「4月28日 脱原発みやぎ金曜デモ」私たちの放射線被曝は将来にわたって見捨てられる!
青葉通りや定禅寺通りの欅並木の萌えがいっそう鮮やかになって来た。毎朝の散歩で気づいたことだが、定禅寺通りの欅の木々は足並みをそろえて萌えだしているように見えるが、青葉通りの欅は萌えはじめにムラがあるようだ。青葉通りの下を通っている地下鉄東西線の工事が長く続いた影響でもあるのだろうか。 金デモの集会場の勾当台公園には、仲の瀬橋を渡り、西公園を抜け、定禅寺通りの欅並木の下を歩いて行く。わが家からおよそ徒歩20分だ。高校入学から仙台だが、仙台駅から仙台城址にまっすぐ向かう青葉通りが仙台市のもっとも重要な幹線道路だと思っていたが、定禅寺通りの方がはるかに人通りは多い。 青葉通りの下を通る地下鉄ができたことで、人通りや街並みは変わるのだろうか。そういえば、私の住む地域の地価上昇率が全国で何番目かに入って、町内会にマスコミの取材があったという話を聞いた。これも地下鉄駅が近くにできた効果なのだろう。 八重桜が満開の勾当台公園で。(2017/4/28 18:07~18:33) 勾当台公園はピンクの濃い八重桜が満開だった。桜の品種をそんなに知っているわけではないが、「カンザン(関山)」という品種によく似ている。 階段を上がって野外音楽堂に行くと、すでに主催者挨拶が始まっていた。前半を聞き逃したが、更迭された復興相の話のようだった。 続くスピーチは、昔の地震や火山噴火のこと、節電をして電力消費量を減らすことで脱原発をという訴え、共謀罪のこと、そして7月の仙台市長選挙の話と続いた。 仙台市議の花木さんも話されたことだが、今日の昼過ぎ、仙台市庁舎の記者クラブで「私たちの市長を選ぶ仙台市民の会」の記者会見が開かれた。この会は、すでに2回の集まりで準備が進められ、5月6日午後2時から東京エレクトロンホール(旧名:宮城県民会館)601会議室で「結成キックオフの集い」を開催する。 私も発起人の端っこに名前を連ねているが、私たちが選ぶ市長候補者の条件として6項目を挙げ、仙台の新しいリーダーを市民の側から選ぶ機会を作っていこうということで動き出した。 さまざまな立場の市民を広く結集したいということで、6項目にはあまり細かな条件を盛り込まないようにしたため、「原発」に関する文言も入ってはいないのだが、「自然エネルギーへの転換を促進し、将来にわたっての市民の健康・環境の保全に尽くす政策を実現するリーダーを選ぶ」という項目が脱原発を含意している。 「東日本震災による被災者の心に寄り添った復興を実現するリーダーを選ぶ」という項目もあって、集会でさんざん批判された更迭復興相とは真逆の精神を持つリーダーを私たちは選びたいのである。 最後に、ゴールデンウィーク中の金デモは休みで、次回は5月12日という案内があった。5月からは夏時間に替わり、集会は18:30から、デモは19:00出発となる。表小路を一番町へ。(2017/4/28 18:40~18:47) 集会が始まるころは十分に明るく、スピーチを聞きながら暮れていく空気を感じていたが、勾当台公園を出発して表小路を歩いている短い間に夜に入っていくように時間が過ぎていく。一番町で。(2017/4/28 18:49~18:59) 3月12日の「福島原発事故を忘れない3・12アクション」の集会で、「脱原発をめざす宮城県議の会」の中嶋廉さんが女川原発再稼働へ向けた宮城県の動きを報告してくれたが、その中に原発事故時の避難路に設置されるゲートモニターを1台から7台に増設する予算措置が講じられているという話があった。 ゲートモニターというのは、原発事故から避難する人や車の放射能汚染をスクリーニングする場所に設置される。放射能物質を取り扱う管理区域から外に出るときに身体や持ち出し物品の汚染を調べることと同等である。それには二つの目的がある。放射能に汚染された人を発見し、速やかに除染することによってそれ以上の被曝を防ぐとともに人体や車などによって放射能がそれ以上拡散することを防ぐことを目的とする。 管理区域で汚染検査をするところにはシャワー室やさまざまな除染用薬品、用具が供えらえている。当然ながら、ゲートモニターにもそのような設備が必要になる。いっせいに避難してくる大勢の車や人に対応しなければならないので相当な設備になるはずだ(実際にどの程度の設備を作る予定なのかまだ知らないのだけれども)。 ただ、福島事故の避難者の放射能汚染スクリーニングで起きたことを考えると、ゲートモニターがほんとうに機能するにはそれに関わる人間(行政)がどう行動するかに依存しているとしか言いようがない。岩波科学ライブラリーに『見捨てられた初期被曝』 [1] という本があって、東電1F事故の直後における初期被曝の測定はきわめて限定的で、いわば被曝者は「見捨てられた」に等しい状態だったことが証言されている。 