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2016年06月02日
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カテゴリ:四季感慨
客業生産への先駆事例

 筆者は21世紀のものづくりはカスタマイゼーションのものづくりである「客業生産」であるだろうと2002年以来提唱してきたが、2011年からのドイツ政府による国家プロジェクト「インダストリー4.0」は、第4次産業革命と位置づけられて、ものづくりのカスタマイゼーションに向かって研究開発が進められるに至り、連携する国々も中国、米国、イタリア、インド、オランダ、トルコ、フランス、スイス、台湾、韓国、オーストリア、スペイン、ロシア・・と続き、日本も22位に遅れた形ながら参加している。これは世界の主要諸国が「インダストリー4.0」プロジェクトに連携して、21世紀のものづくり革命に取り組む体勢が構築されたことを示すものであり、筆者の「客業生産」の方向が具体化してゆくことにまことに感慨深いものがある。
 ものづくりのカスタマイゼーションには、大量生産を止めること、従って、流れラインを止め、個別に加工のセル生産方式を採用すること、構成部品やモジュール、ユニットなどを標準化しておくこと、そして最近のサイバー・フィジカル・システム(CPS)を取り入れて、ロボット自動化を進めること、このためにIOT(モノのインターネット)が重要である。
 ここで、CPSとは、実世界(フィジカル空間)にある多様なデータをセンサーネットワーク等で収集し、サイバー空間で大規模データ処理技術等を駆使して分析/知識化を行い、そこで創出した情報/価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を図っていくものと説明される。
また、IoTとは、コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在する様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うことをいう。
 こうした産業革命「インダストリー4.0」プロジェクトの進展は、繊維・アパレル産業においても次のように先駆事例が報じられるようになったことは心強いものがある。
 ●経営トップ層のリーダーシップで組織を変革し、 IoTを活用した自社だけのビジネスモデルを確立・・・YKKグループ  (2016年ものづくり白書より)
 YKKグループは、ファスニング事業とAP(ArchitecturalProducts)事業を中核とし、それらを支える工機部門で事業を展開している。同グループの優位性は世界のどこでも同じ商品・品質・サービスを提供出来ることであり、そのために 経営の根幹の思想である「一貫生産」にこだわり、最適な材料から設備までを自社で開発し、同じ材料や機械を世界中で使うことで品質と均質性を高めている。この一貫生産体制を更に進化させるため、工機部門を中心に、世界中の約50ヶ所の工場で約3万台の生産設備データを統合し活用する” YKKiIoT(integratedIoT)” に取り組んでいる。
具体的には、世界中の工場や機械の稼働状態を統一的に把握し課題を抽出するため、設備総合効率という共通の指標を設けている。これは、機械の時間稼働率と性能稼働率、良品率を掛け合わせたものであるが、過去も各工場なりの分析はあったものの、本質的な課題抽出には至らなかった。それは、実際には機械の停止時間の定義や加工条件の取り方が工場ごとに微妙に違うためであり、この微妙な違いの標準化として、設備総合効率の考えを徹底して浸透させることが成功の秘訣であったという。 ハード(設備)面では、従来の高度化・自動化といった開発者目線のテクノロジー・プッシュ型開発をやめ、工場の従業 員側の使いやすさを重視した開発に変更。これにより工場側で作業手順やその水準の統一化が容易になった。また、ソフト(運用)面では、本部側が譲れない部分(稼働データを活用して達成したい目標、その鍵である設備総合効率の考え方)を明確化し、その軸がぶれない範囲で細かい運用についてはそれぞれの現場の考え方や慣習を尊重した。 加えて、もう1つの成功の鍵は、経営トップ層が方針を明確にし、その考え方を着実に浸透させていったことである。一般に、IoTの活用の企画や執行の責任は情報部門に任されているという企業は多い。しかし、こうした企業では情報の収集やシステム導入自体を目的化しがちであり、IoTが経営の改善やビジネスモデルの改革につながらないことが多い。同様に 製造現場では、現場の個別レベルでの生産性向上を目的化しがちであるが、それが経営の改善になっていなくては本末転倒である。YKKにおいても、現場からの反発の中で、経営トップ層が大局的な目線で目的を示し、その達成のために情報部門のやるべきこと、製造現場のやるべきことを地道に説得していったという。 同社の大谷副社長は、「決してIoTブームだからということでは無く、一貫生産体制の更なる進化という経営方針の実現のためにIoTというツールを活用したに過ぎない。経営トップ層がしっかりと目標を打ち出し、単なるデータ収集だけで無く、何のために行うのかということを常に従業員に問いかけた。これまで現場の作業者や機械の開発者の多くが長年の経験と勘をベースとしており、説得は容易ではなかったが、粘り強く地道に浸透をはかったことこそが最も大事なことだった」と話す。IoT活用の考え方と経営者のあり方という点において、優れた事例の1つと言えよう。
