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車筆太

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2006年02月16日
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カテゴリ:映画与太話
 パークスの息子、ゴードン・パークスJr.が監督した『スーパーフライ』は、あまりにもセンセーショナルであった。
 ロン・オニール演じるファショナブルな麻薬のディーラーの派手な生活ぶりは、「唯一許されたゲーム」として、黒人の「人生」、裏社会の悪党の人生を象徴するものであった。
 ハッタリの効いた容姿、行動は憧れるに足るものであったのだ。
 しかし、こんな世界に憧れるなというメッセージが、カーティス・メイフィールドのサントラには満ち溢れているという。
 その効用があったかどうかは別にして、この映画が黒人の権利を掲げる団体にとって気に入らないものであったのは、確かである。この辺の事情が本書では書かれていないので、『バット・アス・シネマ』に依るしかない。
 
 それによると、映画を観ることで、黒人の政治に対する意欲が失われ、SEX、ファッション、ドラッグといった快楽に流れていってしまったという。そこで、黒人の典型を描いたかのような一連の作品群を堕落の象徴として、さらには白人(ハリウッドそのもの)の手による搾取を見て取り、「ブラックスプロイテーション」と名づけたのである。
 アンチヒーローとして「黒幕(ザ・マン)」を倒すはずの作品たちは、こうして批判されていった。

 時代色の強い批判であるが、ここでその正否を問うことは避けておく。判断を下すには、資料が少なすぎる。しかし、今で言うなら、さしずめ映画における暴力表現を捉えて批判するようなものか。『悪魔のいけにえ』さえ観れないのだから、不憫だとは思う。

 本書を読む動機となったブラックスプロイテーションの箇所が、なぜ批判されるのかについて詳しく書いていないのが物足りないのである。
 「黒人観客を狙った安手の低俗なアクション映画」「ハリウッドのお手軽な映画作り」「自分たちの魂の入った主体的な映像を獲得するためには」といったところが、批判の骨子になるだろうか。
 「政治的」な意図による批判をそのまま借用してきたようで、もう少し丁寧に批判の道筋を追って欲しかった。
 教訓的で、教条的で、イデオロギーを持ち(主体的とはそういうことだろう)、高級(?)なアクション映画であったならば、このような批判を受けることはなかったのだろうか。

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最終更新日  2006年05月14日 09時13分06秒
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