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片桐早希 おむすびころりん

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FLOWER GARDEN 2 小山千鶴さん
2009.02.17
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 どこかで自分を呼ぶ声がする。

 雪乃はその声の主を探すが、周りは霧がかかったようにぼんやりしている。

 耳を澄ますと、雪乃と呼ぶ声は祖母のそれとよく似ている。


 おばあちゃん・・・・・。

 雪乃は祖母を呼ぶ。


 雪乃、幸せになるんだよ。

 その声は、雪乃にはっきり届く。


 雪乃を包んでいた霧のようなものが晴れ、あたりが明るくなる。

 広々とした花畑に向こう側に、小さな女の子を抱いた背の高い男性が、雪乃を見つめて

いる。


 会長さん・・・・・、美砂ちゃん・・・・・・

 雪乃は必死で二人のもとに駆け寄ろうとするが、足が動かない。

 会長は笑顔で雪乃を見つめ、美砂は雪乃に向かって小さな手を振っている。


 美砂ちゃん、よかったね・・・・・、お父さんに抱っこしてもらえたね・・・・。


 涙で、二人の姿がくもっていく・・・・・・。



「雪乃、大丈夫?」

 その声で雪乃は目覚め、目の前にいる康平に気づいた。

「どうした?泣いてるぞ・・・・・。怖い夢でもみたの?」

 ううん、と雪乃は首を振り、

「お仕事、お疲れ様。先に眠っちゃってごめんね。」

と言った。

「そんなこと気にするな。雪乃だって一日中働いているんだから、睡眠はしっかりとらなく

ちゃな。」

 雪乃は、ありがと、と小声で言った。


「ああ、そうだ、母さんから電話があって、もう二、三日、山田さんの家に泊まらせてもら

うって。だから、店のことは無理しなくてもいいって言ってたぞ。明日は、臨時休業にす

る?」

「ううん、大丈夫。私もだいぶ慣れてきたし、美味しいって言ってくださるお客さんも

いるんだよ。」

「ふうん、そりゃあよかったなあ。」

「うん、それにね、山中の奥さんが手伝いに来てくれることになったの。だから大丈夫

だよ。」



 康平はうんうん、とうなづき、雪乃の傍に体を横たえた。

「お義兄さんのお見舞いに行かなくちゃな。」

「そうだね、お兄さんね、びっくりするほど元気になってるって、お義姉さんが教えてくれ

たよ。」

「よかったなあ・・・・。じゃあ、今度の休みには、お義兄さんのお見舞いと会長さんの

お墓参りをしよう。」

「会長さん、とっても喜んでくれると思う。康平君、ありがと。」

「礼なんて言うなよな。でも、俺ら、ほんとにたくさんの人に助けてもらったなあ・・。」

「ほんとだね・・・・・。お礼しなくちゃね。」

「俺ら、今は何の力もないけれど、これから時間がかかっても少しずつ返ししていこう。」

「うん、私もがんばる。」

「よしっ、それじゃあ、今度の休みは、まあ何というか、第一回目の新婚旅行だな。」

「ええ~、第一回目の新婚旅行ってどういうこと?第二回目もあるの?」

「おお、もちろん。二回目どころか、十回目、二十回目もあるぞ。」

「キャー、素敵。楽しみ~~~。」

「よしよし、しっかり楽しみにしていてください。」


 雪乃はくすくす笑いながら、康平の胸に頬を重ねる。

 夏の枯れ草の匂いがする康平の胸の中で、雪乃はそっと目を閉じる。


 そして、

 雪乃は、深い眠りに導かれていく。


                     「完」





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Last updated  2009.02.17 19:39:07
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