4時半に起き出し、犬(牝、11才、イオ)を連れて散歩に出る。天気は曇り、肌寒い。気温は17,8℃くらい。とてもアユ釣り日和とはいえない。
公園から川を見下ろすと、川に立っている釣り人はまだ一人だけ。私がアユ釣りを始めた頃とは、大いに様変わりしてしまった。以前は、暗いうちから焚き火をしながらたくさんの人が解禁の午前4時を待っていたものだ。大概はコロガシなので、そんなに早くても大丈夫なのである。
バブルがはじけ、釣り人が減り、稚魚の放流数も半減した。冷水病に長い間祟られている間に、熱心な釣り人ほど良い川を求めて他県の河川に気軽に出かけるようになっていたのである。じつのところ、10年ほど前までは私もそのような一人だったのだ。
でも今は、さしあたって地元の広瀬川である。6時半に家を出る。入川する場所は、いつも決まっている。仲の瀬橋から澱橋の間のどこかである。理由は簡単、急げば30秒、のっそりと動いても2分で川に出て、オトリを引き舟に移し、徒歩で移動できるからである。仲の瀬橋から上流に歩いて、入川者の具合などを勘案して適当に入るだけなのである。オトリ缶も持っていかない。
堤防を下ろうとすると、川中に2羽のカワウが見える。5,6年前、ヤマメ釣りの時に上流で見たのがカワウらしいと思ったが、実際に確認したのは今年が初めてである。日は違うが、解禁前に、澱橋付近で1羽、仲の瀬橋付近で3羽、大橋下流で4羽のカワウを目撃した。カワウの生息域が北上しているということだが、いよいよ広瀬川もカワウの問題に直面する兆しなのだろうか。

仲の瀬橋上流にいたカワウ。 (2012/7/1 6:37)
オトリを持って堤防を歩いて行くと、赤門の背に1人、胡桃淵に1人、澱橋下の淵尻に2人、澱橋上のセに5人ほどの釣り人が見える。澱橋から下の人は全員がコロガシ、上の人たちは友釣りがほとんどらしい。

澱橋付近(胡桃淵上の瀬から見る)。 (2012/7/1 6:59)

胡桃淵とその下流(胡桃淵上の瀬から見る)。 (2012/7/1 6:59)
7時頃にオトリを出す。仕掛けは、複合メタルの0.06号の水中糸ノーマル仕掛け、針はグランT6の7号3本錨である。最近は瀬もトロもある程度はこなせる複合メタルから始めることが多い。まめに仕掛けを取り替えるのが面倒になったということである。複合メタルは編み込み糸で細かい乱流が生じ水切れ抵抗がそこそこ大きく、オバセが利くのである
場所は、胡桃淵上の左岸の分流の瀬である。狙いは瀬脇の大きめの石だが、ハミは本格的な縄張りアユのようには見えないのだが、それ以外に狙い目がない。まったく反応なし。
瀬頭に移って、平瀬脇(川半分は岩盤底で石がない)の60cmくらいの深さを狙うが、ここもまったく反応なし。ここまで1時間。竿を下ろし、石を見て歩く。8時の時点での水温は17℃である。どんよりと曇り、ときどき霧雨が降るという天気で、気温も低いので釣れないのは不思議ではない。
右岸の分流は堤防上からは水色が良さげに見えたのだが、川に入ってみるとハミがほとんどない。完全に候補外である。左岸の分流の瀬脇には、大きなハミが入ってる石があるのだが、縄張りは形成されていないようだ。瀬の流心の石のハミも薄くてはっきりしない。渕尻に行くと、小さな群れ鮎に食まれた石がたくさんあるが、オトリの対象ではない。
結局、ここでは瀬脇しか狙い目がないという初めの判断に戻ってしまって、つまり、手がないということになってしまった。
組合の監視員標を胸につけた知人が二人、上流にいたので川中での立ち話になった。そこに、私のあとから近くに入って、ユリカモメにオトリをさらわれて釣り続行を諦めた人も加わって情報交換である
その監視員や、釣具店、解禁前の調査釣り(放射性セシウム検査用の検体採捕を兼ねている)の結果をまとめると、広瀬川の現況はおおよそ次のようなものである。
例年以上に雪が多くて、雪代が遅くまで流れていたために早期の稚魚放流ができず、放流魚の生育が例年ほどではない。その雪代のため、早期の天然遡上群は少ない。しかし、5月3日の大雨、6月19日の台風の大雨による増水はその後の遡上を助けて、後期遡上群はそこそこ入っている。数は例年くらいいるような感じであるが、生育が遅い。大増水は遡上を助けたが、長く続いた濁りは生育を阻害したようだ。狙いは梅雨明けかも知れない。
調査釣りの結果、釣れる場所は例年とだいぶ異なっている。3・11震災復旧で河川工事が至るところで行われ、その影響が強く出ているようだ。変わってしまった川底を考慮しながら丹念に探るしかないようだ。

