カテゴリ:本
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以下、ネタバレ内容メモ。 ----------------------------- ・探書壱 臨終 地本問屋の秋山武右衛門の紹介で店を訪れた男は神経をやられ、病を患っており、 臨終前に読む本を売ってほしいと弔堂主人に言う。 男は昔、別れた女と赤子の幽霊をみた。 しかし、近代人として生きようと合理的に考えようとした彼は 幽霊は居らず、神経のせいだと思い、生涯を幽霊を否定するために費やし、神経衰弱に。 主人は幽霊は居らずとも見えるもの。そんな男の現世が眠っていると一冊の書物を渡す。 男の正体は国芳に入門、残虐な血の絵で名を残しながらも 歴史画や洋画も学び、新しい浮世絵をつくろうと研磨した最後の浮世絵師・月岡芳年。 男が帰った後に高遠は、主人が選んだ一冊が外国語で書かれた 信心に因って得られる様々な体験についての講義の覚書(ノート)だと知る。 男は目を病んでおり、実際には本を読めぬ状態であることを主人は察し、 男の生き方のうらがえしの人生が封じ込められていると本の内容を伝え、 読めずとも理解でき、男だけの現世が立ち上がるならば、それは読書だと、 男に相応しい本だと薦めたのだった。 ・探書弐 発心 高遠は東京郵便電信局庁舎近くで、郵便物を積んだ荷馬車を凝視する青年を見かける。 直後、丸善で青年と出会った高遠は、青年が尾崎紅葉の弟子だと知る。 青年は自分が文士を志すことを決めた、人生を変えた一冊は紅葉の小説だという。 だが、師の作品に心打たれているのに自分の求める世界にはお化けがおり、 それは師の意志に反したものを汲み出そうと、愚弄しているのではと苦悩する青年を 高遠は弔堂にいざなう。 主人は青年が釈迦の母・摩耶夫人信仰していること、出自などを推察。 紅葉と青年には信頼関係があり、怪を好むのは師を裏切ることにはならず、 また、怪談は文芸の極みだと説く。 すでに自分にとっての一冊の本に出会っている青年は主人に 観音力と鬼神力と共に困難な道を選ぶ自分に似つかわしくない本を所望。 主人は14年前に起きた松木騒動(地租改正にまつわる暴力事件)について書かれた新聞など資料一式を 青年の筆で読みたいと売る。 青年は後に幻想文学の大家となる泉鏡花(泉鏡太郎)。 3か月後、資料を基に人気作家・巌谷小波の肝煎りで新聞に連載開始。 ・探書参 方便 高遠が休職中だった会社が畳まれることになり、静岡に戻るという社長の山倉と演芸場へ。 その後、山倉が15年前に会ったことがあるという矢作剣之進に会う。 山倉は以前、由良公篤の門弟(孝悌塾)で、由良卿の百物語怪談会で 東京警視庁に勤めていた矢作と会っていたのだった。 矢作は警察を辞め、15年前の疑問、事件について意見を聞きに行った不思議研究会で 師・井上圓了と出会い、哲学館の学生に。 圓了は現在妖怪研究会を立ち上げ、妖怪学の講義もしているのだという。 次の日、弔堂で高遠は勝海舟が、後日訪れる圓了に 哲学館運営するための金を稼ぐ知恵を算段してくれと主人に頼む場に居合わせる。 後日、主人は圓了に彼の知見を求める大衆にも理解できるように講演し、書いた本を売ればいいと助言。 今に通じる新しい方便に役立つ本として鳥山石燕の「画図百鬼夜行」を妖怪学の象徴に、 妖怪迷信はこんなものだと説明するのに、伝統的なお化けを妖怪に見立てればよいと売る。 その後圓了は妖怪学を広く世に問い、妖怪博士と渾名されるように。 ・探書肆 贖罪 高遠が鰻屋で出会った男は勝から紹介された弔堂を探していた。 その男はジョン万次郎(中濱萬次郎)であり、 かつて自分を助けてくれた自らを死人という男(岡田以蔵)を連れていた。 本は人を救うこともあるとの勝の助言を受け、萬次郎は以蔵を救いたいと主人を頼る。 義の在り方の問答などを通し、処刑されたことになっている以蔵は死人としてではなく、 勝の言葉通り名を捨てて生きろということだと主人は諭し、 人がどうやって生きているか知るべきだと「重訂解体新書」を薦める。 ・探書伍 闕如 久しぶりに実家に戻るも、だんだん居心地が悪くなり一人住まいに戻る高遠。 戻った高遠は、世話になっている百姓夫婦が引き取ったが扱いに困っている猫を預かることに。 弔堂で覚悟を戴いたという泉鏡太郎の話を聞き、 店に興味を示した巌谷小波が高遠を訪ねて来たので案内することに。 生涯の一冊(ドイツの少年少女のためのメルヘン集)をすでに持っているが、傷んでしまったため保存用が欲しいと言う小波は、 その若さで後ろを向いていると自身のことを考えているのでは?と主人は指摘。 小波の書く少年向け小説は、新たな、児童文学のひとつの形式になるのではないか、 後退・終着点の一冊ではなく、出発点だと小波を肯定。 件の本と共に「御伽草子」も付録として付ける。 後日、小波は児童向け雑誌の主筆に。その後もその分野において活躍。 小波は高遠に働く気はないかと誘う。 ・探書陸 未完 実家に戻る決心も、働く決心もつかぬ高遠は、 弔堂の買い取り依頼のあった神社が猫の貰い手でもあることから、手伝いがてら同行することに。 依頼主は中野村にある武蔵清明社宮司の中禅寺輔。 陰陽師を、父のする占いやお祓いを迷信だと後を継がず小学校教師になった輔だったが、 父が倒れ、迷信は通用させてはならないが信仰は大切、 氏子のためにもと陰陽師ではなくきちんとした神職として学び、17代宮司に。 輔はこの世ならぬものはない。神霊妖物はこの世のものに非ず=ない、という考え。 洲斎はそれを知る者のみが、それを操る(使役する)ことが出来るとした。 主人・龍典は輔の父の蔵書・先祖代々伝わっているもの、知人から譲り受けたものなどを譲り受けるも 社の由来書、安倍清明の書物、秘伝書、巻物はまだ「生きている」、 洲斎の「ない」と知らねば「ある」ことが示せないというのは言葉そのものでもあると 洲斎は今に通じる作法、新しい由来、伝統を信仰を作ろうとしていたのでは、輔に必要だと残す。 輔は社を継ぐきっかけは父の言葉の真意を知りたかったからでもあると、 父の書きかけ(未完)の由来書は死んでないことを理解。 高遠は輔の未完の本の完成を予感。 あらゆる決心がつかぬ高遠に、龍典は高遠は手に入れた幸せを手放したくないという思いが強いのでは と推察し、生きているということはずっと未完ということだと英語の未完の本を薦める。 高遠はその本を購入。その日を最後に弔堂には足を向けず、空き家を引き払うも家にも帰らず。 個人の蔵書の中には、大坂の版元を中心にして読本人情本を開板した菅丘李山のものも。 菅丘李山は、百助だったっけ?輔の父・洲斎が若い頃に知遇を得ていたとか。 輔の一人息子は20年後に父と袂を分かち、耶蘇教の神父に。 ・・・輔は京極堂の祖父?としたら父は神父?? 高遠のその後も気になる。 が、誰も知らないで結んであるあたり、ここで完結かな。 高遠が明石先生になったり・・・はしないか。 明石先生は知識人・・・撓だったり??? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 7, 2014 01:02:48 AM
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