風色の本だな

風色の本だな

『さくら子のたんじょう日』


チューリップライン. 


『さくら子のたんじょう日』

◆『さくら子のたんじょう日』宮川ひろ・作/こみねゆら・絵/童心社
/2004年11月20日 初版 第1刷発行


昨年の2月、この絵本の作者である宮川ひろさんの
素晴らしい語りを聴かせていただきました。

宮川さんは元教師で、新日本童話教室に学んだ後、
『びわの実学校』に投稿。

赤い鳥賞文学賞他、数々の賞を受けています。
創作に『天使のいる教室』(童心社)、『先生のつうしんぼ』(偕成社)
絵本に『びゅんびゅんごまがまわったら』(童心社)他作品多数など
多数があります。


春が恋しいこの季節、春らしい淡くやさしい表紙の
素敵な絵本に出会えました。

こみねゆらさんの絵が、温かく、やさしく語りかけてくれます。

 
2年生の夏。
さくら子は、母さんにきいてみました。

「わたしの名前ね、どうしてさくら子になったの?」

「山のさくらの木からもらった、さくら子よ。
そうだ、この夏休みに、あのさくらの木に
あいにいってこようか、ね」
  
電車に乗って、山あいの小さな駅に降り立ち、
さくらの木に会いにいきました。

するとその木は、下は栗の木なのに、上に大きく伸びているのは
まさしくさくらの木だったのです。
   
台風で、まだ若かった栗の木は頭を折られ、
上へ高く伸びることができなくなりました。
それから2年後、折れてしまったその頭はウロになって、
落ちた葉っぱが土になり、小鳥がさくらんぼをついばんでそこへおちて
芽を出したのです。

この木は、栗の木が身ごもって、さくらという赤ちゃんを生んだので
「みごもり栗」と呼ばれました。

それからは、この栗の木にあやかって
赤ちゃんがほしい人がお願いにきたり
赤ちゃんを身ごもると、無事に生まれますようにと
たくさんお人が訪れるようになったのです。

さくら子の母さんもここにお願いに何度も訪れました。
最後に、さくら子のたんじょう日の真相が明かされます。

私も大きくなって、あんなやさしい花を咲かせたいなと
さくら子は思いました。

胸にじーんと響いてくるような、爽やかであたたかい絵本です。

チューリップライン. 






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