2007/04/25(水)20:31
ひたむきに、ただ前向きに
今、高校3年生のKくんは、入学したての頃、こちらから話しかけるとそそくさと逃げていってしまうような男の子だった。中学校はいろいろと事情があってなかなか出席できなかったらしい。
人と眼を合わせるのを極端に嫌い、自らを語ることもしなかった。できるのは、聞いたことに対して首を縦や横に振ったりするぐらいのものだった。
寮生活をする中で、日誌を毎日書いて寮監室に提出をするようにした。
最初は1~2行。「勉強で疲れた」とか「授業が分からなかった」といったコメントばかり。こちらからも赤ペンで返事を書いてあげるようにした。
いろんな質問を書いてきた。
「将来カウンセラーになるにはどうしたらいいのですか?」とか「今の学力で大学に行けますか」とか、将来を案ずる内容が多かった。
3ヶ月すると、少し長い文章を書くようになった。字は小さく、見るからに神経質そうな雰囲気が漂っていた。
半年たつと「勉強が少しずつ分かってきた」とか「クラブが楽しくなってきた」というふうにものごとを前向きに捉えるようになってきた。
日誌の提出はほぼ一年続いた。表情も柔らかくなり、落ち着いて物事を考えられるようになった。
高校2年。能力別クラスでひとつクラスが上がった。英語は大の苦手だったはずだが1年生で英検3級、2年生の終わりまでには準2級に合格した。職員室にもこまめに質問に来てくれたし、時々進路相談もかねて世間話もしたりした。自分で問題集をノートに解答して、添削して欲しいとノートを提出してくれた。
1年前では考えられなかったけれど、自分から話しかけることも普通にできて友達もたくさんできた。
そして今Kくんは高校3年生。
さらにクラスがひとつ上がり、今年は授業でも担当するようになった。
大学で心理学を学びたいという夢を持って毎日勉学に励んでいる。
寮の方では、4月初めに転校してきた中学生の世話係りを初めて体験し、いろんな面で面倒を見てくれて、良き先輩として尊敬されている。
人は変われば変わるものだ。
今までとは違った自分に、なろうと思えばなれるものなのだ。
変わろうとする意志があれば人は自分を変えられる。
気持ちひとつで自分の人生は変わるのだ。
「自分は○○だから」
そういった固定観念は捨てよう。
生まれたばかりの赤ん坊のように、ピュアな気持ちで物事を捉えよう。
今の願いは、Kくんが目標どおりの大学・学部に受かってくれること。
彼ならやれる。そう信じている。
彼に与えたエネルギーを、今彼は別の形で返してくれている。
教えた彼に教えられている。
弱音を吐いている場合ではない。
ひたむきに、ただ前向きに。
強烈なプラス思考が必要なのだ。
人生、諦めなければ何とでもなるということを、今あらためて自分に言い聞かせよう。 (Photo: Nullabor Sunset, Western Australia 1995)