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Mこと、宮本准教授が理生の気持ちを惹きつけたことは、僕にも分かるような気がする。
彼は才気に溢れ、将来を約束され、人当たりが良かった。僕以外には。 「彼が研究室に初めて現れた時、何だか部屋中が明るくなったような気がしたの。私の気持ち も華やいで・・・・。だから、しばらくして彼に食事に誘われた時は嬉しかった。」 「食事に誘われた場所がここだったんだろう?」 僕がそう言うと、理生は目をぱっと開き、僕を見た。 「どうしたの、尚人・・・・。どうして分かったの?」 「僕の勘は鋭いんだ。誰よりもね。」 理生はくすっと笑い、目の前に置かれたステーキを切り分け始めた。 「クリスマスイブの夜だった。夜の海に雪が降って、とっても綺麗だった。彼は優しくて、 私はうっとりして彼を見ていたのよ。信じられる?」 「信じられない。」 僕は即答した。 「そうだよね・・・・。あの時の自分は別人のような気がする。」 それから僕達はしばらくステーキ肉を食べることに没頭した。 めったに味あうことのできない肉の味だ。 「彼は尚人にそっけなくしてたでしょ?何故だか分かる?」 「分からない。知りたいとも思わない。」 「まあ、そう言わないで私の話を聞きなさいね。」 理生は妙に自慢げにそう言った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.03.13 22:28:31
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