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車筆太

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2006年04月05日
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カテゴリ:書籍
 花見には酒。酒を飲んだら、流れでカラオケ。
 高校時代にカラオケBOXの壁を破って出禁になったのも懐かしい思い出。
 というわけで、幅広い層に享受されているカラオケについて少し気になったので、朝倉喬司の『カラオケ王国の誕生』を読んでみた。
 
 あとがきにも書いてあるように、「徹頭徹尾、「現場」に深く突っこ」んでいるわけではない。
 カラオケの誕生、「盛り場」風俗への受容を、メディアやソフト面から言及してみたり、盛り場や風俗(文化)に依りながら解きほぐしていく。その中に、時折、折々の歌謡曲に言及しながらその社会性を明らかにしたり、歌のフォークロアに触れたりと寄り道を繰り返す。
 その意味では、確かに「読みやす」くはない。

 しかし、興味深いハナシには事欠かない。
 結局は試みられることのなかった企画ながら、カラオケ機器が試作段階だった頃の町工場のおやじさんに話を聞くだとか、カラオケが未だ浸透していない時期の酒場のママに当時の「ヒトとカラオケの関係」のディテールを聞き出すだとかは、どこかでやってもらいたいものである(もちろん、雑誌掲載のみではなく、単行本に収録してもらって)。

 レコード業界を軸としてきた音楽市場に、カセットテープが重要な機転をもたらした。それは、現在も音楽市場に影響を与え続けている音楽の消費・受容の「情報社会化」であった。
 この時代の潮流は、それまでレコードの販売形態と呼応していたジュークボックスの凋落を生み、その逆境の「すき間」を縫う形でカラオケの萌芽(アイデア)は日の目を見るのである。
 ジュークボックスの延長線上に、「歌を買う」というカラオケの音楽消費の形式は存在するのだ。
 
 カラオケの誕生の「歴史」に触れた後、記述主体の恣意性が「正当性」の維持のために、非連続的で生気に満ちた「原初的」なエピソードをふるいにかけ、切り落としていくと述べる。
 その上で、「正史」に対する「稗史」をことさら持ち上げて何事かを語るつもりはない。ただ、「(歴史にとっての)下方のディテールの動態」への感覚の鈍磨がこと「言論界」において目に余ると指摘するにあっては、朝倉の面目躍如といったところか。
 
                  つづく・・・





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最終更新日  2006年04月06日 00時45分11秒
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