山行:泉ヶ岳(1172m)2015年5月18日 その1
一昨年の8月に仙台神室岳の仙人沢ルートを往復して以来の山歩きだ。神室岳から下山したとき、一緒に登ったイオの後肢が弱っていることに気付いて、本人の承諾を得たわけではないが、登山からは引退させた。13年間ずっと山歩きの相棒だったイオが山に行けなくなると、私もその気が失せてしまって、昨年は一度も登山はしなかった。 私にしても、登山から引退する年齢に不足はないのだが、犬は人間の4倍の早さで年齢を重ねていくから、イオに歩調を合わせて老いていくことはできないのだ。それぞれはそれぞれの固有の時間を生きるしかない。私は私でもう少しじたばたしてみようと、やっと山に出かける気になったのである。 いつもより1時間早くイオとの朝散歩を終わらせ、イオの朝食を用意して、イオが私を気にしなくなってから家を出た。イオに追いかけられたら挫けてしまう気がして、ザックなどの山用具は前もって車に積んでおいた。 Photo A 滑降コースの入口。 (2015/5/18 7:21) 泉ヶ岳スキー場の前の大駐車場にはすでに二台駐車していて、登山道の方に歩いて行く人も見えた。車から出ると、小さな羽虫が群がってきて、防虫スプレーを準備していなかったことに気付いた。 イオが山に入るとダニが取り付くので、あらかじめノミ、ダニ用の滴下薬を定期的に使用した上で、山に入る直前には防虫スプレーを散布する必要があった。そのついでに人間用の防虫スプレーもしていたのだが、イオがいないせいで、虫対策は完全に抜けてしまっていた。 少年自然の家に向かうアスファルト道をできるだけゆっくり歩き出す。極力体力の消耗を減らしたい。今日の一つの目的は自分の体力の程度を知ることで、「ダメなら途中で帰ってくる」と妻に言い置いてきたが、本心はいくら時間がかかっても頂上まで行くことに決めていたのだ。 今日登る予定だった滑降コースの入口がなくなっている。少年自然の家の敷地内を通っていたのだが、案内表示がなくなっているばかりではなく、立ち入り禁止表示が出ている。場合によっては水神コースへの変更をやむをえないと、そのまま進むと、道脇に滑降コース入口の表示が現われた。少年自然の家の施設を迂回するように道を切り替えたらしい。Photo B ヤマツツジの道。 (2015/5/18 7:25) 雑木林の道は、ガイドなのか規制なのか分からないが、入口からしばらくの間は左右にトラロープが張られていた。細いトラロープに過ぎないのだが、山を歩く開放感がけっこう削がれてしまうのだった。 トラロープがなくなる頃からようやく道脇のヤマツツジを楽しめるようになった(登山道で見つけた花の写真は別のブログにまとめてある)。Photo C カラマツ林。 (2015/5/18 7:42) 小さな沢を渡り、斜面を上がるとカラマツの林である。雑木林と違って林内を見通すことができるので、気分がいい。Photo D しばらくは平坦な道。 (2015/5/18 8:05) 緩やかなカラマツ林の道が雑木林にかわり、短い急斜面を上がるとフラットな歩きやすい道になる。このあたりは、水神平からスキー場上部の兎平につづく台地状の地形のまんなか辺りに位置している。Photo E お別れ峠。 (2015/5/18 8:16) 歩きやすい道はお別れ峠という五叉路に出る。ここから水神コースやかもしかコースの途中へ行くことができるし、兎平にも行ける。この三つの登山コースはいったん同じ台地の西端、中央、東端を通るということである。 Photo F1(上) 目の前に泉ヶ岳の山容。(2013/5/18 8:31)Photo F2(下) 見返平から見る泉ヶ岳。(2013/5/18 9:43) お別れ峠から短い急斜面が始まる。このあたりから山を登ってるという実感が否応なく湧いてくる。短いとはいえ急な斜面で息が切れだした頃、フラットな道が現われ、目の前に泉ヶ岳の全容が開ける。 山頂まで行くには5つのコースがあるが、登山道から泉ヶ岳の山容を眺められるのは、ここから見返平までではないかと思う。私の好きな場所の一つだ。 そこからもう一段上がったところが見返平で、泉ヶ岳の山頂がもう少し近づくし、背後には仙台市西部の眺望が開ける。残念ながら、今日は晴天なのだが遠くは霞んでしまっている。 見返平の道標がある小さな広場で朝食とした。食事が終わって片付けているところに、一人のお年寄りが上がってきてなにやらメモを取っている。私よりだいぶ年上のように見えるが、息を切らしている様子がまったくない。 話をしたら、週2回は登っているという。「いや、頂上に行くわけではないんですよ」と言う。冬山登山のための目印のケルンの石積みに通っているのだという。「登山道の石を積むわけにはいかないので、ブッシュの中から担ぎ上げなければならないんでね」と笑って、先行して登って行った。Photo G1,2 ゴロタ石の急斜面。 (2015/5/18 9:11、16)Photo H1,2 大壁の上にも大石の急斜面。(2015/5/18 9:26、44) 標高550mほどの滑降コースの入口付近では満開だったヤマツツジが、920mの兎平ではまだほとんど蕾のままだった。 兎平からからは急斜面が続くので、花を眺めながらできるだけゆっくりと進もうと思ったのだが、それほど花は多くない。はじめに見つけたのはオオカメノキの終わりかけの白い花だった。 そこから少し上るとシロヤシオの花が咲いていた。標高が1000mを超えた付近からシロヤシオの木が目につくようになった。登山道入口付近では満開だったヤマツツジは、この高さではまだ蕾のままだった。 足元にはシラネアオイが咲いている。シラネアオイはもっと低いところにもたくさんあるはずで、私の庭のものはもうだいぶ前に咲き終わっている。 大壁に辿り着いた頃には、花を見る余裕はあまりなくなっている。大壁からさらにゴロタ石の急坂は続く。まったくスピードは上がらないが、そのぶん息切れも激しくならない。心肺機能に大きな負荷をかけられるほどの筋力が私の脚にはないのである。Photo I 「かもしかコース」との出会い。 (2015/5/18 9:52) 何とか急坂をクリアすれば、かもしかコースとの出会いだ。かもしかコースから登ってきた人が上を行く。多少の坂は残っているが、ここからは灌木も低くなって、頂上台地と呼んでもいいくらいだ。Photo J 泉ヶ岳山頂。 (2015/5/18 10:04) 頂上に着くが、誰もいない。見晴らしのいい頂上尾根の北端へ行ったのだろうと、私も頂上標を過ぎて北尾根に向かう。「泉ヶ岳山歩きMAP」(泉区役所発行のパンフレットから)。A~Rは写真撮影ポイント。【続く】