テーマ:教育(24)
カテゴリ:教育
旧暦十二月十日、小寒、納めの金毘羅。師走、芹栄う。 国まさに滅びんとす(続き) 六、イギリス病で瀕死の帝国 「悲しみの大戦」は、「帝国の落日」と「苦難の二十世紀」を告げる悲劇だった。三十年代の大恐慌は空前の高失業率をもたらした。やがて第二次大戦が始まり、ドイツ空軍がロンドンを襲った「バトル・オブ・ブリテン」の千九百四十年夏、イギリスは財政的に破綻し、あとはアメリカからの借金によって戦いを続けるしかなかった。 政府の大幅な介入、巨額の財政支出と高い税率、労働組合の力の増大を招いた。 イギリスの有権者は、福祉を成り立たせている財政基盤を問うことなく、生活水準の向上を期待し続ける心理的習性を身につけていた。七十年代には、炭鉱ストによって電力供給が週三日制となって夜はロウソクで過ごし、またゴミ収集の公務員のストで街はゴミにあふれかえったりした。「イギリス病」にかかった英国は、もはや危篤状態と思われた。 七、古い道徳からの新たな活力 瀕死の大英帝国が新しい活力あるイギリスとして生まれ変わるには、新たな「確信に支えられて統治を担うエリート」の登場が必要だった。その役割を果たしたのがマーガレット・サッチャーだった。 サッチャーは七十年から七十四年までヒース内閣の教育相であった時、学校で生徒達が飲むミルクへの公費補助を打ち切った。子供たちへの無料のミルクは福祉社会の象徴であり、またその金額もわずかなものであったが、それを打ち切ることで、国民に改革を促すショック効果を狙ったのである。「ミセス・サッチャー、ミルク・スナッチャー(泥棒)」との悪罵をものともせずに、国民を改革に引っ張っていこうとする「確信」をサッチャーは抱いていた。 サッチャーは八十四年からの一年にわたる炭鉱労組の大ストライキと渡り合い、計算し尽くされた強硬姿勢によってこれを見事粉砕して、労組の力を劇的に弱め、ストライキを激減させた。イギリス企業の体質改善も進み、八十六年には先進国中最高の成長率を記録した。 公営住宅の売却を進めて、百万以上の世帯が「持ち家」を獲 得し、また国有企業の民営化によって一千万人近い人々が株主となった。これまで「市民派」政治家や社会主義に煽動されてきた労働者階級が豊かさを得て、国家を支える中流階層として新しい活力を吹き込むことになった。 かつての「大英帝国」では「自由の理念」、「公民」としての誇り、勤勉、倹約、公益への奉仕の観念を、一部のエリート階級が体現し、彼らが帝国を築き支えてきた。そのエリート階級が力を失った時に、大英帝国は衰弱した。サッチャーはこれらのこれらの古い道徳を、国民全体が担うことで、新たな国家の活力を引き出したのである。 八、「愚かなるオプティミズム」 世界の片隅の小さな国家が目覚ましい大発展を遂げて、世界史に大きな足跡を残すことが時々ある。ヴェネツィア、オラン ダ、そしてイギリスが典型的な例であろう。その大発展の秘訣は、共同体の発展とその構成員の福祉とを自らの使命と感ずる「精神の貴族」を輩出した点にある。[A、B、C] 大英帝国もまた軍人ウェリントン公や、医師ジェンナーのような「精神の貴族」たちによって築かれたことを[A]で示した。しかしその牢固とした階級構造は、やはりアキレス腱であった。帝国を支えるエリート階級が実権を失い、労働者階級が「市民派」や「社会主義」に煽動され、国家の繁栄と平和を放っておいてもいつまでも続くものとして、産業の弱体化、財政の破綻、対外危機から目をそらし、海外旅行、健康ブーム、マンガ、温泉に興じた。この「愚かなるオプティミズム(楽観主義)」によって、「精神の貴族たち」の遺産は食いつぶされ、国家経済は破綻して、人民全体が塗炭の苦しみにあえぐまでになった。 国家社会が栄えてこそ、国民は豊かな生活を享受できる。しかし、国家の隆盛のために尽くす「精神の貴族たち」がいなくなり、その遺産を食いつぶす大衆のみになったら、いずれ行き詰まるのは理の当然である。