2006/03/12(日)06:34
博士の愛した数式
映画が公開されている。
テレビでCMを見てすぐに、愛情込めて作られたことがわかった。
観にいきたいが、ままならない。
数学は、小学生の頃から大の苦手。
いや、小学校に入学したころは得意だった。
一学期が終わる前に、教科書の最後のページの問題まで自分でやってしまった。
たぶん、それがいけなかったのだろう。
理解できなくなった理由のひとつ。見くびったのだ。
更に大きな理由があった。
2年生だったか、ふとある疑問がうかんだ。
「算数なのに、なんで形の勉強しなきゃならないの?」
算数は数字の勉強をする学科で、円錐形を上から見たらどんな形に見えるかなんて関係ないと思ったのだ。
母親に聞いてみた。
「そういうことは、先生に質問しなさい」
といわれた。
先生に聞いてみた。
答えは覚えていない。ただ、「なるほど!だから形の勉強をしないといけないんだ!!」とは思わなかった。
逆に、算数に対する興味が完全にしぼんでしまった。
子供だって、「今自分がしていることの意味」が欲しいのだ。
残念ながら、母親よりも少し上の年代だったその女の先生は、たぶん算数を専攻してはいなかったのだろう。
もしかしたら、私の質問そのものが先生にとっては無意味だったのかもしれない。
そんなこんなで、私の人生に落ちた算数・数学の影は、年を経るごとにどんどん大きくなり、高3の時に受けた共通一次試験では200点満点30点という、ある意味輝かしい自分史を刻むに至ったのだ。
だけど、映画「博士の愛した数式」のCMは「ぼくの記憶は80分しかもたない」というコピーとともに、私の胸をぐぐっとつかんで離さない。
そんなある日、たまたま本屋で原作本を見つけた。
久しぶりの小説だったが、読んでよかった。
「数式」というくらいだから、もちろん本のいたるところに数字が散らばっていて、それ自体はさっと読んで理解するというのはなかなか難しいが、その数字がいかに博士から愛され、主人公を温かく迎え入れてくれるかは充分理解できる。
高校の時、数学科の先生が
e=1
を証明する数式でB4の紙一面を埋め尽くして
「美しい…」
と言うのを見たことがあるが、確かにそんな事もあるのだろうなと、本を読んでそう思った。
なんの関連もなく、偶然その場に居合わせただけのものの間に、じつは運命的な関係があることを知らせる数字たち。
文中で大切なキーワードとなる数式
eiπ + 1 = 0 (iとπはeの乗数。htmlを使えば表せる?)
の謎が解かれる段では、感動を覚えてしまった。
これで数学が好きになるわけではもちろん無いが、
今まで私には縁のなかった世界にも、こんなに美しい温かいところがあったのだと教えてもらったような気がする。
願わくば、末っ子が幼稚園に入園するまで上映されていますように。