天気予報によれば、午前中は晴れで気温は上がるが、午後からは気温が急降下するらしい。いったん水温が上がれば、気温が下がってもしばらくは大丈夫だろう。
もう、入る場所は決まっている、というか、決めている。
広瀬川の不調の原因の第1は、3・11大震災による崩落とその復旧工事による川の変化である。旧市街地の広瀬川河畔崖の崩落は、何カ所も生じた。
大々的な復旧工事が入ったのは、
(1) 牛越橋の下流、観音淵と新兵淵の間の右岸、
(2) 澱橋の下流、胡桃淵から赤門の瀬頭にいたる左岸の崖 (仲の瀬橋の上流、左岸(西公園側)も2カ所ほど崩落したが、規模が小さくて工事はなかった) 、
(3) 大橋の下流、早坂淵の左岸などである。
さらに、評定河原大露頭にもかなりの崩落があって、崖上にある伊達家3代の霊廟から続く経ヶ峰の散策路は閉鎖されたままである。元虚空蔵淵には崩落した岩がいまだ残されていて(6月半ば頃は)、工事はまだのようである。
復旧工事が行われた付近から下流は不調なのである。とくに私が解禁日と前回に入川した胡桃淵周辺の工事は規模が大きく、澱橋の淵の淵尻から赤門の瀬の瀬頭まで、ほぼ完全に川底を掘り返し、大きな石を浸食防止の石積み用に採取してしまい、小石ばかりが残された。

胡桃淵から赤門の瀬まで続く浸食防止用の石積み。(2012/7/1 6:59)
したがって、好釣果を期待するなら観音淵から上流ということになる。じっさい、先日の連休は釣り人が並んだということだ。3日前には、それを嫌って胡桃淵の上の瀬に入った二人の釣り人は後悔しつつ帰って行ったのだった。
さて、私はどうするかというとそこには行かないのである。というより、ダメになった場所を、どんなふうにダメなのかを見て歩きたいと思ったのである。
こんなことを考えた。
これから何度かの大水が出て、自然の力によってしだいに川自身の望ましいそれなりの形に変化していくはずである。そうして、アユの縄張りやヤマメの定位棲息にふさわしい環境に変化するだろう。
私は、ダメな川から素晴らしい川への変貌、その時間発展に立ち会えるチャンスを手に入れた、と考えることもできる。たぶん、3,4年の時間スケールではないか。実釣による観測、これはけっこう楽しい趣味になるのではなかろうか。
いずれにせよ、放射性セシウムの問題があって、以前のように、広瀬川のアユを隣近所、知人へ配ることはない。この状態は何年も続く可能性がある。アユがたくさん釣れても困るのである。
そんなこんなで、釣れない場所を釣り歩こうと心定めたのである。それで、前回の場所からさらに下流、仲の瀬橋から大橋付近までを探ってみることにする。

上流側から見る仲の瀬橋。 (2012/7/19 8:31)
まず、仲の瀬橋のすぐ下、右岸の分流に入る。ここは例年、岩盤の落ち込みの下流の草付き付近で2~3尾は必ず出る場所で、朝1番のオトリ交換をするところである。
ところが、ハミがおかしい。岸寄りの石にわずかなハミがあるが、流心に行くほどハミがない。10cm強のアユは跳ねるが、群れアユのハミらしいものも見えない。あきらめる。

仲の瀬橋直下から見る地下鉄橋梁。 (2012/7/19 9:08)
次は、地下鉄ピア前の瀬に行く。地震前のここは、たまに大釣りできる場所だったが、コロガシが張りついていてなかなか入れないのが、玉に瑕だった。
だが、もう見ただけでダメなのである。瀬は浅くなり、コブシより小さい石が詰まっている。しかも、ハミも見えない。儀式のように竿を出してみるが、すぐに終了。
すぐ下に岩盤瀬から五間淵への落ち込みがあるが、すでに一人竿を出している。声を掛けると首を横に振るばかりである。この落ち込みが右岸の岩盤にぶつかるあたりも良い場所だが、やはりハミがない。
大橋まで下がる。五間淵の淵尻に相当する。岩盤底の石はほとんどなくなってしまったが、岩盤も残り石もツルツルに食まれている。ハミが多すぎて、群れアユか縄張りアユかの判別もできないほどである。

大橋の岩盤のトロ瀬。 (2012/7/19 10:20)
左岸から竿を出す。三日前に使った養殖オトリは、素直に泳いでいくが30cmほどの岩盤溝の壁を越えられない。やむなく、振り込み投入である。静かに水面に落とし、落ち着かせた後、ゆっくり上に泳がせると、銀色の光が岩盤溝の中を2mほど走る。これが1尾目。最高のアタリを表現してくれた22cmだった。
それから3尾続いたが、あたりはどれもグズグズだった。5尾目は、12cmくらいの放流サイズ。これで終了。

追廻前のチャラ瀬の釣り人。 (2012/7/19 11:32)
大橋から望むと、下流に3人ほど入っている。吹いてきた風は冷たく、水は温いのに、体は冷えてくる。風邪を引きやすい身としては、あきらめどころである。
帰り足、5間淵への落ち込みに立つ釣り人にふたたび声をかけたが、ふたたび首を横に振るのだった。
アユの付き場の偏りが大きすぎるような気がする。もともとアユの少ない広瀬川ではよくあることだが、こんなに差があったことはない。これも工事のせいかどうか、因果関係の憶測もできない。

2時間30分の釣果、5尾(+オトリ1尾)。 (2012/7/19 12:12)