日々のあぶく?

2006/06/17(土)12:37

七色いんこ・手塚治虫 メモ

本(1447)

それぞれに土台となる舞台があるのでそのメモをば。 (巻数は少年チャンピオン・コミックス版) 劇の内容は付いていた解説を参考にしました。 1巻 第1話:「ハムレット」~シェークスピア作。話は周知の通り。      いんこと千里刑事の出会い篇。 第2話:「どん底」~マクシム・ゴーリキ作。どん底を生きる浮浪者の性格を軸に、安らぎが再び絶望になる話。      どん底の役のため、浮浪者になった役者をいんこが舞台に戻すまで。 第3話:「修善寺物語」~岡本綺堂作。夜叉王の彫った源頼家の面は死相が出ていた。その面をもって帰った頼家は討たれ、その面をかぶって身代わりになった夜叉王の娘・かつらも斬られた。娘の面を作るため、夜叉王は瀕死の彼女を一心に写生する。      一枚の首相の絵を仕上げることに心血注ぐ画家、売りたい娘・かつらと父を支えるかえで。かつらの依頼で首相に化けるいんこ。火事が起こり、かつらが焼け、画家はいんこに役のために死にゆく娘の姿を見せる。 第4話:「電話」~ジャン=カルロ・メノッティ作。恋人に求婚しに来た男が彼女にかかってくる電話のためになかなか言い出せず、翻弄される話。      いんこに弟子入り志願した娘が両親の反対を受け、飛び出し、失明。いんこは彼女を「電話」の舞台に上げ、励ます。 第5話:「誤解」~アルベール・カミュ作。追いはぎ宿屋の母子が家出した実の息子が客で来たのに気付かず、殺してしまう話。      逃走中のいんこが立ち寄った宿屋の主人は怪しい母子だった。 第6話:「ピーター・パン」~ジェイムス・バリ作。      捜査の一環でピーターパン役を命じられた千里刑事。捜査を手助けしてくれた舞台監督は実はいんこだったという話。 2巻 第1話:「幕間」~出てくる話は「ファウスト」~ゲーテ作。学問に失望したファウストが、悪魔メフィストフェレスと契約し、若返り、人生を生き直す中で辿り着く真実は…      麻薬取引の金を奪ったいんこは追われるが、有名な劇団主催者だった牛沢に育てられた人間臭い犬・玉サブローに助けられる。 第2話:「検察官」~ゴーゴリ作。検察官の視察の噂を聞いた町のボスどもが、違う青年を検察官だと勘違いして接待する話。      マフィアの隠し財産の継承者の子供から隠し場所を探るように脅されたいんこは子供の兄に化ける。 第3話:「じゃじゃ馬ならし」~シェイクスピア作。じゃじゃ馬娘を淑女に仕立て上げる話。「キス・ミー・ケイト」としても舞台化されている。      本当の馬も出てくるが、千里刑事に男谷マモルとのお見合いが出てくる話。 第4話:「ゴドーを待ちながら」~サミュエル・ベケット作。不条理劇。ゴトーを待つ男とそれを見つめる男、だが、最後までゴトーはこない。      自分を創ったゴトー博士を待つロボットの話。 第5話:「シラノ・ド・ベルジュラック」~エドモン・ロスタン作。      演じたシラノ役を酷評されたいんこは批判した演技の神様・胡月にシラノ役を願い出る。 第6話:「彦一ばなし」~木下順次作。ずる賢い彦一が天狗や殿様を騙して利益を得ようとするが―      楽して儲けようとしたいんこだったが―悪知恵はろくなことにならないという話。 3巻 第1話:「南総里見八犬伝」~滝沢馬琴作。      玉サブローが恋した犬を助け出す手伝いをしたいんこ。だが、彼(犬)の恋した犬はオスだったというオチ。 第2話:「青い鳥」~メーテルリンク作。      青い機械制御の暴走した殺人自動車を追う千里刑事と(彼女に協力を強いられた)いんこ。 第3話:「ヴァージニア・ウルフなんか怖くない」~エドワード・オルビー作。子供のいない夫婦が憎しみ合いながら妄想上の子供をとうとう殺してしまう話。      その舞台にたったいんこを酷評した評論家に復讐(騙して盗みに入る)する話。 第4話:「人形の家」~イプセン作。ペットのように自分を甘やかす夫の身勝手さに気付いた妻は一人で生きるために出ていく。      自分の才能に溺れる女優であり妻に目を覚まして欲しいといんこに共演を依頼する夫。最後まで自分本位の妻からは夫のみならず、彼女の身体自身も見放し、出て行く。 第5話:「12人のいかれる男」~ヘンリー・フォンダ主演の映画がもと。      陪審員の一人になったいんこが無罪になりそうな、容疑者で有力者の息子の罪を暴くまで。 4巻 第1話:「棒になった男」~阿部公房作。生きているうちから死んだも同然のただの棒っ切れに過ぎない人間という現代批判を反映した劇。      鞄役を受けたいんこはトイレに行かなかったばかりに― 第2話:「セールスマンの死」~手塩をかけて育てた長男が大成しないのは自分のせいだと思う父。そんなことはないという息子のために自分の保険金をと父は自動車のスピードを上げた。      いつでも自分を隠して他人を演じ続けるいんこの欲求が幻影となって彼を悩ます。 第3話:「タルチュフ」~モリエール作。大ペテン師タルチェフが金持ちの家に入り込み、多々画策するも、最後は正体がばれて追い出される。      悪い男(足)に騙されているお嬢様を助ける運転手を手伝ういんこ。 第4話:「ピグマリオン」~バーナード・ショー作。映画「マイ・フェア・レディー」の元。