イタリアのドラッグ事情
昨日ドラッグのことを書いたらいくつかコメントを頂いて、思うところがあったので、今日は私が見たイタリアのドラッグ事情をちょっと書いてみる。ちなみに地方によって事情が違うはずなので、あくまでもトリノ県のトリノ周辺の話。北部の大都市の周りは結構こんなもんかと思うけど。夫と付き合うようになってから、冬なのに公園の芝生の上に寝転がっている人を見掛けた。夫に、あの人何しているの? と訊ねると、「ドラッグだよ」。同じ公園内のベンチに座っている若いカップルを見て、「ほら、あっちの2人もカンナ(タバコ状のドラッグ)やってる」。この公園、その昔、ドラッグやってる人たちがウジャウジャしていたけど、最近はあんまりいないな、と普通に言いのける夫。いや、普通じゃないでしょう。イタリアに来て初めて出会った元ドラッグ中毒者は、マウリツィオ。夫の小学校・中学校時代の友達。彼らは2人ともThe Doorsが大好きで、2人ともいたずらするのが大好きで、共通の趣味を持った友達同士だった。中学に上がってから、憧れのジム・モリソンがドラッグをやっていたという理由からマウリツィオはドラッグに手を出し始め、片親が亡くなったのをきっかけに、そのままのめり込んで行った。そのうち、ジム・モリソンのような格好をし、彼のように振る舞い、挙げ句の果て、自分はジム・モリソンなんだ、とまで言うように。その後、十代後半、麻薬中毒者矯正施設へ。施設を出たとき、ちょうど私が彼に出会った。物凄く繊細な心の持ち主だった。詩を書くのが好きで、詩を、いくつか読ませてもらったっけ。その後、しばらく見かけないと思っていた頃出会ったら、こちらに全然気付かない。挨拶したのに。よく見れば、目がイっちゃっている。歩き方も怪しい。再びドラッグに手を出していた様だった。その後もう一度見たきり、彼に姿、それ以来見ていない。風の噂によると、また施設に行ったんだそう。夫の従兄の奥さんの兄弟は2人とも元麻薬中毒者。ひとりは私と同い年(生まれ)のレオ。まだ30歳なんだけど、50歳くらいのおじさんに見えるほど老けちゃってるし、何か変な人。もうひとりのエンツォはもっと更にイっちゃってる。冬の山の川(表面が凍ってる)に飛び込んじゃったり、朝4時起きして、近所を散歩してたり・・・。頭は良いんだけど、ドラッグのおかげでちょっと思考が上手く繋がらないらしく、話しているときもちょっと分裂症気味な気がする。エンツォの奥さんが、これまたエンツォが施設にいたときに知り合った人で、この人もまた不思議。急に大声で叫んで、大声で笑って。いや、ドラッグやってた人って、何かどこかが変なんだよね。話していて、何か、分かっちゃう。ちなみに私も変だけど、ドラッグはやったことありません・・・。他にも、山の家の近所の人、マウリツィオとか。彼はかなりな中毒者だったらしい。中毒だっただけじゃなく、派手なこと(馬鹿なこと)をやらかしていたらしい。で、施設を出た後も親元にいられなくなって、ひとりで山奥で暮している。いつだか観に行った夫の同僚のバンドのライヴで見たヴォーカリストもかなりイっちゃった感じ。現に、かなりやってる人だった。夫のP市の元友達はほとんど皆カンナヨーロ(カンナやる人)。集まればカンナが必ず出てくる。だから夫はもう付き合いたくないって。仲間がやっていると自分も、って、当たり前のようにする人多いんだけどね。来月結婚するジュズィの前の彼氏も、カンナヨーロだった。彼女、自分の彼氏がドラッグやっているのを止めさせられない、どうしたら良いんだろう? と彼氏の友達皆に相談したけど、彼らも皆カンナヨーロで、「やらせといてやれよ」って答え。で、悩んだ彼女、彼氏のことが大好きだったけど見切りをつけて別れて、今の彼氏と知り合い、万万歳。友達マッテオも、カンナヨーロ。彼の場合は以前売ってもいた。売るといえば、こんな人もいた。