ケーキの魔法使い5それから、数週間が過ぎ・・・。誠の店に少しずつお客さんがやってくるようになりました。 「あの、クローバーのケーキありますか?」 「えっと、全部クローバーのケーキですけど?」 「あ、そうじゃなくて、クローバーの形のケーキ・・・」 「あ、ああ、ちょっとお待ちいただけますか?今すぐ作りますので・・・」 こんな調子で来る人、来る人、あのクローバーのケーキを欲しがるようになり、とうとう、商品として置くことになりました。 それに伴って、他のケーキも少しずつ売れるようになってきました。 (何か、夢見てるみたいだな。お客さんが来てくれるなんて・・・。でも何で急にお客さんが来るようになったんだろう?) 誠は不思議に思っていました。 あの日以来、まだ舞ちゃんもあの女性も来ていませんでした。 ”カランコロン” お店の扉が開きました。 「こんにちは」 そこにはあの女性が立っていました。 「ご報告が遅くなっちゃって・・・」 本当に申し訳なさそうに、女性は言いました。 「あ、別に気にしないで下さい。それに結果聞く前に商品化しちゃいましたから♪」 「あ、それなら良かったです。すごく美味しくて、ほんと幸せになれるケーキだなあって思ったから」 女性は誠を見てから、ショーウィンドウの中のケーキを見て嬉しそうに、そう言いました。 「はは、ありがとうございます」 誠も思わず微笑んでいました。 「私の方こそ謝らなきゃ・・・」 「え?」 誠が不思議に思い聞き返すと、 「私、あんまりにも美味しくて、幸せな気分になれたからみんなに教えたくなって。あ、実は私、タウン情報のミニコミ誌で小さな記事を 書いてるんです。お店の紹介とか色々。そこでつい書いちゃったんです。”幸せになれる四葉のクローバーのケーキがある”って・・・」 (あ~、それでかあ・・・) 誠はやっと納得が行きました。だから、来る人来る人、あのケーキを注文したのかと・・・。 「いや、だったらこっちこそ、お礼言わなきゃ。あ、でも、俺、広告料とか払えるほど、お金無いし・・・」 「そんな、私が勝手に載せちゃったんですし、お金なんて頂けないです。それに、そんなにお役に立ってない でしょうし・・・」 「そんなこと全然無いですよ。お客さんが来るようになったのはその記事のおかげです!!せっかく記事にまでしてくれたんだから、 あとはお客さんをしっかり掴んどく為に、俺が頑張るだけですね」 誠は軽くウィンクしながら、明るくそう言いました。 「やっぱり、素敵ですね・・・」 女性は小さな声で呟きました。 「え?」 誠は、思わず聞き返しました。 「あ、何でもないです・・・あの、今日はもう1人、お客さんを連れてきたんです」 そういうと、女性はお店のドアを開けました。 ジャンル別一覧
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