4ヶ月ぶりの会議が東京であった。この会議はいつも金曜日に開催されるので、その日は東京泊にして、このごろは首相官邸前の原発再稼働抗議集会(金官デモ)に参加したり、美術展や街歩きで東京を楽しもうと考えていた。
今回も、金官デモとSEALDsの国会前集会に参加しようと考えていたが、30日の「8・30国会10万人・全国100万人大行動」に何とか参加したいということもあって、東京泊は諦めて仙台に帰ってきた。2泊3日の抗議行動では体が持たないだろうし、わが家の介護の分担も果たさなくてはならないのである。
仙台駅からまっすぐ錦町公園に向かった。金デモに間に合うかもしれないという期待もあって、カメラだけはザックに入れていた。

夕闇の錦町公園。(2015/8/28 18:45~49)
曇り空ということもあるだろうが、だいぶ日の落ちが早くなって、錦町公園が思っていたよりずっと暗い。集会の始まる頃には夕闇が広がっている。
東京は午後から雨という予報だったが、降られずにすんだ。仙台も曇りのち雨の予報なのに、降ってはいない。このごろデモに雨というのは珍しくはないが、雨なしですむならそれに越したことはない。

フリー・トーク。(2015/8/28 18:40、45、51)
主催者の挨拶は、川内原発の話題で始まり、加美町・田代岳の最終処分場への環境庁の立ち入りを追い返したという話に及んだ。
最初のスピーチは、30日14:00から仙台市民活動サポートセンター地階で開催される「2015年夏Hot語りのカフェ」の告知だった。また、「8・30国会10万人・全国100万人大行動」に合わせた凱旋活動を10:00から20:00まで連続して平和ビル前で行なうという案内もあった。
仙台で開かれる30日の戦争法案反対行動としては、SEALDs_TOHOKUが主催する「安保法案を#本当に止めるワークショップ」がIKIビル10階で30日14:00から開かれる。私は国会前に行くつもりなので、そのどれにも参加できないのだが……
続いて、仙台市で始まった農林業系放射性廃棄物の焼却問題についての報告があった。仙台市は、すでに試験焼却を済まし、住民への説明会もないまま本格焼却を始めた。このことに危機感を抱いた市民団体の要請で急遽行なわれた「住民説明会」では、焼却を行なう清掃工場近くの住民から、仙台市の姿勢に対する批判と、安全性への懸念や不安視する意見が強く出されたという。
焼却しても放射能の全体量は減るわけではないこと、むしろ焼却によって濃縮された放射能が残されることに対する想像力が欠如しているとしか思えない。一般ゴミと同じ焼却炉で燃やすので、 大気中に放出される放射性物質や焼却灰に濃縮されて残る放射性物質に何の対策も行なわないのである。
薄い放射能濃度でも、このような行いの積み重ねでしだいに環境の放射能は増えていく。そして、きわめて重要なことは、どの程度の環境濃度であっても人間(ばかりではなくあらゆる生命体)にとっては有害であることは間違いないのだ。「ただちに健康への影響は現われない」ということは安全を意味しているわけではない。低濃度長期被曝の影響については、慎重に対処するしかない。市民の健康を守るつもりがあるのならなおさらである。
最後は、加美町・田代岳の指定廃棄物最終処分場候補地への環境省の立ち入り調査阻止行動への参加報告があった。この調査は、候補地の一つである栗原市が夏までに調査を行なわないなら候補地を返上すると広言したことを受けて行なわれたということらしい。
調査そのものは住民によって阻止されたが、NHKなどはあたかも加美町が「ごねている」というイメージで報道しているが、加美町の主張は、処分場反対というよりも、そもそも田代岳が処分場不適地であって処分場建設を前提にする調査そのものに意味がないという点にある。このことは、東北大学名誉教授の大槻憲四郎さんが専門的な立場から指摘していることでもある。

公園出口で待機中。(2015/8/28 19:02、03)

定禅寺通りを行く。(2015/8/28 19:08、11)
川内原発が再稼働してしまい、反原発、再稼働反対も絶対に手を抜けないのだが、参議院で審議が進められている戦争法案(安全保障法案)も喫緊の問題である。
戦争法案に限らないけれども、安陪首相は「息を吐くように嘘を言う」ということでとても有名になった。確信的に嘘をきっぱりと断言するというのが彼の特徴である。原発関連で言えば、福島の原発事故は「完全にコントロールされている」という嘘、「政府が先頭に立って収束に当たる」という嘘。
それと比べれば、戦争法案をめぐる中谷防衛相などの発言は、その場しのぎの答弁なので支離滅裂になったり、自己矛盾を生じてしまっているというに過ぎないように見える。役人の耳打ちですべて了解できるほどの人材ではないということを示しているだけだ。
安陪首相の虚言は際立っているというものの、政治家が嘘を語るということそのものはとくに珍しい現象ではないようだ。「政治の世界は虚々実々」などということは昔から言われている。
以前に読んだジャック・デリダの『言葉にのって』 [1] には「政治における虚言について」という1章が設けられている。そこでは、政治における虚言についてはプラトンをはじめとして古くから哲学の対象として論じられているとして、なかでもデリダはハンナ・アーレントの著述 [2] から多く引用している。その本は、私が読んだアーレントの著作には漏れていた。
プラトンまで遡るのは私の能力では不可能だが、せめてアーレントの著作くらいは読んでおきたいと思った。現代の日本の政治の舞台で溢れるように発せられる「嘘」を、その原因を個々の政治家の資質に求めるのではなく、政治の本質に由来する虚言としてとらえることが可能なのかどうか、考えてみたいのである。そうすることで、安倍晋三という個人の虚言の本質も見えてくるのではないか、と思う。たとえば、それは子どものでまかせの嘘そのもの……、あるいは、政治的効果が緻密に計算された虚言……などということが見えてくるかもしれないのである。

一番町へ入る。(2015/8/28 19:14)

脱原発犬、チョモランマさん。(2015/8/28 19:20)
今日のデモ参加者は45人、そして脱原発犬・チョモさんも加わった。もともと故障を抱えている後肢が不調なのか、今日は最初からキャリーカーでのデモ参加だった。
すれ違う通行人のほとんどが足を止めてデモの列を眺めるのだが、みんなチョモさんを見ているのである。「原発とめて」という文字も見えているといいのだが……

藤崎前(一番丁)。 (2015/8/28 19:27)
夜デモが出て青葉通りに曲る直前の一番丁、藤崎前がコースの中で一番明るくて写真写りがよい。それで毎回この場所ではかならず写真を撮ることになる。デモコースは毎回同じなので、どこで写しても同じような写真には違いないが、腕が悪くてもちゃんと写るのでこの場所だけはどうしてもはずせないのである。

コーラーのお二人。(2015/8/28 19:14、17、33)

青葉通りを行く。(2015/8/28 19:33、34)

東二番丁通り(大通り、国道4号)を渡る。 (2015/8/28 19:36)
デモを先導する脱原発カーは、錦町公園から定禅寺通りを先導し、歩行者専用の一番丁を迂回して青葉通り一番丁出口で待機してふたたび青葉通りを先導する。
青葉通りに入ったら、コーラーのお二人は脱原発カーの中でマイクを握っている。コーラーはいつも歩いているとばかり思っていたので、思わずシャッターを押した。
[1] ジャック・デリダ(林好雄、森本和夫、本間邦雄訳)『言葉に乗って――哲学的スナップショット』(ちくま学芸文庫、2001年) p. 134。
[2] ハンナ・アーレント(引田隆也、齋藤純一訳)『過去と未来の間――政治思想への8試論』(みすず書房、1994年)。