一国が衰亡する過程で「愚かなオプティミズム」に踊らせれた一般大衆が旅行や温泉ブームにうつつを抜かすのは、ローマ帝国でも大英帝国でも見られた末期現象であった。そして現代の日本も同じ運命をたどっているように見える。 九、「歴史から考える」姿勢 「日本さえ他国を侵略しなければ、非武装でも平和が保てる」とか「侵略戦争を反省すれば、近隣諸国との真の和解が得られる」というような「市民派」の主張は、現実から目を背ける「愚かなるオプティミズム」そのものである。そして「愚か なオプティミズム」に惑わされた人々は福祉を支える財政基盤や、国民の安全を守る軍備については考えない。まことに古今東西を問わず、衰亡期の国民は良く似ている。 しかし、中西教授は、日本においてはさらに深刻な問題がある事を指摘している。明治日本と、戦後日本とは半世紀足らずの間に世界史に残る奇跡的な隆盛を実現したが、それが三世代も続かなかった。短い繁栄の後、世代交代と共に「劇的な国家指導者の質の低下」が起こり、悲惨な敗戦を招く。これは次世代の「精神の貴族」を育てるメカニズムが機能していないからであろう。 「精神の貴族」を育てるには、中西教授の言う「歴史から考える」姿勢が必要である。その姿勢があれば、目先の「愚かなるオプティミズム」も、現代日本を覆う「衰弱的ペシミズム(悲観主義)」も一時的な病いであることが見通せるだろう。 次世代の国民からいかに多くの「精神の貴族」を輩出させるか、教育の真の課題はここにある。(文責 伊勢雅臣) リンク A、セント・ポール大聖堂にて~大英帝国建設の原動力 そこここに立つ偉人の彫像や記念碑は、未来の「精神の貴族」を育てる志の記憶装置である。 B、オランダ盛衰小史 なぜオランダは「大英帝国」になり損ねたのか? C、ヴェネツィア 人工島の上に作られた自由と平等の共同体。 参考(お勧め度、★★★★必読~★専門家向け) 一、中西輝政、「国まさに滅びんとす」★★★、文春文庫、平成十四年 二、中西輝政、「大英帝国衰亡史」★★、PHP研究所、平成 九年 おたより 産業革命の一翼を担った国からものつくりが無くなっている。でも、旺盛な国内消費に支えられ景気は悪くない──メーカーに勤める労働者の賃上げはこの二年殆どされてないにも拘わらずです。英国政治家には見習って欲しい人が沢山居ます。でも、コピーではダメですね。家貧しくして孝子生づとなりませんかね? 編集長伊勢雅臣より 「ウィンブルドン現象」という言葉があります。テニスの有名な大会ですが、英国は会場を提供しているだけで、活躍しているのは外国人選手ばかり。有能な外国人、外国企業に活躍の場を提供するのも大事ですが、自国民もそれに負けじと伍する気力が大事ですね。 平成廿一年 一月五日 ズッペ「軽騎兵序曲」を聽き乍ら 愛子内親王殿下は男系女子なので、民間男子との間に設けられた御子様は「女系」でも「男系」でもない。 男┌女…雜系女子 ├┤ ┌女└男…雜系男子 男 ┌女…雜系女子 │ ├────┤ (神武天皇) 女│女┌女…男系女子=愛子内親王└男…雜系男子 ├┤├┤ 神倭伊波禮毘古命┌男└男└男…男系男子=悠仁親王 ┌女…男系女子 │ │ │ ├────┤ │ │ │┌男…雙系男子 女 └男…男系男子 ├────┤ ├┤ │ │ │└女…雙系女子 │ │ │ 多多良伊須氣餘理└女┌女┌女…女系女子 ├┤├┤ 男│男└男…女系男子 │ └男┌女…雜系女子 ├┤ 女└男…雜系男子 從つて今次の皇室典範改正問題の論點は「女系天皇を容認するか否か」ではなく「男系天皇を放棄するか否か」である。 コメント・トラックバックは豫告無しに削除する場合があります。あらかじめご了承下さい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年01月06日 22時58分36秒
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