超短篇小説「夢工場物語」
【本日2度目の更新】 超短編小説「夢工場物語」「ああ、疲れた。工場のオートメーションもいつまで俺たちを働かせておくんだ、全く」「そうだな。年末からほとんど休みなしだもんな。いくら栄養ドリンク飲まされたって、毎日毎日きつすぎるよ。しかも残業のシフトもいつの間にか増やされてるしな」「先月分の注文がどっさりたまってるって、工場長が言ってたけど、そんなにたくさんあったのか?」「ああ、何でも正月の初夢の注文が多すぎて、平日分の注文がさばききれなくなってるみたいだぜ」「何でまたそんな無理な注文引き受けてくるんだ?」「工場長のヤツ、従業員の健康なんか無視して、自分の稼ぎさえたんまりあればいいってわけさ」「そうだ。新しい機械を入れたからって、俺たちのボーナスが去年より少なくなるなんて、どう考えてもおかしいぜ。きっとヤツだけいい目見てるに違いない」「コッホン」「……おい、工場長だぜ」「さあ、君たち、しっかり働いてくれよ。今週から就業時間が2時間延長になったからな」「えーっ!そんなの聞いてないですよ」「何か文句あるか?イヤならいつでもやめなさい。この不景気に、他で雇ってくれるところがあるんならすぐ変わってくれていいんだよ。ワッハッハッハ」「……」「それが無理なら、ここで精一杯働くことだな。働いて働いて、働く喜びを知りなさい。ワッハッハッハ」「やなヤツだぜ、全く」「ああ、許せねえ。あんなヤツは地獄に落ちてもらうしかないな」「おい、ヤツにひと泡吹かせてやろうぜ」「どうするんだ?」「俺にいい考えがある。耳貸してみな…ヒソヒソヒソ」「ふん…ふんふん…ふんふんふん。おっ、そいつはおもしろそうだな」----その翌日----「おい、もうすぐ工場長血相抱えてやって来るぜ」「そうだな。倉庫の点検終わって戻ってくる時間だ」「誰だーっ!倉庫にバクを放し飼いにしたのはーっ!」「どうかしましたか?工場長」「来月出荷分の夢が皆食い散らされとるぞーっ!!」Tapir, the dream-eater