赤門の瀬(白泡の部分)と瀬頭の平瀬。上の写真の下流部分 (2012/7/1 10:30)
9時を回った。何か手があるとすれば、場所を移動することくらい、ということで帰り足で下流へ移動することにした。
赤門の瀬の上で竿を出してみた。すぐに追った。例年とは違い、片手であっさりと抜ける。19cmくらい。3尾目までは順調に続いた。4尾目を狙ってやや上に移動し、むこうヘチの岩盤脇を狙っていると、ひったくるような強烈なアタリ、下流に5.6歩動いて矯め、両手抜きで抜きあげたが飛んでくるのはハヤ(ウグイ)なのだった。アユのような引きで、ハヤに良くあるような仕掛けをぐちゃぐちゃにすることもなく、じつにタチの良いハヤなのであった。それにしてもアユは片手抜き、ハヤは両手抜き、バランスを欠くのであった。

赤門の瀬に入ったコロガシの釣り人。 (2012/7/1 10:35)
ハヤの引きでオトリが弱ったのを機にここでおにぎり1個の朝食である。その朝食の間に、上流のコロガシの人がやってきて、私のすぐ下、赤門の瀬に入った。私の場所で釣れるのが見えれば、当然である。ただ、残念なことに瀬の下まで丁寧に探ったようだが、1尾も掛からず、元の場所に戻って行ってしまった。コロガシにも掛からないというのは、アユ自体がアクティヴに動き回っていないことの証左かも知れない。
養殖オトリアユがまだ元気だったのでもう1度使ったら、それで1尾、仕事をした養殖オトリを放流。さらにもう1尾の養殖オトリをつけてもう1尾、またオトリ放流である。その場所でもう1尾掛けて、最後に大型のハヤが1尾掛かったのを機に竿を納めることにした。11時20分でおしまいである。
最後の1尾は、釣れた場所を確認しながら川を渡って、ハミを確認した大石回りに下流から泳がせて掛けたもの。きちんとした縄張りがあったのである。9時半に最初の1尾だったが、時間の効果は20%くらい、ほとんどは場所で決まったような気がする。少なくともこの場所は震災復旧工事以前では問題にならなかった場所である。数年はこのような状況が続くかもしれない。
不漁であったが、昨年よりははるかによい。昨年は、解禁日に2時間川を歩き、釣りの対象になるハミを見つけられず、それだけで広瀬川のアユ釣りは終わってしまった。少ないアユを追いかけたりはしない、という決心をしたのである。自主禁漁である。

飛び跳ねる6尾の釣果(19~21cm)。 (2012/7/1 11:45)
広瀬川のアユにも規制値以下だが放射性セシウムが含まれている。そのため、近所、知人にアユを配ることはしないが、私は食べるつもりである。人には勧めないが、私はそうする。

仲の瀬橋上の3人の釣り人。 (2012/7/1 11:50)
帰り足で仲の瀬橋の上に入っている友釣り師に話を聞いたら、1尾も掛かっていないという。コロガシで2尾の人と1尾の人の釣果が、それまで聞いた話の全てであった。
澱橋の上に4人で入っていた釣り人は、福島からやって来たということであった(東京電力福島第1原発事故で太平洋岸のほとんどの河川では釣りができなくなっている)。澱橋の上では釣れなかったと言って、川を見ながら下ってきたが、結局、諦めてどこかへ移動して行ってしまった。
普段であれば、広瀬川はわざわざ他県から釣り人がやってくるほどの川ではない。せっかく福島からやって来たのに、気の毒なことではあった。広瀬川もいつかは他県の人にも喜んでもらえるような良い川になってほしいと思う、切に。