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心のままに~星に願いを~

心のままに~星に願いを~

ケーキの魔法使い7

お店には誠と希の二人だけになりました。
(もしかして、気使って出ていっちゃったのか?)
誠は照れたように頭をかき、希は困ったなというように店内を見渡し、俯いてしまいました。
「えっと、あの、新作のケーキがあるんですけど・・・味見してもらえますか?」
「いいんですか?」
「ええ、あなたに食べてもらいたいんです」
(あ、な、何言ってるんだ、俺・・・)
「あ、はい」
誠は奥の部屋から、小さなデコレーションケーキを持ってきました。
あのクローバーケーキの側面に七色の虹が描かれているものでした。
「綺麗・・・」
「あ、これ切っても綺麗なんですよ。いいですか?」
誠はそっとナイフで切ってみました。
その切り口は、七色のスポンジとクリームの層になっていました。
「これ、苦労したんですよ。味の組み合わせが難しくて、ほんと・・・あ、すみません、つい語っちゃて・・・。どうぞ食べて下さい」
と、お皿に取り分け、フォークを添えて、あのテーブルの上に置きました。
希は椅子に腰掛け、そっとフォークでケーキを口に運びました。
「美味しい~・・・」
希はあまりの美味しさに、言葉にならないといった様子でした。
「へへ。でしょ?改心の出来♪」
誠はこのケーキを作る為に、毎晩徹夜で頑張ってきたのです。
そして、出来上がったら、真っ先に希に食べてもらうつもりでした・・・。
「すごい・・・これ、すごいです」
「あ、いや、そんなに言ってもらうと、俺、調子にのっちゃいますよ~」
誠は顔が赤くなってくるのを必死でごまかしていました。
「いいですよ。調子に乗っても。だってほんとうにすごいんだもん・・・」
希は、ケーキを一口ずつ味わって食べ終わると、本当に心からそう言ってるようでした。
「ありがとうございます。」
誠は照れ笑いを浮かべながら、嬉しそうに希にお礼を言いました。
「これ、お店に出しますよね?商品名、何にするんですか?」
「そうだなあ・・・クローバースペシャルってそのままだし・・・。うーん・・・そうだ”のぞみ”」
「え?!」
希は思わず、自分の名前が呼ばれたのかと思って、びっくりしてしまい、あわてて、平静を装いました。


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