ケーキの魔法使い1「ケーキの魔法使い」 とある町の外れに、「クローバー」という名前の一軒の小さなケーキ屋さんがありました。 この店の店長である誠が、「四葉のクローバーのように、このケーキを食べた人が幸せな気持ちになってくれたら」、 と祈りを込めてつけた名前でした。 しかし、ここ最近は町に出来た有名ケーキ店のせいか、お客さんの数もめっきり減ってしまい、ケーキも売れ残ることが 多くなってしまいました。 元々、誠がまだ若く名が知れてないこともあって、お客さんは少なかったのですが・・・。 それでも、誠はケーキの作り置きは一切せず(一部のケーキをのぞいてですが)、毎日毎日、たった1人でケーキを焼き続けていました。 「今日もケーキがおかずか・・・」 そう誠がつぶやいた時でした。 ”カランコロン” ドアが開き、6歳位の小さな女の子が泥だらけの服で入ってきました。 「いらっしゃい、1人で来たの?」 (おつかいなのかな?)と誠は思いました 「うん・・・あの、ケーキ下さい」 「じゃあ、どれにする?」 「えっと、いちごがたくさんのってるケーキ・・・あ、これがいい」 女の子はショートケーキを指差しました。 「いくつ欲しい?」 「うーんと、1つ・・・」 「1つでいいの?」 「うん。ママの分だから・・・」 (もしかして、今、問題の虐待とかじゃないよな。泥だらけだし・・・) 「今日はママの誕生日なのかい?」 「うん・・・」 女の子はうつむき加減でうなずきました。 「わかった。1つだけ買って、ママを驚かそうってことなのかな?」 誠はわざと明るくこう聞いてみました。 「ママ、ケーキ大好きだから。きっとケーキ食べたら、ママ元気になると思うんだ・・・」 女の子は俯いたまま、小さな声でそう答えました。 「ママ、病気なのかい?」 「うん・・・」 (それで1人で買いに来たのか・・・) 「そっか。ママ早く良くなるといいね。」 そう誠が言うと、女の子がポケットから財布を取り出しました。 その時、何かが落ちました。 「あ・・・」 誠が拾い上げて見ると、四葉のクローバーの葉がちぎれ落ちてしまっています。 「せっかく見つけたのに・・・」 女の子は今にも泣き出しそうです。 (そっか、これを探してたから、こんなに泥だらけになったんだな・・・。ママのために・・・) ジャンル別一覧
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