南三陸(3):大船渡湾の夜明け(2026年2月6日)
1泊ミニ旅行の宿泊は、温泉ホテル「大船渡温泉」である。日帰り温泉としても人気があるらしい。1週間ほど前に予約したものの近所に夕食をとれる店がなく、夕食を追加で頼みたいと3日前に電話をしたら、その日から予約日まで施設の点検で休館だという音声案内である。ちょっと慌てたが宿泊は私たちが予約した日から再開、それ以外はその日の朝から電話を受け付けるということだった。当日、家を出る前に電話して追加の夕食をお願いして出発したのである。 これまで小旅行での夕食は、全て地元料理の店やレストランを探していて、一度も宿で食べたことがない。小食の私は日本旅館(温泉旅館も含めて)で出される夕食の種類、量の多さに圧倒されてきわめて苦手なのである。このホテルも海のもの満載の料理をうたっていて、いくぶん不安なのである。 ホテルにチェックインした後、妻と一緒に車で近所の下見に出た。このミニ旅行の最大の目的、大船戸湾に昇る朝日を撮る最適の場所を探そうというのだったが、ことはそんなに簡単ではなかった。大船渡湾は沿岸に人家の多い地形ということもあって太平洋から波が直激するような地域はたいてい高い防潮堤が築かれていて海べりに出るのを妨げていた。海で仕事するための出入り口(防潮門)はあるのだが、開いている所もあったものの、問題は設備の性格上いつでも開いているわけではないらしいということだった。日の出の方角に開いた場所という条件も加えると地元不案内な身では最適な場所を特定するというのはかなり難しいのだった。 諦めてホテルに戻って、4階の部屋に入って窓のカーテンを開けたら目の前に大船渡湾が広がっている。太平洋に開けた湾口もすべて視界の範囲内である。さっそく岩手県の日の出の時間、方角を調べ、方位磁石(というスマホアプリ)で調べたら、湾口に出ている岬にかかるもののほぼ部屋の正面から太陽は昇るらしい。暗い夜明け前に寒い外に出ることなく、ぬくぬくとしたこの部屋から写真を撮ることに決めて、夕食に向かったのである。 夕食は「漁師飯プラン」というのだが、他に選択肢があるわけでもなさそうだった。皿数、碗数は数えきれなかった(献立表では15の皿や碗が出たはず)。すべて海のものの料理だった。私としてはけっこう箸が進んだと思う。手つかずで残したものは一皿だけ、手を付けて残したのが2皿だった。妻は私が残したものも食べて、そのうえで食べ残した皿が二つほどあった。 部屋に戻ったが満腹すぎて2時間ほどテレビや居眠りでお腹がこなれるのを待って、それから大浴場の温泉をのんびり楽しんだ。10時半を回っていたので恐ろしく広い浴室にたった一人(妻も一人だったという)。 目が覚めたのは午前5時50分、寒くないようにしっかり着替えてカーテンを開ける。少し空が白み始めてきた。テーブルを窓近くに寄せて交換レンズを並べておく。太陽が昇るあたりの雲が色づき始めたころ窓を開けて撮影を始めた。妻は昨夜からの2枚重ね布団に潜り込んで寝ている。 小さな漁船が2隻、養殖棚のまわりで仕事をはじめている、一艘は明るく灯をともし、一艘は無灯火で。もう一艘の小舟はまっすぐ湾の外へ出て行った。昨夕、港で見た大きな漁船の出航は、季節のせいかこの時間にはなかった。 岬の先端あたりに太陽は登ってくるらしく、雲が輝き始めた。朝日といえども輝く太陽を撮るのは簡単ではない。レンズを変え、撮影条件を様々に変えながら撮影しているとあっという間に太陽が飛び出してくるように感じる。一通り撮り終えたころ、妻が朝風呂から戻ってきた。 窓を閉め、私も風呂に向かった。夕べは入らなかった露天風呂に体を入れて海を眺めると、海面から少し離れた太陽の光が海面に反射してまっすぐこちらに光の道を作っているのだった。これを撮らなきゃ、慌てて風呂を出て部屋に戻り、数枚そんな写真を撮った。烏の行水より短い温泉浴という経験は初めてである。 私としてはもうこの旅行の目的はほぼ完ぺきに達成したのだが、これからは妻に約束した道の駅巡りである。ゆっくりホテルを後にして向かったのは陸前高田市の「奇跡の一本松」のそばにある「道の駅 高田松原」である。 奇蹟の一本松は、大津波をかぶった松原でたった1本残った松の木である。今でも最上部にだけ枝葉を残し少し傾いて立っている。一帯は「高田松原津波復興祈念公園」になっている。 次に向かったのは宮城県に入って南三陸町の「南三陸さんさん商店街」である。ここも東日本大震災後、被害に遭った商店が寄り集まって店を並べる商店街としてつくられた施設である。道の駅と銘打っていないが、地元の魚ならここだろうと考えたのである。道の駅 高田松原とここで刺身や蒲鉾やワカメなどを買った。 そろそろ昼飯という時間になって妻が「昨日のうどんおいしかったね、またあそこに寄ろう」というのだが、三陸道で1時間も前に通り過ぎていたのである。妻の食欲には勝てず、三陸道を大谷海岸まで引き返したのである。 道の駅 大谷海岸で季節限定と銘打った「石鍋かきうどん」を再び食べて大満足の後、息子にお土産を買うのだと妻は道の駅の中を元気に歩き回るのだった。道の駅の予定は三か所だったが、ここから仙台までの運転は時間が伸びてしまったので、途中休憩をかねて昨日下調べした石巻市の道の駅 上品の里にも立ち寄ることにした。 道の駅 上品の里に入ると地元産の野菜売り場に白菜も並んでいて、そのなかの二つがとても大きく立派でゴロンという趣きで自己主張していた。わが家の白菜漬けがそろそろなくなりかけているので思わずその一つをバスケットに入れた。妻は安い「ひとめぼれ」を買うと主張した。食事担当は私なのだが、買い物の時には妻は突然主婦に完全復帰するのだった。ここでは野菜をあれもこれもという感じになった。大きな段ボール箱をもらい、駐車場までカートを借りて運んだ。 仙台に入ればいつものように夕食用の弁当を買って家に帰るだけである。真冬の海岸ドライブという以前には考えもしなかったミニ旅行が突然始まり、当然のように突然終わった(そんな感じである)。読書や絵画鑑賞のブログかわたれどきの頁繰り(小野寺秀也)日々のささやかなことのブログヌードルランチ、ときどき花と犬、そして猫