小麦粉を水で捏ねたものを使って、丸い頭痛薬を四角くして、ドラッグとしてディスコテカで売り歩いた人。もちろん足がつく前に止めたけど、一時期それで凄い稼いだそう。売るといえばもうひとつ・・・。トリノ近くのリーヴォリ城、高台にあるので、夏の夜の日は散歩道となっている。車で来て駐車して、トリノの夜景を見ながら散歩したりベンチに座って話したり。結婚したばかりの夏の夜、初めてその城に行ったとき、散歩してたら、夫、2度も「フーモ(=煙=カンナ)ある?」って人にきかれた。・・・夫はカンナどころかタバコも吸わないの。そりゃ、確かに人相悪いけど。身分証明証の写真、あまりにもマフィアそのもので、作るとき役所に「他の写真ありませんか?」って言われたし。こんなドラッグにまつわる話が信じられないくらいウジャウジャしている。全部挙げていたら、優に3日分くらいの日記は埋まりそう。やりすぎて21歳の若さで亡くなった人もいる。こういう環境だと、もうすっかり普通のものと化しているよね、ドラッグ。私たちはメタラーで、メタルと言う異色な音楽を聴いている頭がおかしい奴やらドラッグもやってるんだ、ろくでもない奴等ばっかりなんだと思われがちだけど、とんでもない。いや、確かに、ライヴとか行くといる。端っこの方でカンナやってる人。真ん中でもマリファナ臭かったりすることある。些細なことで喧嘩になる事もある。でもさ、普通のティツィアノ・フェッロとかの(って普通の日本の人は知らないか)コンサートとか行った従妹は、「知らない人からカンナが回ってくるの。で、吸わないと仲間じゃない、とか言ってもう強制的に吸わされて・・・。辺りの空気がすっかりドラッグ混じりで耐えられないものになっていて、コンサートなんかもう絶対行きたくない」と言い、誰だったか忘れたけどイタリア人アーティストのコンサートに行った夫の会社の秘書の女の子も、コンサート中にナイフを突付けられて強盗に遭った。メタルのコンサートはそんなことってないなぁ。逆に普通の人が行くようなコンサートの方が荒れてる。ほら、メタラーって基本的に皆貧乏だしね。欲しいCDいっぱいあるし。去年の夏アムステルダムに行ったとき、コーヒーショップの入り口が開いては、そこからプーンと異様な匂いがしたっけ。街中も、マリファナの香りがどこからともなくするの。オランダはライトドラッグ30gまでなら携帯OKなんだよね。で、さすがに、道端にも頭がおかしい人結構いた。何かひとりで叫んでたり。こう、本当にドラッグが違法ではなく国に許可されていて、普通と化している国では、国民はドラッグに対してどういう姿勢なんだろう?私が見た感じ、許可されているからこそ、逆に、普通の人にはドラッグなんてあんまり興味ない、って気がした。イタリアの若者のように、ちょっとハイになるためにパーティのときとか皆でちょっとづつやったりはするんだろうけど、自分で程度を弁えているんじゃないかな、って。イタリアの若者も、人によってはちゃんと弁えているからこそ、皆が皆のめり込んだりするわけじゃないんでしょう? 禁止されているとやりたくなる、試してみたい、って気持ちは分かるけど、ちゃんと限度を弁えているから。オランダみたいに禁止されてなくて、きっとドラッグに対する教育もしっかりしているんだろうな、そういう国にいると、逆にいつでも好きなときに出来るし、敢えてやってみたいとは思わないんだろうな。自分のことを考えると、中学の頃とかって、タバコにすっごい興味があったけど、吸える歳になったら、別に全然興味なしで。禁止されている・いない、どちらにしても、とにかく程々に。限度をきちんと弁えていることが大切だね。危害が及ばない程度なら良いだろうけど(いや、法律では禁止されているけど)。こういう国に暮していると自分の子供の将来が心配。ちゃんと悪いことは悪い、ものは限度、ということを自分の頭で分かる子供になって欲しい。まあ、ちょっと考える力があれば分かりそうなものだけどね・・・。