風色の本だな

風色の本だな

月のおはなし

月見 

 
 
陰暦の8月15日が十五夜。

今年の十五夜は9月11日でした。

ここでは“月”にちなんだお話をご紹介したいと思います。

満月のよるは不思議なことがおこりそう。

月の光はなんとも幻想的で、お話の世界を創り出す、最高の演出家ですね。

光る星ライン

◆ 『絵のない絵本 ☆ アンデルセンの童話 4』 ◆ 

 アンデルセン・作/オルセン・画/大塚勇三・訳/福音館
 

月のおはなしと言えば、まず思い浮かぶのがこのおはなし。

月が若い画家にお話を語る、という構成をもつこの本は

始めは二十夜だけを収めた本として1839年に出ましたが

その後、次第にお話が追加されて

1854年に、三十三夜まで入った今の形になりました。

短くまとまった各夜の話のうちに、作者のアンデルセンは、

それまでの生活や多くの旅行の中などで見聞きしたことや

感じ、思い、空想したことなどをあざやかに結晶させ、書き止めました。

そして、この『絵のない絵本』は、アンデルセンの豊かなお話の世界でも

、独特な輝きを放つものになっています。

貧しい若い画家は初め、こんな風に語っています。

「ある晩のこと、僕はほんとに悲しい気持ちで窓際に立っていました。

そして、窓をあけて、外を見ました。

ああ、そのとき、僕はどんなにうれしくなったことでしょう!

僕はそこに、僕がよく知っている顔を見たのです。


あの、まるくて、なつかしい顔が、・・・・故郷にいたころからの

僕の一番のいい友だちが見えたのです。

それは月でした。

昔ながらの、したしい月でした。

前に沼地のそばのヤナギの木々のあいだから眺め降ろしていたときと

そっくりそのままの様子で何もかわっていない同じ月だったのです。

ぼくは指にキスして、そのキスを月に投げかけました。

すると月はまっすぐ、ぼくの部屋の中に指しこんできました。

そして、これからあとは、毎晩外にでたら、ちょっとのあいだ

ぼくのところをのぞきこんでいこうとやくそくしてくれました。

そして、それからというもの、ほんとに月は、この約束どおりにしてくれています。

ただ残念なことに、月は、ほんのみじかいあいだしか

ぼくのところにとまっていられません。

でも、そんなふうにして、きてくれるたびごとに、月はまえの晩か

でなければ、その晩に見てきたことを、あれやこれやと、はなしてくれます。


「まあ、わたしの話すことを、絵にかいてみなさい。」

と月は、はじめてたずねてきた晩に、そういいました。

「そうしたら、ほんとにすてきな絵本ができますよ。」


そこでぼくは、これまで幾晩も幾晩も、いわれたとおりにやってきました。

そして、第一夜から、第三十三夜まで、月からきいた不思議なおはなしが一冊の本になっています。

月が語るおはなしということで、とても幻想的で不思議な世界を織りなしています。

光る星ライン
◆ 『お月さまってどんなあじ』 ◆ 

ミヒャエル・グレイニェク・絵と文/いずみちほこ・訳/セーラー出版


「『お月様ってどんなあじなんだろう。あまいのかな。しょっぱいのかな。

ほんのひとくちたべてみたいね。』どうぶつたちは、よる、お月様さまを見ながら、いつもそうおもっていました。

でも、どんなにくびや手や足をのばしても、お月さまにはとどきません。」で始まるこの絵本。

ある日、ちいさなカメがいちばんたかいあの山にのぼって、お月さまをかじってみようと決心します。

たかい山にのぼってもカメは月に届きません。

カメはゾウをよびますが、お月さまは、あたらしいゲームだなとひょいと上へ逃げてしまいます。

ゾウはキリンをよび、キリンはシマウマをよび、シマウマはライオンをよび、ライオンはキツネをよびます。

キツネはサルをよび、サルはネズミをよんで・・・とうとうネズミはお月さまをかじってしまったのです。

お月さまは、なんともいいあじでした。

サルとキツネとライオンと、シマウマとキリンとゾウとカメにもひとくちずつわけてあげると

お月さまのかけらは、みんながそれぞれいちばんすきなもののあじがしたといいます。

なんてすてきなことでしょう。

光る星ライン


◆ 『おつきさま』 ◆ 


やすいすえこ・作/ 葉 祥明・絵/フレーベル館


「よるです。こんやはまんまるのおつきさま。」で始まり

「よるです。こんやはまんまるのおつきさま。」で終わるこのおはなし。

野原のいえの まどから おんなのこがよぞらをみあげていいました。

「どこかで だれかさんも みているかなあ。きれいな きれいな おつきさま」

のらねこがおつきさまにむかって、いい気持ちで月夜の歌を歌います。

昼間けんかした小鳥と小鳥がなかなおり。

おつきさまをみていたらやさしい気持ちになれたのです。

まいごの犬がおつきさまを見上げてお願いします。

「おつきさま、どうか帰り道を教えてください。」

駅長さんも、おつきさまを見上げて ほおっと いきをつき、ほほえみます。

ねずみのきょうだいが「ねえおにいちゃん、おつきさまがぼくたちのこと みているよ。」

「うん、きっとぼくたちのことが すきなんだね。」

かかしも言います。「こわくない。こわくない。ながい よる、おつきさまがぼくを みていてくれるもの」

たぬきもおつきさまに話しかけます。「こんどこそ おいら じょうずに ばけるからねー。」

 やまのむこうの海では、おおきなおふねの船長さんがぽつんといいます。

「おつきさま、もしも わたしの こどもたちが よぞらを みていたら、どうか つたえてください。

とうさんは げんきだよ」と

うみべの ちいさな いえの まどから おとこのこが おつきさまに いのっていました。

「おつきさま、ぼくのともだちのけが、なおしてください。とおい野原にすんでいる おんなのこです。」

夜という暗闇の世界を照らす月の光は、いつでも、静かに森羅万象を見守っています。

幼い頃、遊び疲れて帰る道。

お月さまは、どこまでもどこまでも私から目を離すことなく

見守ってくれているような気がして仕方がありませんでした。

光る星ライン

演奏家のうさぎ




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