河内保二主宰の経済工学リサーチの発信情報

2015/04/25(土)15:18

客業生産とインダストリー4.0

世界のものづくりが変わる―その方向は客業生産! 先月13日より17日、ドイツで世界最大級の産業見本市「ハンノーバー・メッセ」が開催され、「インダストリー4.0」と呼ばれる、ドイツが進める技術革新の最新の成果が紹介されたとNHKニュースは伝えた。この「インダストリー4.0」(いんだすとりー・よん・てん・ぜろ)というのは、経産省発行の経済産業ジャーナル 2015 年4・5月号によると、ITによる第4次産業革命として、2011年にドイツ政府が製造業の競争力強化を目指して起草した構想で、ドイツの主要企業が参加し、工場間・企業間をソフトウェアでつなぐことにより、カスタマイゼーションを目指して、効率的な生産システムの構築やサプライチェーン全体の最適化が進められているプロジェクトだということである。このメッセで、ドイツの大手電機メーカー「シーメンス」は、顧客がタブレット端末から好みの香水を注文すると即座に生産ラインに反映されるという、在庫を抱えずに済む新たな生産システムを紹介した。またドイツの大手自動車メーカー「フォルクスワーゲン」は、高度なセンサーを備えものに接触すると動きを止めるロボットのアームを展示し、人間のすぐそばでも作業できるとして安全性をアピールしていた。さらに日本とドイツの企業が共同で開発した、インターネットを通じて世界中どこからでも操作できるという工作機械も出品され、関心を集めていたと報じた。 このプロジェクトは、日本語で「第4の産業革命」と呼ばれ、蒸気機関の発明で機械化が進んだ「第1次」、電力による大量生産を実現した「第2次」、コンピューターの導入で生産の自動化が進んだ「第3次」に続く、技術革新を実現しようという意味が込められているという。 筆者は2004年5月刊行の拙著「チェックリストによる少量・短納期生産モデル縫製工場ガイド」(繊維流通研究会刊)において、筆者の提唱する「客業生産」の特徴を示す表の中で製造業の時代区分を「職人製作」、「工業生産」、「脱工業生産」、「客業生産」の4区分で示した。  こうした区分は2004年時点で最初ではないかと思っている。そしてその7ヶ月後、EUの繊維・衣服協会(EURATEX)は、2020年ビジョンで、製品差別化を図り、大量生産を廃止して、カスタマイゼーションヘの転換を進めると発表して、製造の進化の表において、「クラフトマン製作」、「大量生産」、「自動化生産」、「カスタマイズド製造」の4区分を示した。  それから7年後となる2011年にドイツ政府のプロジェクト「インダストリー4.0」では、産業革命経緯図を示し、そこでは、第一次革命は18世紀の蒸気機関による機械的な生産設備の導入、第二次産業革命は19世紀後半の電気による大量生産を指し、第三次以降はドイツ政府の見解では、70年代のコンピューターによる生産の制御であるとしている。そして、現在人類は第四次産業革命の端緒に立つと位置づけ、ドイツはその中でイニシアティブを取ることを目指している。 わが国でも、このものづくりの変革は注目されており、この6月に発行予定の「ものづくり白書」においても取り上げられるという。筆者の提唱したカスタマイゼーションを目指す「客業生産」の理論がこのように大きなプロジェクトとして進められていることに感慨無量である。

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