000000 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

心のままに~星に願いを~

心のままに~星に願いを~

ケーキの魔法使い8

「”のぞみ”がいいや。希望って書いて”のぞみ”」
「あ、ああ希望で、のぞみですね・・・」
「そ。のぞみさんの名前いただき!!」
「え?でも、私の名前、希望の希だけですけど・・・」
「あ、ああ、あの、その、このケーキ出来たのは希さん達のおかげだし・・・。その皆がこのケーキを食べて、
希望を持ってまた頑張ってもらえる力になればなあって・・・。ああ、もうそうじゃなくて・・・」
誠は頭を掻き毟りながら、店内に響き渡る声で突然こう言いました。
「これ、あなたに食べてもらいたくて作ったんです。あの、俺と付き合って下さい!!」
希はびっくりして、顔を真っ赤にして俯いてしまいました。
「あ、あれ、俺、何言ってんだ・・・。あの、忘れて下さい。ほんと、すみません!!」
誠は床に着きそうなほど、頭を下げたまま、そう言いました。
「あ、あの・・・私で良かったら・・・」
希は消え入るくらい小さな声でそう言いました。
「え?俺でいいんですか?」
誠はゆっくりと希に聞き返しました。
「はい・・・」
希は俯きながらも、今度ははっきりと聞こえるように返事をしました。
「良かった~・・・」
誠がほっとしたように、顔を崩して笑うと、店の扉が開きました。
「やったね。お兄ちゃん、希お姉ちゃん♪」
「こら、覗き見してたなあ~」
誠は笑いながら、舞を軽く睨み付けました。
「ちがうよ~。ケーキ買いにきたんだもん」
舞はわざとほっぺたをふくらませて、そう言いましたが、後ろでお父さんとお母さんが、笑いをこらえるように
しながら、立っています。
「・・・ま、いっか。舞ちゃんはキューピッドみたいなもんだからな」
誠はくしゃっと顔をくずしながら、そう言いました。
「キューピッドって?」
「恋の天使ってとこかな?」
と誠がウィンクしながら答えると、
「お兄ちゃんは魔法使いで、私が天使だったら、希お姉ちゃんは夢を叶えてくれる女神かなあ?」
「え、そんな、女神だなんて・・・」
希は、あわてて首を振りながらそう言いました。
「いや、ほんと俺にとっては女神だよ・・・」
誠は希を見つめながら、囁くようにそう言いました。
「ふーん、お兄ちゃんたち、もうアツアツだね~」
「こら、大人をからかうな!!」
そう、誠が言うと、皆で大笑いしました。

それからの誠と望、舞たちはというと・・・。
舞はお母さんが元気になってからというもの、お転婆振りに磨きがかかり、元気に飛び回っています。
え、誠と希はって?
誠は今日も幸せになれるケーキを作る魔法使いとして、頑張っています。

『ここのケーキを食べて、誰もが幸せになれますように。そして、皆も誰かを幸せに出来る魔法が使えますように。
だって誰もが皆、誰かの為の魔法使いなんだから』と願いを込めながら・・・。

微笑む女神と共に・・・☆

<おしまい>


© Rakuten Group, Inc.
X