自殺した夫、堕胎した子供、鬱病になったこと、勘当中に亡くなった父のこと― エッシャーの階段を上る兵士の絵のジクソーパズルは最近、ラッシュライフでもポイントだったのでタイムリーだった。 自分を見つめ、鉄ちゃんを解放する明日香。 ここから出たらここ(精神病院)のことは忘れる。 そうやって皆生きていく。 重い話をこんなにもあっさりと読ませてくれるというのも不思議。

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