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テーマ:ショートショート。(573)
カテゴリ:斜め45℃の小説
「これでよし」
「求導師様ありがとう」 求導師であるカヲルは、各地にある地蔵にマナを注入すべく全国を放浪している しかし 地蔵信仰はすっかりすたれ 今は地蔵職人も全員引退してしまっていた 「今の子は地蔵を見てもありがたがらないのかも知れないな」 カヲルは自分がしている事が無意味に思えて仕方が無かった 「おや、こんなところに地蔵が?」 何故か見知らぬところに地蔵が複数立っており 傍にあるマナ字架には梵字で何かが書かれていた おかしな格好の地蔵たちだが どうもマナが注入されていないらしい よく見ると地蔵職人の作ったものではなく 彫刻家が制作したかのような巧みな造りになっている 「これも何かの縁でしょう」 カヲルはその地蔵にマナを注入した その時、 海に面していない村にいたはずなのに 赤い津波に飲み込まれた・・・ 目が覚めると廃屋の傍で眠っていたようだ どれくらいこうしていたのだろうか? 「先生助けて!」 何かスピーカーのようなもので女児の声がした そして 声の方には学校が立っていた 放送室に乗り込むと 女の子がニワトリに襲われている カヲルはニワトリを外に蹴飛ばし すぐに鍵をかけた 「もう大丈夫」 女の子は先生と飼育当番をしていたらしいのだが 突然ニワトリが凶暴化し 何とかここまで逃げてきたらしい 「となると先生も危険だ」 その女の子を引き連れて飼育小屋へ向かった だが、飼育していた動物は一匹もいなかった そのとき背後から恐ろしい殺気を感じた 「あ、先生!」 女児が先生と呼んだそれは 人間とは程遠い容姿をしていた 「当番を途中で投げ出すなんて悪い子ね あなたみたいな子は石になってしまいなさい」 なにか落雷のようなものが女児を貫いたかと思うと 一瞬にして石像になってしまった それを見て、カヲルはひらめくものがあった 「そうか、あれは地蔵なんかじゃなく・・・」 そう言い終る前にカヲルは体が固まっていくのを感じた 「おや、また地蔵が増えている どなたかが犠牲になりんしゃったか」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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