事故が発生した時点で、日本における汚染限度は1平方センチメートルあたり40Bq(管理区域外持ち出しの場合は4Bqで運用)と定められていた。これは大口径GM計数管で10,000cpm(counts per minute)程度となるため、人体の除染基準を13,000cpmと定めていた。 ところが、現場で汚染スクリーニングを行っていた福島県は、地震による断水などで除染のための水が不足していることを理由に、除染基準を13,000cpmから1桁近く大きい100,000cpmに引き上げてしまった。初期被曝を防ぐことが短半減期のヨウ素131の内部被曝による甲状腺がん防止にきわめて大切のことなのだが、水不足を理由に大勢の人たちの将来が見捨てられたのである。 さらに、かってに100,000cpmに引き上げた福島県の決定を国が追認して、厚生労働省が自治体に「10万cpm以上は部分除染、10万cpm以下は心のケア」とを通知するに至った。被曝を防ぐのは「心」なのである。甲状腺がんは、心の弱い人間に発症するとでも言うのだろうか。これらの悲劇的な経過は、3月11日の地震発生から3月21日の間になされたものだ。 政府が法によって安全基準を定めていても、いったん事故による緊急事態が発生すれば、その基準を政府自体が恣意的に変更してしまうということが起きた。それが意味するのは、さまざまな社会事象にたいして法によって国民を守るべき基準が作られていても、その基準にはまったく信頼性がないということを意味している。「これこれの安全基準、これこれの安全対策を責任をもって実施します」などと言う役人の言葉を信じろというのは無理であることを意味しているのだ。青葉通り。 (2017/4/28 19:09~18:12) 東電1F事故による初期被曝への対応は無残なものだったが、そこから日本の政府は学んだのだろうか。事故後に設立された原子力規制庁は、将来の原発事故対策に有効な政府組織たりえるのか。これは原発大国日本の国民にとって深刻な疑問だが、それに対する一つの答えのような事実をジャーナリストのまさのあつこさんが書いている。そのニュースについ笑ってしまったが、これは私たち国民が明らかに悲劇的状況に置かれていることを示す「事実」だ。 九州電力玄海原発の事故を想定したある自治体の避難訓練のとき、避難経路にあるスクリーニング地点(ゲートモニター)で車の除染を水で洗浄するという訓練に対して、事故時に水が確保できるのかという疑問が出されたため、次の訓練では、水で洗浄する代わりに「コロコロ」で車やタイヤに付いた放射性物質を取る訓練に変わったというのである。「コロコロ」というのは、家庭で掃除に使う粘着性のロールのことである。 笑いどころはここではない。規制庁が「大まじめに」こう反応したとまさのさんは書いている。「確かに、自治体から、『コロコロは有効なのか』と問い合わせあってですね、『車にはちょっとアレですが、人の衣服に付いている分については、ある程度の除染効果はある』と回答はしています。」 「コロコロ」で除染訓練を行い、その除染効果を規制庁に「大まじめ」に問い合わせる自治体、それに「大まじめ」に答える規制庁。そんな人間たちが放射能被曝から国民を守るというのである。悲劇だ。 しかし、悲劇はまだ続くのである。結局、「コロコロ」では車の除染は無理なので、スクリーニング地点に車を捨てて徒歩で避難しろ、というのが結論である。まさのさんは次のように批判している。 しかし、例えば、玄海原発のある玄海町から避難の受け入れ先である小城市までは、車で1時間半かかる。その距離を、車が除染基準を超えるほど汚染された中、車を置いて徒歩で避難することはあまりにも非現実的だ。しかし、これが、原発の敷地内の規制だけを行い、避難計画を自治体に丸投げする規制庁の限界だ。 女川原発の事故時の避難も自家用車での避難が原則だ。その車をゲートモニターの地点で乗り捨てて徒歩で避難することになりそうだ。ところで、宮城県はゲートモニターの設置の予算化を行っているが、その地点に乗り捨てる自家用車のための広い駐車場敷地を確保する予算も含まれているのだろうか。まあ、そんなことはないだろう。東電1F事故では除染基準を引き上げてしまったように、「もう駐車スペースがないので除染なしでそのまま避難してください」という想像が最も確度が高いように思う。私たちの放射線被曝は将来にわたって見捨てられるという予想しかたたない。悲劇である。 この悲劇を避ける唯一の道は、私たちが先に原発を見捨てること以外にはない。 それにしても、ジャーナリストのまさのあつこさんの記事は見逃さないようにしなければ………。[1] study2007『見捨てられた初期被曝』(岩波書店、2015年)。 読書や絵画鑑賞のブログかわたれどきの頁繰り(小野寺秀也)日々のささやかなことのブログヌードルランチ、ときどき花と犬(小野寺秀也) 小野寺秀也のホームページブリコラージュ@川内川前叢茅辺