カテゴリ:本
その決断が未来を変える。
3つの短編が連鎖して、世界を変動させる。 「試されていたのかもしれない。たとえば、勇気の量を。」 「個人の力を超えた、大きな力が物事を動かしているような気がする。」 「臆病は伝染する。」「勇気も伝染する」 震災前に書いたとのことだが、なんだか(直接ではないが)彷彿とさせるようなところあるような気がしないでもない。 でも、偶然でも現実に起こったことと一部の表現がリンクするようなことというのは (震災前後に関わらず、小説に)多いだろうな。 そう思うと、今、小説家には逆に書きにくい時期かも・・・? ---------------------------- ・PK 10年前、2002年の前年、ワールドカップ予選で日本代表の要の小津のPKで決めたゴール。 父親の友人・次郎君の恐怖体験で躾けられた兄弟。 幹事長に偽証を強要されている大臣と彼に付き従う無愛想の秘書官。 大臣は秘書官に命じ、小津のゴールについて調べさせる。 PK直前、チームメイトで小学校の時からの同級生・宇野とどんな会話を交わしたのだろう? 小津も宇野も亡くなっており、事実を本人に確認することはできない。 小津の息子の誘拐説、小津と宇野の妻の不倫説、スポーツ賭博疑惑など、 様々な説が浮かび上がる。 次郎君の恐怖体験で躾けられたのは大臣。 大臣の父は作家であり、謎の男に指定通りに小説を改稿するよう圧力をかけられる。 断れば大変なことになる、と言われて・・・。 父親は浮気相手から自宅にかかってきた電話を、 ゴキブリが出たおかげで妻(大臣の母)に取られず、事なきを得たことがあるあるらしい。 25年以上前、大臣はマンションから落ちた子供を助けたことがあった。 小学生のころの宇野と小津は、その現場を目撃したことがあった。 子供に自慢するほうを選ぼうと大臣の父は改稿依頼を断り、 子供が目の前で助けられるところを目撃し(勇気を得)たことのある小津は、 PKが決まれば勇気を与えられることもあるという宇野の助言で、 PKをはずしてほしいという依頼を無視し、 そして、だいじんは・・・ 次郎君=秘書官!? ・超人 独身謳歌中の小説家・三島のもとを訪れた警備会社の営業社員・本田は、 未来が分かると言った。 一夜限りの浮気をこじらせ、妻と別居中の田中もその場に居合わせていた。 本田青年に届くサッカーの試合結果速報には、2年前から人の名前と数字が記されることがあった。 (他人には結果速報にしか見えず、また、時間が経つと本田にも速報にしか読めなくなる) それが、その後事件を起こす人物(加害者)だと気付いた本田は、 その人物を先回りして殺害していた。 その時、本田のもとに届いたメールには10年後の予知が届く。 被害者の数は1万と膨大な数だった。それは、少し前に大臣に就任した政治家だった。 就任2か月の大臣は、病で子供を失ったことがあり、 大臣の父の不倫相手からの電話を、母がとって大騒ぎになったことがあるらしい。 大臣は秘書官に27年前に助けた子供を探してほしいと依頼する。 とあるサッカーの試合の審判は、ファウルではないプレーにPKの判定を下す。 27年前、現代人に命を救われたのは本田毬夫だった。 その後、大臣の要望で、会うことになった本田。 本田が受け取ったメールの大臣は彼だった。 席を外したところで、大臣を狙う集団に襲われた本田を救ったのは 青い生地の服を着た男だった。 席に戻った本田が再び受け取ったメールは、前節のサッカーの試合は 公式審判の複数人がサッカー賭博に関与していたことが明らかになり、 無効になったと記されていた。 本田が受け取った「大臣が将来大きな間違いを犯す」と思われるメールも誤報に。 「間違いはそれを正すのを拒むまで間違いとならず、 過ちを認めることから物事ははじまる」 大臣はとある決断をし、その会話を聞いていた謎の男は忽然と姿を消す。 ・密使 握手をした相手の時間を、一日の終わりに(一人につき6秒)盗める三上は、 たくさんの人と握手できる職業として、ヒーローショーを選ぶ。 そして、現世界を維持したまま、歴史の変更するために、 その能力が必要だとの依頼を受ける。 ちょっとした行動が、最初のドミノとなって、最終的に大きな変化となる。 そのちょっとした行動とは、とあるゴキブリを盗むことだった。 それを人間の未来を担う密使として過去に送るという。 ゴキブリの出現によって変化する人間の行動が、最初に倒れるドミノの一つ、なのだという。 (3億年以上前から進化が完成している→4億年前に送り込まれたゴキブリがいるからとの説がちょっと面白い。) 重要な分岐点は、とある家庭にかかってくる夫の浮気相手からの電話を ゴキブリの出現によって、妻ではなく、夫がとるようにするところだった。 それがきっかけで、最終的には恐ろしい菌の蔓延が防止される。 だが、過去にゴキブリを送る瞬間、ゴキブリは消え、 死ぬはずだった三上は生き延び、 そこには「今までのやり方よりも、より効果的に、求めていた結果が得られます」との広告のコピーが・・・。 怪しいのは「失言に気を付けないと」とつぶやく緑色のコスチュームを着た人間・・・。 未来の三上? あれ?握手した相手の時間を盗めるだけで、握手してない研究所の人間の時間は盗めないのでは?? あ、でも、声を上げた瞬間、握手してなかった相手の時間も止まったんだっけ?あれ? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 18, 2012 12:05:24 AM
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