王と鳥
LE ROI ET L’OISEAUポール・グリモー監督宮崎駿が影響された映画にあげる一編。高畑勲が字幕を担当。スタジオジブリによりデジタルリマスター版で劇場公開中。併映の短編「かかし」(7,8分)鳥を追い払うはずの案山子だが、鳥と仲良く、彼らを狙う動物から鳥を守るという話。コミカルでありながら風刺が利いている。人(?)の良い案山子だが、グラマーな美女に弱いというのも笑いを誘う。監督は鳥好きだったのだろうか?「王と鳥」(90分ぐらい)の原作はアンデルセン「羊飼いと煙突掃除人」。1950年代にアニメ映画化(「やぶにらみの暴君」)。その時に賞はとるも不本意なものが世に出たため、監督が権利を買い取り、20~30年後に完成版を出したという。意に添わないものを誰一人として生かしておかず、罠の穴に落とす王・シャルル5+3+8=16世。皆は王を嫌い、王は皆を嫌っていた。彼の気晴らしは鳥を狩ることと羊飼いの娘の絵を眺めること。羊飼いの娘は煙突掃除の青年(の絵)と恋仲だった。王の肖像画は娘に求婚し、結婚を迫るが二人は絵の中から逃げ出す。王の肖像画は枝から抜け出し、オリジナルである人間の王を罠に落とし、国を挙げて娘を追う。逃げる二人を助けるのは妻を殺され、国のあり方、王に不満を持つ一羽の鳥だった―必要最低限の言葉、描写でここまで表現されている。以下に最近の映像が言葉に頼っているかがわかる。そして、これが発表された年代を考えると城の仕組みなどが斬新だったろうと思える。「カリオストロの城」ファンには是非お勧めしたい。城の仕組み、娘に結婚を迫る暴君、青年を助けるために結婚を承諾する娘などの設定の節々が「カリオストロ~」に影響を与えていたことが分かる。(他の作品に通じる所も節々にある)城の警備隊の服などもそう。王の乗る機械やロボット、飛び立つ警備隊や黒傘で空に逃げる警備隊という扱いもユーモラス。慣習で縛りつけようとする彫刻の老人、地下の世界、空も鳥も見たことのない人々、ライオンを誘導する鳥、勝手に(思い込みで)表現するマスコミ、などなど風刺がいっぱい。最後の鳥を捕らえるための罠をロボットが潰すシーンには深いメッセージを感じる。フランス映画。城の中に国すべてがおさまっている、そのモデル(ベース)はモンサンミッシェルだろうか?