今週は二つの会議、二つの忘年会、一つのイベント、それに毎週の金デモがある。忘年会の一つは金デモと時間帯が重なるため、予定が先に入っていると出席を断った。原発が廃炉にならないかぎり、金曜日の夕方はいつも予定済みということになる。土曜日のイベントが終わると、今年の家庭外の予定はすべてクリアとなって、あとは家のことばかりになる。
せわしない1年だったが、来年もそんなに変わる見込みはない。老いて疲れやすくなった身には、いくぶん問題含みの年を迎えそうだが、やることが何もないというよりはマシだと考えることにする。
元鍛冶丁公園。(2018/12/21 18:19~18:27)
12月も半ばを過ぎたが、そんなに寒いわけではない。この季節は、暗い時間に家を出て、夜明けの時間帯の散歩を楽しむということになるのだが、日が昇る直前の時間帯がもっとも冷え込む。
この秋から冬にかけて、散歩のために家を出てからあまりの寒さにあわてて引き返して着替えたことが二度ほどあった。そういう点では、朝、昼と過ごしてから金デモのために家を出るときは、着衣にはほとんど気をつかわなくて済むので助かる。
元鍛冶丁公園に着くと、新しい横断幕が広げられていた。「美しい日本のどこにも原発も基地もいらない」と大書してある。いつからか「美しい日本」というのは右翼語になっているように感じていたせいか、見た瞬間微妙な違和感があったが、言葉の正しい意味ではまったく問題ないのである。日本語を手垢まみれの薄汚れたものにしてしまうのはたいてい自称「愛国者」という人たちのような気がする。
元鍛冶丁通り。(2018/12/22 18:31~18:32)
一番町。(2018/12/22 18:34~18:37)
日立製作所がイギリスのアングルシー島に原発を建設する計画は、資金調達が進まず「極めて厳しい状況だ」と中西会長がインタビューで語ったというニュースが流れていたが、それが「日立、英原発計画を凍結へ」(12月16日付け共同)というニュースに変わった。
これでリトアニア、ベトナム、トルコ、イギリスなど安倍首相が先頭に立って売り込んできたいわゆる安倍案件としての原発輸出計画はすべて頓挫することになる。原発輸出を経済成長の一つの柱と考えてきた以上、原発輸出計画の失敗は、アベノミクスの失敗を意味する。もう世間では、来年には日本初の大不況が起きると予測する向きもあるようだ。
ところが、「英原発計画、あきらめていない」と日立の副社長が語ったというニュース(12月17日付け朝日新聞DIGITAL)も流れた。建設資金が調達できない以上、ほとんど建設計画は不可能なのだが、東芝、三菱の撤退表明が続いたので、首相官邸との調整に手間取っていて、少しは頑張っているという姿勢をマスコミを通じて見せているに過ぎない、と私は思っている。苦し紛れの小さなアドバルーンの一つだろう。じっさい、社長自身は「日立は民間企業なので、リスクのとり方にも限界がある。経済合理性に合致するのであればプロジェクトを進めるが、しないのであれば凍結みたいな話になるかもしれない」と語って、凍結への道筋を示すという逆アドバルーンを上げている。
またまた自公政権が原発妄想のニュース源になっている。10月21日に政府は閣議決定で高速炉開発のロードマップを決めたという(10月21日付けNHK NEWS WEB)。高速炉を諦めると利権としての予算規模が大幅に減る通産省が足掻いているというニュースである。。
ここのところ、「小型原発の開発を始める」とか「原子力ベンチャー企業を育成して次世代炉に開発を行う」というような通産省初のニュースが立て続けに流れてくる。東芝、三菱、日立と相次いで原発輸出からの撤退、高速増殖炉の原型炉だった「もんじゅ」の廃炉、その後に200億円の予算投下を見込んでしがみついたフランス「ASTRID」の計画凍結など、原子力政策が次々と破綻していって、主導する通産省の焦りは相当なものだということだ。
閣議決定したロードマップでは、実用化は当初計画より100年も遅れるというのである。これが意味するのは、高速炉の実験炉である「常陽」レベルから技術は一向に進展していないということである。実験炉の次の段階の原型炉である「もんじゅ」の20余年は技術が進展したどころか、「常陽」の出力レベルを下げて再稼働しようと実験炉レベルでも後退しているのである。
21世紀半ばまでに運転を開始して21世紀後半に本格的な運用開始というロードマップは、しょせん儚い夢物語になるだろう。これから当分のあいだ原発を建設できない原子力企業は、次第に経済的にも技術的にも現状を維持できないだろうし、何よりも高速炉開発のための人材が枯渇するだろう。
かつて「常陽」、「ふげん」、「もんじゅ」の建設へ向かったころは、原子力工学の夜明けの時代で、その学問に憧れた多くの俊才が集まった。その後、原子力工学が担う産業は原発だけということがはっきりし始め、さらに世界で相次ぐ原発事故が知られるようになって、原子力工学の人気は急激に衰え始めた。原子力工学科、原子核工学科という大学の学科名から「原子力」を消し去って優秀な学生を集めようという大学の目論見は(私が見ていたかぎりでは)成功しなかった。
ましてや、悲惨な東電1F事故の後では原子力工学、原子力産業が優秀な人材を集めるというのはほとんど不可能と言っていい。自公政権や通産省は、何の根拠もない「奇蹟」でも待ち望んでいるのか。しかし、どちらかといえば「奇蹟」は新しいエネルギー技術のサイドで起こる確率がはるかに高くて、原発はますますレーゾンデートル(存在根拠)を失ってしまうに違いない。核分裂のエネルギーを利用するかぎり、安全性を担保する技術革新は望むべくもないのである。
青葉通り。(2018/12/22 18:45~18:55)
35人の脱原発デモは、今年の最後のデモを終えた。来年は、1月11日がデモ初めである。昨年のようにあまり寒い冬にならなければよいが………。
私にはまだ手付かずの冬支度がいっぱい残されている。
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