中島らも「なれずもの」
中島らも対談集「なれずもの」を読んだ。一冊の本としては少し分量が足りない感じだが、途中で死んでしまったんだからしょうがない。中島らもの本は税抜き千三百円という値付けが多いのだがこの本は千百九十円(税抜き)とお安くなっている。中島らもの対談集は意外と多くて、舌先の挌闘技しりとり対談訊く逢うその辺の問題クマと闘ったヒトらもチチ 青春篇らもチチ 中年篇その他「イッツ・オンリー・ア・トーク・ショー」「ひそひそくすくす大爆笑」も対談集と言って差し支えないだろう。「なれずもの」の対談相手は、柴山俊之(バンドマン)竹井正和(編集者)宇梶剛士(俳優)本上まなみ(女優)安部譲二(作家)松尾貴史(放送タレント)本上まなみは下心から、松尾貴史は息抜きのために選ばれた感があるが、その他の面子はアウトロー的感触が強く、晩年の中島らもの心理状態を窺い知る一つの材料といえる。「この本のテーマは『なれずもの』なんや。みんな、なんかになりたかったやろ。小学校、中学校、薔薇色の夢。プロレスラーになりたいとか、看護婦さんになりたいとか。で、みんな夢破れて、サンガリア」この本で僕が一番気になったのは装丁が今までの中島らもの本と随分違うこと。品のない字体とえげつない大きさ、頁いっぱいの写真にあざとらしい見出し。中島らもが生きていたらこんな三文雑誌みたいな作りにはなっていなかったと思う。内容は? 皆さんご自分で確かめてください。僕は宇梶剛士、安部譲二、松尾貴史が楽しめた。