ケーキの魔法使い8「”のぞみ”がいいや。希望って書いて”のぞみ”」「あ、ああ希望で、のぞみですね・・・」 「そ。のぞみさんの名前いただき!!」 「え?でも、私の名前、希望の希だけですけど・・・」 「あ、ああ、あの、その、このケーキ出来たのは希さん達のおかげだし・・・。その皆がこのケーキを食べて、 希望を持ってまた頑張ってもらえる力になればなあって・・・。ああ、もうそうじゃなくて・・・」 誠は頭を掻き毟りながら、店内に響き渡る声で突然こう言いました。 「これ、あなたに食べてもらいたくて作ったんです。あの、俺と付き合って下さい!!」 希はびっくりして、顔を真っ赤にして俯いてしまいました。 「あ、あれ、俺、何言ってんだ・・・。あの、忘れて下さい。ほんと、すみません!!」 誠は床に着きそうなほど、頭を下げたまま、そう言いました。 「あ、あの・・・私で良かったら・・・」 希は消え入るくらい小さな声でそう言いました。 「え?俺でいいんですか?」 誠はゆっくりと希に聞き返しました。 「はい・・・」 希は俯きながらも、今度ははっきりと聞こえるように返事をしました。 「良かった~・・・」 誠がほっとしたように、顔を崩して笑うと、店の扉が開きました。 「やったね。お兄ちゃん、希お姉ちゃん♪」 「こら、覗き見してたなあ~」 誠は笑いながら、舞を軽く睨み付けました。 「ちがうよ~。ケーキ買いにきたんだもん」 舞はわざとほっぺたをふくらませて、そう言いましたが、後ろでお父さんとお母さんが、笑いをこらえるように しながら、立っています。 「・・・ま、いっか。舞ちゃんはキューピッドみたいなもんだからな」 誠はくしゃっと顔をくずしながら、そう言いました。 「キューピッドって?」 「恋の天使ってとこかな?」 と誠がウィンクしながら答えると、 「お兄ちゃんは魔法使いで、私が天使だったら、希お姉ちゃんは夢を叶えてくれる女神かなあ?」 「え、そんな、女神だなんて・・・」 希は、あわてて首を振りながらそう言いました。 「いや、ほんと俺にとっては女神だよ・・・」 誠は希を見つめながら、囁くようにそう言いました。 「ふーん、お兄ちゃんたち、もうアツアツだね~」 「こら、大人をからかうな!!」 そう、誠が言うと、皆で大笑いしました。 それからの誠と望、舞たちはというと・・・。 舞はお母さんが元気になってからというもの、お転婆振りに磨きがかかり、元気に飛び回っています。 え、誠と希はって? 誠は今日も幸せになれるケーキを作る魔法使いとして、頑張っています。 『ここのケーキを食べて、誰もが幸せになれますように。そして、皆も誰かを幸せに出来る魔法が使えますように。 だって誰もが皆、誰かの為の魔法使いなんだから』と願いを込めながら・・・。 微笑む女神と共に・・・☆ <おしまい> ジャンル別一覧
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