ただラストはイライザとヒギンズ教授は結ばれず、偉い学者であっても若い女性まで思い通りにならないというもの。      来日するプリンセスの護衛を命ぜられた千里刑事は男谷マモルの指導のもと、粗相のないようマナーを教え込まれる。(最後は大立ち回りあり) 第5話:「靱猿」~毛皮欲しさに猿回しの猿を殺せと命ずる大名だったが、それを知ってか知らずか無邪気に芸をする子猿の哀れさにうたれて許すという狂言。      尾上扇十郎に憧れる玉サブローだったが、彼の真似をして舞台を台無しに。殺される所だったが、健気さで許され、靱猿の猿役を得るが、犬が猿の役をやるのは無理だった― 第6話:「森は生きている」~マルシャーク作。12人の月の精たちと少女、わがまま女王の話。      ワガママなオーナーの息子の演出に耐えかねた演出家がいんこの協力の元、矜持と勇気を取り戻す。 第7話:「三文オペラ」~ベルト・ブレヒト版。乞食の親分の娘と泥棒の親分が恋仲に。娘の結婚に大反対の父親は泥棒を告発するも、女王の恩赦で助かるというブルジョワ社会への風刺劇。      不良の百済と優等生の知佳は恋人同士。知佳の母は大反対、百済と災害時に友情を誓った校長は彼を擁護する。 5巻 第1話:「恋わずらいのなおし方」~ソートン・ワイルダー作。リンダへの片思いの辛さから、彼女を殺そうと思う男が、リンダの叔母らから愛情は報いられなくとも無駄にはならないことを教えられ去る話。      いんこ逮捕の協力を求められた千里刑事の後輩のスケバンの幹部・モズクがいんこに恋する。想いは報われなくても自分の人生の糧を見つけることの大切さを教えられ、彼を助ける。 第2話:「俺たちは天使じゃない」~アルベール・ユッソン作。親戚の策略で島に追いやられた一家に同情した殺人犯らが彼らを助けてくれる。      盗みのためにある家に潜り込んだいんこらだったが、そこの娘が虐げられているのを知り、助ける。 第3話:「ベニスの商人」~シェークスピア作。      ステーキの大食いに敗れ、借金を背負った玉サブローを騙したレストランと同じ手口で助けるいんこ。 第4話:「化石の森」~ロバート・シャーウッド作。絶望にさいなまれ砂漠の酒場を訪れた詩人はギャングから酒場の利己的な父の元で働く娘を助ける。      麻薬の代金を奪ったいんこがとうとう捕まる。彼を締め上げようとするマフィアはかつての友人で、今は子供達をがんじがらめにする男を訪ねる。マフィアの言いなりの父を尻目に息子らは自力で対決する。 第5話:「ガラスの動物園」~テネシー・ウィリアムズ作。過保護な母親に育てられた内気な娘が失恋するも、自分に自信をつけてくれた男に大事なガラスの動物を送る。      過保護な母にいいなりの少年の家庭教師になったいんこは彼に自主性をつけようとする。 第6話:「仮名手本忠臣蔵」~仮名手本とは"いろは"の数と同じ47人の義士がいたことからついた。      猫に殺されたいんこの無念を晴らすため、玉サブロー大活躍、という劇の話。 6巻 第1話:「十一ぴきのネコ」~井上ひさし作。夢を抱いて冒険にでた猫たちはその後出世する。そのことを憂う一匹を昔の仲間達は殺してしまう。      一揆を企てた罪で殺され、燃やされた寺(僧侶)たち。彼らの隠した資金を狙ういんこは無口な村の小学生に演技を教えることに。 第2話:「犀」~ウージェーヌ・イヨネスコ作。犀が走ってきて、町中の人が犀になってしまう。たった一人の男を除いて―      玉サブローの流し目が流行になるが、あっという間に飽きられてしまう。 第3話:「欲望という名の電車」~テネシー・ウィリアムズ作。自堕落な生活を送るブランチが現実から逃れ、新しい生活を望むが、現実主義者の義弟に阻まれ精神病院へ。      歌手に弟子入りする妄想に捕らわれる少年の目をいんこが覚ます。 第4話:「サロメ」~オスカー・ワイルド作。自分を拒んだ預言者ヨハネの首を父王にねだったサロメ。      財宝のありかを示す首輪をしたキツネ・ヨナカーンを狙ういんこだったが、サロメのようにわずかの欲のためにキツネを苦しめることを諦める。 第5話:「王女メディア」~エウリピデス作。夫に裏切られ、復讐から最後には自分の息子にまで手をかけてしまうメディア。      メディアの出演者の一人が死亡。代わりにいんこが代役をかって出るが、陰謀に巻き込まれていく。(実はいんこに盗まれたことのある俳優の復讐で、陰謀に巻き込まれて右往左往するいんこを笑いものにしようとした) 7巻 第1話:「結婚申込」~チェーホフ作。恋人に結婚申込に行くも大喧嘩になってしまう話。      プリンセスの警護が評価され、アメリカとソ連から出張要請が出た千里刑事。いんこと離れたくない彼女はそれぞれの使者を怒らせ破談にする。 第2話:「コルネヴィルの鐘」~ジャン・ロベール・ブランケット作。幽霊が出ると人払いし、隠しておいた財宝を取り出す男だったが、幽霊が鳴らすという鐘が鳴ってしまい策略が露見する。      城に隠された財宝のありかを探るため、幽霊の振りを依頼されたいんこ。 第3話:「終幕」~いんこの生い立ち、千里刑事との隠された(彼女が忘れていた)関わりが描かれ、いんこが実の父・鍬潟隆介の悪事を暴く舞台に立つラストまで。

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