●シタテル(株)(熊本県熊本市)は国内の技術力の高い様々な縫製工場との連携によりジャパンクオリティのもと、小ロッ ト・短納期を可能にするアパレル産業における生産プラットフォームを流通サービスとして提供する企業である。 日本のアパレル産業の多くは生地メーカーから店頭に並ぶまでの間に多段階の生産、流通構造が存在し、商社や卸を通さないと物が流れない仕組みとなっている。その為中間マージンの増加や開発期間の長期化、物流コストの増加といった弊害が生じていた。結果、我が国の縫製工場等アパレル製品製造業は生産コストの安い諸外国にシェアを奪われていき、繊維産 業の事業所数及び従業者数は1985年の66,174箇所、115万人から2010年には15,902箇所、30万人まで減少していた。 こうした日本の高い縫製技術の衰退に対する危機感から、同社では多くの中間業者が介在する多重構造によって生じる流通不全や古い産業特有の商習慣を見直し、国内外の小売店等やデザイナーからの注文を国内の縫製工場へとつなぎ、売り手の「こんな服を提供したい」という思いを「高品質、小ロット、短納期」で実現するクラウドソーシングサービス「sitateru」を立ち上げた。 事業者と工場の間に立ち、企画からデザイン、パターン(型紙)の作成、生地選定、資材調達、サンプルチェック、プロセス管理と企画から生産、納品に至るまですべてをコントロールすることが出来る他、国内外の素材提案、トレンドを先取りした付加価値のある生地・素材の提案まで可能としている。こうしたサービスを人とテクノロジーの融合によって実現している。 同社の運営する「sitateru」は3つのセクションによって成り立っている。一つは事業者等のユーザーとのやり取りの場面であり、 お客さまからの様々な依頼に対応すべく、作りたい衣料品のイメージ画像などを可能にし、サービスの使いやすさを追求している。 また、「マイアトリエ」というツールを自社開発しオーダーや進捗確認をスマホから行えるようにしている。次に様々な協力工場とのネットワーク構築に関しては社内のアパレルに精通し、経験豊富な目利き人材によって、優れた技術を活かせずにいる中小縫製事業者を評価しデータベースを整備している。 つまり、これまでの商習慣の中で取引先への依存度が高く、自社の高い技術を如何に評価しPRするかという点で問題を抱えていた工場を客観的に評価することで、これまで「暗黙知」として見える化できていなかった技術の形式知化を可能にしており、新規取引開拓に繋げているのである。また、これらユーザーと工場をつないでいるのがSCS(シタテルコントロールシステム)であり、技術力、生産対応アイテム、価格帯、リードタイム、繁忙期、閑散期といった連携工場の情報をデータベース上で管理し、最適なオペレーションを行うことで小ロット、短納期化を実現している。 2014年3月にスタートした「sitateru」は2年足らずでユーザー登録数1,600社を超え、提携工場数110工場と順調に増加している。また、自社のプロ縫製コンシェルジュによる工場への厳しい品質チェックにより、ハイブランド品の生産や事業会社のユニフォーム等、ユーザーの幅もより高品質を求める層へと拡大している。 将来的にはSCSの更なる高度化とCAD、CAMといったデザインやパターニングのデジタル化を進め更なる短納期化、低コスト化を図り、縫製工場業界の地位回復を狙う。(2016年ものづくり白書より)
●独アディダス社はドイツ南部アンスバッハに新設する「スピードファクトリー」で17年からロボットによる靴の生産を始めるそうだ。アディダス社は先進国でのロボット生産は部分的なものでアジアの下請工場に直ちに替わるものではないとしているが米国でもロボット生産を計画しており、大量生産のベーシックラインはアジアでの労働集約的計画生産、中少量生産のデザインラインは消費地での機動的ロボット生産、と使い分けるものと推察されると、小島健輔氏はコラムで伝えた。ナイキにも同様な動きが見られるから、グローバルなスポーツブランドに共通する戦略転換なのだろうと同氏は論じる。
●日本の島精機も独自技術のホールガーメントニット自動生産システムで国内回帰を目論んでいると、同氏。
●繊維工業ではセーレン社(福井市)が、多品種・小ロット生産の傾向に合わせ、同社が独自に開発した、企画から販売まで一貫しておこなう染色システム「ビスコテックス」により、従来のファッション分野から広告資材、自動車内装資材などにも分野を拡大している。同社の本社に、その場で47万通りのオーダーが可能なパーソナルオーダーアパレルのアンテナショップをオープンしている。セーレンはテキスタイルとアパレルの生産システム「ビスコテックス」を活用し、オーダーを受けてから数km先の自社工場でテキスタイルの生産と裁断、縫製を行ない、最短で2週間で購入者の手元に届ける。単に生地を裁断するだけでなく、生地そのもののデザインと生産からスタートするアパレルのオーダーショップは世界初だ。川田達男セーレン代表取締役会長兼最高経営責任者は、「大手企業の染色業の下請けに過ぎなかった当社が、30年前にIT化、デジタル化、流通ダイレクト化という夢を掲げて『ビスコテックス』をスタートした。余計な在庫をまったく必要とせず、しかも誰もが欲しい服を作れるこの仕組は、ファッション産業の夢の仕組みだ」と語った。まさに筆者のいう「客業生産」のモデル工場である。
 このように第4次産業革命の「インダストリー4.0」の先駆事例が身近なところにも及び始めた感じとなってきている。「インダストリー4.0」というと、IOTやサイバー・フィジカル・システムなど聞き慣れない用語で難解の感があるが、現実に実施している工場がスマートファクトリーとして増加して行くことになると思う。「客業生産」時代への道筋が明らかとなりつつある。





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最終更新日  2016年06月02日 18時56分22秒



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